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精霊戦争記 ~異世界に転生した私が世界を救う話~   作者: aki.
第4章「時は戻り、幼少へ」
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クロノ石を求めて ※トウマ視点





 "盗賊たちの住処"に住み始めてから、どれだけの月日が経ったのだろうか。


「………はぁ、はぁ……。やっと着いた」


 鬱蒼とした森の中。


 ただただひたすらに真っ直ぐ歩き続け、ようやく目的地である洞窟に辿り着いた。ここまでどれくらいの距離を歩いてきたのだろうか。


「ここで合ってるよな?」


 荒くなった息を整えながら、ローデンさんから預かった地図を確認する。うん。ここで間違いないようだ。見ると、服も靴も泥だらけだ。


「…ここに一体何があるんだ?」


 首を傾げ、洞窟の入り口を見つめる。

 時は遡って、それは今朝の事。朝食を食べていると、ローデンさんが言った。


「さてトウマくん! そろそろ君にも"時の魔法"を伝授する時がやってきたで!」

「…時の魔法? 何ですかそれ?」

「時の魔法とは、わいら時の番人にしか使う事の出来ない専用の魔法や」

「時の番人専用の魔法。何それスゲェ気になる」

「ふふん。せやろ? ほんで、今からトウマくんにはここに行って時の魔法を習得するために必要なクロノ(いし)っちゅう石を取ってきて欲しいんや」

「クロノ石?」


 言いながら、ローデンさんは森の全体図が描かれた地図をテーブルに広げて"とある場所"を指差す。指差した場所を見ると、そこには赤い罰印のマークがあった。ここには、洞窟があるらしい。


「ここに、そのクロノ石っていうのがあるんですか?」

「せや。でも、ただ取ってくればええってもんやない」

「?」

「クロノ石は持ち主を選ぶ。やみくもに拾っても、それが自分を選ばんかった石ならそれはただの石と変わらへん。まずは、石に自分を選んでもらう必要があるんよ」

「石が選ぶ? 持ち主を?」

「わいらが持ってるクリスタル・ウェポンも、石がわいらを主と選んでくれたから使えるんやで? 最初に使う時、石の声が聞こえたやろ?」


 ローデンさんは言う。


 石の声。

 そういえば、確かに聞こえたような気がしないでもない。初めてクリスタル・ウェポンを使う時に頭の中で声がして、呼び出し方と名前を教えてもらった。あれが、石の声だったのか。


「クリスタル・ウェポンが持ち主を選ぶように、クロノ石も持ち主を選ぶ。わいもリィもトールくんも、クロノ石に選ばれたから時の魔法を使う事が出来るんや」

「……」


 時の魔法を習得するために必要なクロノ石。取りに行ったとしても、その石が俺を選んでくれなかったら無駄足になってしまう。


 石に選ばれなかった場合はどうすればいいのか。と聞いてみたけれど、それはないから安心して取りに行ってこいと言われ、そして俺はこうしてローデンさんに笑顔で送り出された。という訳だ。


「光よ照らせ、ルクト」


 洞窟の中は暗く、俺は光の球を頭上に出現させて先を進む。


 光の魔法ルクト。トールさんに教えてもらった魔法だ。光の魔法は主に支援や治癒、防御面で多く活躍し、魔法主体で戦う魔術師や治癒魔法師(ヒーラー)などが好んで使用していると聞いた。光魔法っていえば、イメージ的に後衛だもんね。


[グルル、]

「!」


 洞窟を歩いていると、目の前に魔獣が現れた。ポケットからクリスタル・ウェポンを取り出してシヴァリウスを呼び出し、俺はそれを魔獣に向けて構える。


[グアアアッ!]

「氷結斬!」


 剣を振って襲い掛かってくる魔獣を攻撃する。これまでの修行の中で色んな技を放っていくうちに、いつの間にか小型の魔獣一匹程度なら簡単に倒せるようになっていた。


 氷の刃を受けて、魔獣はその場に倒れる。刃に付着した魔獣の血を払い、これからも魔獣は襲ってくるだろうと考えた俺は、シヴァリウスをそのままに足を進めた。



+


 洞窟の奥。襲ってくる魔獣をひたすら倒しながら進んでいくと、拓けた場所に辿り着いた。


 頭上に浮かぶ光の球が周囲の様子を照らすと、凸凹とした土壁が見える。どうやらここが洞窟の最奥地のようだ。じゃあ、ここにクロノ石が……?


