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精霊戦争記 ~異世界に転生した私が世界を救う話~   作者: aki.
第4章「時は戻り、幼少へ」
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プクプとの出会い





 私と妖精族のプクプが出会ったのは、私が学校へ通い始めてすぐの事だった。課外授業で学校の近くにある森へ出掛けた時。自由行動中に、罠に掛かった彼を同じクラスになったアンジェラが見つけたのだ。


 プクプは鉄で出来たドーム型の罠籠にぐったりとうつ伏せに倒れ込んでいて、今にも死にそうな状態だった。傷付いて憔悴しきっていたプクプを、一緒に森へ来ていた先生の元へ連れていく。すると、先生は言った。


「……ふむ。おそらくこの妖精族の少年は、"妖精狩り"の罠に掛かったのでしょう」

「「妖精狩り?」」


 "妖精狩り"とは、ここ一年の間で急速に増えた狩猟民(ハンター)たちによる淘汰行為の事だ。《妖精を狩る=狩猟民入団テスト》というルールがいつの間にか彼らの中で定着化してしまい、プクプのように何の罪もない妖精が次々とハンターの手によって殺されてしまっているという。


「そんな事が…」

「妖精狩りは、魔導新聞に取り上げられるほどの社会問題になっていてね。なんとかその行為を辞めさせようと国直属の騎士団が動いてくれているみたいだが、なかなか上手くはいっていないみたいなんだよ」


 先生は言う。


 そこでプクプが目を覚ました。アンジェラの手のひらの上でゆっくりと目を開けて、こほこほと小さな声で咳をする。


「あ、起きた!」

[…?]

「大丈夫ですか?」

[っ!?]


 ボーッとする頭でキョロキョロと辺りを見渡し、プクプはここが何処なのかを確認する。そして最後に私たちの顔を見ると、彼は目を見開いて羽根をパタつかせながら瞬時に私たちから離れた。しかし、身体が思うように動かず落ちてしまいそうなる。


 慌てて手のひらの上でキャッチして、私はすぐにこの間習ったばかりの治癒魔法を彼に掛けてあげた。


「無理しちゃ駄目だよ。傷だらけなんだから」

[……]


 淡い緑色の光が、プクプの身体を包む。身体中にあった痛々しい傷がみるみるうちに治っていき、しばらくすれば完全に彼の身体から傷はなくなった。それを見て、先生が驚いて目を見開く。


「ほお。素晴らしい治癒魔法だ」

「アメリアさんは魔法の天才なんです。私もこの間、怪我した所を治していただきました」

「て、天才なんて大袈裟だよ。ただ、魔法の師をしてくれてる人が優秀ってだけで」


 プクプに掛けた治癒魔法は、学校に通い始める5日前にトールさんから教えてもらった魔法だった。お父様に買ってもらった鉢植えの木から魔力を吸い取るという課題から派生して、ちょうどいいから習得しよういう完全に授業とは関係がないおまけ的な位置付けとなったもので、魔力を吸い取るというものよりも10倍はキツイ作業だった。


 ちなみに、鉢植えの木から魔力は少しだけだけれど吸い取る事が出来ました。アメリアさんの助言とアイシクルの手伝い様々です。


「はい。これで終わり」

[……]


 ぴょこんと立ち上がって、プクプは自身の身体をペタペタと触る。傷が消えて動けるようになった自分を見て、彼は口元を緩ませて笑顔を浮かべながら私の周りを羽根をパタつかせて飛び回った。


 それを見て、私とアンジェラは顔を見合わせて笑う。先生も、満足そうに口元を緩ませた。


「んあー! ここに居た!!」

「「「?」」」

「こんなとこに居ましたぜ、兄貴!」


 声に反応して振り向く。そこに居たのはバンダナを頭に巻いた小柄の男の人だった。男の人は私たちを指差して大声をあげる。プクプは、その男の人を見るや私の服にしがみついた。


 男の人の声で、その場にもう一人やって来る。やって来たのは顔中に傷痕を浮かばせた隻眼の屈強な男の人だった。彼らの姿を見て、私たちの前に先生が立つ。


「おーおー。こんなとこに居やがったのか。俺の獲物ちゃんよぉ」

「何ですか、貴方たちは?」

「もしかしてテメェらがそいつ持ってったのか? 駄目だぜそんな事したら。大人しくその妖精を渡せ。そいつぁ、俺の狩猟民入団テストの獲物なんだからよぉ」


 男の人は言って、手に持っていた大きな斧を肩に担ぐ。


「獲物? この子は貴方の獲物ではありません! 妖精族はこの世界に必要な存在です! みすみす渡すわけにはいきません!」

「ああん?」


 先生の言葉に、男の人は眉をひそめる。

 服にしがみついて震えているプクプの身体に、私は支えるようにそっと手を添えた。


「チッ、めんどくせぇ。交渉は俺の得意分野じゃあねぇんだよ」


 後頭部を掻いて、男の人は言う。

 そして、肩に担いだ斧の刃を私たちに向けて言葉を続けた。


「三度目はねぇ。そいつを渡せ。今なら半殺しで許してやるからよぉ」

「…何度言われても無駄です。渡すわけにはいかない」

「そうか。そんなに死にてぇみたいだなテメェ。じゃあお望み通り殺してやるよ!」


 斧を振り上げて、男の人は柄を持ったままそれを私たちに向けて放り投げる。投げた瞬間、柄と刃の部分が二つに分かれ、鎖鎌のように鎖に繋がれた刃が勢いよく先生の横を通り過ぎた。僅かに刃が(かす)り、先生の頬には一筋の傷が出来る。


