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精霊戦争記 ~異世界に転生した私が世界を救う話~   作者: aki.
第4章「時は戻り、幼少へ」
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兄と弟





「アイシクルの力って、何?」

「?」

「トールさんが言ってたでしょ? アイシクルの力があれば、5分で見つかるかもって」


 中庭を出て、アイシクルの部屋を目指す。その道すがら、私は疑問に思っていた事をアイシクルに聞いてみた。


 力って何だろう? 首を傾げて聞いてみると、アイシクルは包帯で隠した右目をおさえて口を開く。


「ああ、うん…。アメリアは知ってるよね。俺の目の色の事」

「うん。右と左で違うんだよね」

「…うん。えと、俺のこの右目にはね。魔力が宿ってるんだって」

「魔力?」

「お医者さんが言うには、普通、魔力っていうのは全身に満遍なく宿ってるものなんだって。だけど、何でか俺の魔力は全部右目に集中してるらしくて。そのせいで、右目の色が左目と違うんだ」

「……」

「普段はこうして隠してるから問題はないんだけど、右目と左目で同じ景色を見ると、右と左で少しだけ違う景色が見える事があるんだ。…えと、上手く言えないんだけど、……たとえば、あそこにある植木鉢。今見えているのだと何もない普通の植木鉢だよね?」

「うん」

「それが、…包帯を取って右目と左目で一緒に見ると」


 アイシクルは、包帯をほどく。


 目の前にある観賞用の植木鉢を右目に映して、アイシクルは植木鉢に近付いて一枚の葉っぱをちぎって私に渡した。受け取った葉っぱは、何の変哲もない普通の葉っぱ。


「…これは?」

「葉っぱの裏を見てみて」

「裏?」


 葉っぱの裏を見てみる。


 そこにはキラキラと輝く小さな粒かたくさんくっついていた。


「何これ?」

「それが魔力だよ」

「え?」


 これが魔力……?


「これが俺の力なんだ。この右目で物を見ると、そこに宿ってる魔力を感じ取る事が出来て、その場でその感じ取った魔力を実際に具現化して他の人にも見えるように出来るんだ。遠くにある物の魔力もこの右目の力があれば気配で感じ取れるよ」

「…魔法とは違うの?」

「うーん。少し違うかな。魔法は呪文を唱えないと使えないじゃない? 対してこれは呪文なんて言わなくても使えるし、常時発動型だから」


 小さく笑って、アイシクルは包帯をポケットにしまう。


「色の付いた葉っぱは、兄さんが用意したの?」

「うん」

「…なら、その色の付いた葉っぱには、ただの葉っぱにはない魔力も宿ってる可能性があるんだね」


 うーん。と、顎に手を添えて考える。


 そして私たちはアイシクルの部屋に入って、その中に色の付いた葉っぱがないか探した。


「…どう?」

「特に変わった所はないな」

「アイシクルの部屋にもないってなると、あとはトールさんの部屋だけど」

「兄さんの部屋に行ってみよう」

「うん」


 トールさんの部屋に行く。トールさんの部屋はアイシクルの部屋から数メートル先を歩いた場所にあった。


 中に入り、私たちは部屋全体を見渡す。そこにはテーブルとベッドがあるだけで、他には何もなかった。窓の向こうにはバルコニーがあり、そこに行くと先程まで私とトールさんが居た庭が見渡せる。


「ここには何もないみたい」


 手すりに掴まって、アイシクルの方に顔を向ける。部屋を見渡していた彼は、しばらくするとテーブルの近くにある壁を叩き始めた。


 トントン。と、ノックをするように叩き続けて、アイシクルはその付近の壁に耳をくっつけて目を閉じる。


「? 何してるの?」

「ちょっと黙ってて」


 話し掛けると、注意されてしまった。


 トントン。トントン。と、アイシクルは壁を叩き続ける。トントン。トントン。トントン。トントン。コンコン。周囲の壁を叩き続けていると、ふと壁の音が変わった。アイシクルは耳を離して、眉をひそめながら一歩下がる。


「ここの奥に何かある。……たぶん、隠し扉だ」

「隠し扉?」

「うん。きっと何処かに扉を開くスイッチか何かがあるはずだよ」

「でも、それらしい物はなかったよ?」

「……」


 顎に手を添えて考える。

 隠し扉を開ける方法。

 アイシクルは隠し扉付近の壁を触って手のひらを動かした。


 すると次の瞬間、手のひらを乗せた一部の壁がボコッと凹み、それがスイッチだったのか目の前にある壁が音を立てて開く。扉の向こうには下に続く階段があり、私たちはそれを見て顔を見合わせた。