「…暗くてわからん」


 シヴァリウスを戻して、キョロキョロと辺りを見渡しながら眉を下げる。


 ローデンさんが言うにはクロノ石は"黒くてピカピカしてる"らしいけど、こうも暗くては色なんてわからない。光の球が照らしてくれる範囲にも限界があり、これは1個の石を見つけるのは相当苦労しそうだ。


「…はぁ」


 溜め息を吐く。めんどくさいけど、石を見つけるためには仕方がない。


 ここは地道に探していくしかないと、俺は近くの土壁から順番に見ていく事にしてそこに手を触れた。黒くてピカピカしてる石。黒くてピカピカしてる石。そう頭の中で連呼しながらペタペタと土壁を触り続ける。しばらくの間そうしていると、ふと背後に気配を感じた。


「…?」


 この場所には俺しか居ないはず。感じた気配に"?"を浮かべて恐る恐る振り向くと、そこには一人の女性の姿があった。


 光の球が女性の姿を照らす。緑色の髪に灰色の服を着た女性。彼女は、じっと俺を見つめていた。誰だろう。


「…君は?」

「貴方、そこで何してるの?」


 声を掛けると、問い掛けられる。


 それは此方の台詞なような気がもするけど、その問いに俺はどう返答しようかと悩んだ。


「えと、俺はその…石を探してて」

「石? …ああ。それじゃあ貴方がトウマなのね」

「え?」


 ……、貴方がトウマなのね?


「なんで、俺の名前…?」

「貴方の名前は"彼女"から聞いていたわ。でも聞いたのは名前だけで姿はわからなかったから、ちょっと警戒しちゃった。ごめんなさい」


 口元を緩ませて、女性は言う。

 女性は足を動かして、俺の近くの土壁に触れた。


「良かったわね。やっと来てくれたわよ」

「?」


 ポンポンと土壁を叩く。その瞬間、彼女の叩いた土壁から石がキノコのようににょきっと出てきた。


 黒くてピカピカした綺麗な石。ローデンさんが言っていたクロノ石だ。土壁から出てきたそれを、彼女はゆっくりと慎重に取り出す。


「…いい子ね。すぐに出てきた。よっぽど貴方に会いたかったみたいね」

「あの、…」

「? …ああ、ごめんなさい。まだ自己紹介してなかったわね。私の名前はクロノ。よろしくね」

「クロノ…?」

「そう。クロノ石と同じ名前なの。わかりやすくていいわよね」


 言って、彼女…クロノは石を俺に渡す。渡された石を見ると、それはふるふると震えていた。


「この子はずっと貴方が来るのを待っていたのよ」

「待ってた?」

「クロノ石は持ち主を選ぶ。"彼女"は貴方がこの世界に来るずっと前から、貴方を待っていたのよ」

「……」


 ふるふると石が震える。

 まるで生きているみたいだ。


「…え!? 俺がこの世界の人間じゃないって知ってるんですか!?」

「ええ。私は何でも知っているから。この世界で起きる事なら何でも」


 クロノは笑う。その表情はとても綺麗で、少し見惚れてしまった。


 すると突然、バシンッと頬に痛みが走る。吃驚して目を見開くと、手のひらの上で石が飛び跳ねていた。それを見て、更に驚く。


「石が動いてる…!?」

「あらあら。どうやら機嫌を損ねちゃったみたいね」

「き、機嫌?」

「ええ。貴方が私の方ばかり見ているから嫉妬したのだと思うわ」

「石が、嫉妬…」


 唖然とする。


 石も嫉妬するんですか。知らなかった。というか"石が嫉妬する"なんて言葉を聞いたのが初めてだ。


「まぁ、何はともあれ、これで貴方もクロノ石を手に入れた。あとはその子を持ち帰って時の魔法を習得するだけね」


 時の魔法の習得。時の魔法の習得にはこのクロノ石が必要だと言っていたけど、この石をどう使うんだろう。未だ飛び跳ねている石を見つめて、首を傾げる。


 と、そこで大きな声が周囲に響き渡った。吃驚して声の方に顔を向けると、光の球が照らした先には魔獣の姿が。俺とクロノは魔獣に気付いて眉をひそめる。


「魔獣? どうしてここに?」

「シヴァリウス!」


 クリスタル・ウェポンを手にして、シヴァリウスを呼び出す。

 クロノ石をポケットにしまって、氷の刃を魔獣に向けた。


[グルルルッ]

「クロノは下がって」

「心配ご無用。こう見えても、私も少しは戦えるわ」


 言って、クロノは拳を握る。

 まさかの格闘スタイル。


[グアアアッ!!]


 大きく咆哮をあげて、魔獣が突進してくる。光の球が照らしてくれているからといってもこの暗い場所の中で戦うのは初めてだからちょっと不安。


 俺とクロノは顔を見合わせて頷き、突進してくる魔獣を迎え撃つ。地面を蹴って飛び上がり、魔獣は牙を剥き出しにしたまま爪を立てて俺たちに攻撃してきた。しかし次の瞬間、ポケットにしまったクロノ石が光を放つ。放った光は一瞬にして俺たちを包み込み、光が止んだと気付いた時には俺の視界は黒と白の二色の世界となっていた。



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