「先生!」

「大丈夫です。ただの掠り傷ですから」

「へぇ。俺の斧にビビんねぇとはなかなかやるじゃねぇか。ならこれならどうだ!?」


 飛ばした刃を戻す。

 次に、男の人は自身の足元に魔法陣を描いて呪文を唱えた。男の人の手から炎の龍が渦を巻いて、勢いよく先生に向けて放たれる。


 それを見て、先生は私たちを囲うように結界の魔法を唱えて走り出した。炎の龍が私たちを包む結界を飲み込み、中に居た私たちは互いに頭を伏せてギュッと目を閉じる。炎の龍の猛攻を間一髪の所でかわし続ける先生。そして先生は一気に男の人との距離を詰めて、男の人の腹部目掛けて魔法を放った。


「なっ!?」

「轟け水の精霊よ。水龍拳(すいりゅうけん)!」

「ぐふうぅぅぅっ!!」

「! あ、兄貴いいいぃ!!」


 水の力を宿した先生の拳が男の人人の腹部を直撃し、男の人は後方に吹っ飛ぶ。バンダナを巻いた男の人は笑みを浮かべて自分を見ている先生を見て震え上がり、そそくさとその場から立ち去った。


 結界がなくなって、先生が私たちの元へ戻ってくる。


「ふぅ、もう一安心です」

「…は、はぁ」

「一時はどうなるかと思いました」

「少しお灸を据えてあげたので、これで彼らも少しは反省するでしょう」


 にこにこしながら先生は言う。

 さすが先生。お強い。


[……]

「良かったね。もう貴方は狙われる事はないよ」

[あ、]

「ん?」

[あ、りがとう。お姉ちゃんたち]

「!」


 喋った…!


「ふふ、どういたしまして」


 言いながら笑いかけると、プクプも笑い返してくる。可愛い。


「では、そろそろ戻りましょうか。他の生徒たちも待っています」

「この子はどうするんですか?」

「うーん、そうですねぇ。この子がどこから来たのかがわかれば送ってあげるのですが」

[!]


 顎に手を添えて、先生は考える。


 すると、プクプは突然私の頬にギューッとしがみついて首をぶんぶんと全力で横に振り始めた。


[~~~~っ!]

「…痛い」


 爪が食い込んでいるのか、つままれているみたいでちょっと痛い。そんなプクプの様子を見て、先生は口元を緩ませて笑った。


「…どうやら、その子はアメリアさんに懐いてるみたいですね」

「はい。そのようです…」


 離れて欲しくて身体を引っ張るけども、なかなか離れてくれない。

 痛みがだんだん大きくなっていってるのでそろそろ離れてくれないか。


「ふむ。なら、ちょうどいいですので、その子をアメリアさんのお付き妖精にしてはどうでしょう?」

「お付き妖精?」

「なんですか、それ?」

「お付き妖精というのは、その名の通り妖精をお供にするという事です。私たち人間族の中には、妖精を自分専用のお付き妖精にして飼ってる人も少なくないんですよ。お付き妖精は色々と便利なので、その妖精くんもきっとアメリアさんの役に立つと思います」


 先生は言う。


 プクプは、私の頬にすり寄り笑みを浮かべる。お付き妖精。その言葉、すっかり忘れていたな。


「貴方はいいの?」


 聞くと、プクプは首をぶんぶんと全力で縦に振る。

 それを見て、私は口元を緩ませた。


「…わかりました、先生。私、この子を私のお付き妖精にします!」

「ふふ、わかりました。その子を可愛がってあげてくださいね」

「はい! … 貴方、名前は?」

[名前、…プクプ。僕の名前、プクプ・プークだよ!]

「ぷ、ぷく、ぷくく…」


 プクプ・プーク。

 うん。やっぱり言えない。家に帰ったら練習だ。


「私はアメリア。これからよろしくね」

[うん!]


 こうしてプクプは私専用のお付き妖精として私と一緒に来る事となり、先生と私たちは他の生徒と合流するためその場から歩き出した。


 そして、プクプが私専用のお付き妖精になったというのを、家に帰って端末越しにトールさんに伝えたところ"そんなつまらん事で連絡してくるな"と呆れた表情を浮かべられて軽く怒られてしまいました。



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