「な、何?」

「……」


 扉の中に入ってみる。


 階段の下は真っ暗で何も見えなかった。


「こ、ここ降りるの?」

「…微かにこの奥から魔力を感じるから、…一応調べた方がいいかも」

「ひぇ」


 アイシクルの言葉を聞いて、口元を引きつらせる。


 やっぱり、行くしかないのか。


「よ、よし! 行こう、アイシクル!」


 意を決して、足を動かす。


 アイシクルが先行して階段を降り始めて、私はそのあとから恐る恐るついていく。どこまでも伸びている階段に私の恐怖はどこまでも増していくばかりで、途中から私はアイシクルに手を引かれて半泣きの状態で歩いていた。



+


 階段をようやく降りきると、目の前に広がったのは一つの小さな部屋だった。石のレンガで囲われた小さな部屋。そこには何もなく、部屋の奥には格子状の扉があった。その奥にも階段。今度は上に続いている。


「ここには、何もなさそうだな」

「うぅ」


 トールさん。何でこんな所があるんですか。怖くてたまらないんですけど。



+


 格子状の扉を開けて、階段を登る。辿り着いたのはディー家の屋根の上だった。階段を登りきった先にあった天井蓋を開いて、屋根上に上がる。


 キョロキョロと辺りを見渡せば、そこにトールさんは居た。寝っ転がって本を読んでいる。


「トールさん!」


 トールさんを見つけて声をあげると、トールさんは私たちの方に顔を向けて息を吐く。


 やっと来たか。という表情だ。


「遅いぞ。何をしていた?」

「何をしていた。じゃないです! 何なんですかあの部屋!?」

「…あれは、緊急用に家族に内緒で作った部屋だ」

「緊急用?」

「……、それより、よくあの扉を見つけられたな」


 言えない事なのか、トールさんは話を切り上げてアイシクルの方に顔を向ける。


 アイシクルは眉をひそめたまま、トールさんを見つめていた。


「色の付いた葉っぱ。兄さんが持ってるんでしょ?」

「え?」

「…ほう。何故そう思う?」

「兄さんの懐から魔力を感じるんだよ。ただの葉っぱからは感じない微量の魔力の気配。色の付いた葉っぱの気配だ」

「…。さすがだな」


 口元を緩ませて、トールさんは懐から色の付いた葉っぱを取り出す。


 葉っぱを見て吃驚して、私は目を見開いた。


「…一時間二十三分。合格だ」

「そ、それ、ずっと持ってたんですか?」

「ああ」

「隠したんじゃなかったんですか?」

「隠してたろ。俺の懐に」

「……」


 頭を抱える。


 い、今までの時間何だったんだ。


「兄さん、どうしてアメリアにこんな事を?」

「ああ。お前には言ってなかったな。…俺は今、こいつに魔法を教えているんだ」

「え?」

「俺は、これから先5年間。こいつに徹底的に魔法のいろはを叩き込んでいくつもりだ。"今後"のためにな」

「う、…」


 今後。を、強調される。


 トールさんの言葉を聞いたアイシクルは私の顔を見た。


「それ、本当なの?」

「あ、えと、…うん。本当だよ」

「…そう、なんだ」


 頷いて答えると、アイシクルはそれ以降口を噤む。トールさんは色の付いた葉っぱを私に渡して本を閉じた。


 立ち上がって、再び息を吐く。


「今回の授業はここで終わりだ。明日、またここに来い」


 言って、トールさんは私たちの間を通り抜ける。


 トールさんが居なくなって、その場には私とアイシクルだけとなった。


「……………」


 色の付いた葉っぱを見る。

 今日の授業はこれでおしまい。

 今回の授業では、一体何を教わったのか。


 この葉っぱは、あの鉢植えの木にお供えしよう。


「…ねぇ、アメリア」

「ん?」

「兄さんは、」

「…、アイシクル?」

「…ううん。なんでもない。俺たちも戻ろう。家まで送るよ」


 眉を下げて笑い、アイシクルは踵を返して歩いていく。何か言いかけていたみたいだったけれど、一体何を言いたかったのか。


 首を傾げて、頭の上に"?"を浮かべる。そして私も踵を返して、アイシクルのあとを追って屋敷の中へと戻っていった。




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