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精霊戦争記 ~異世界に転生した私が世界を救う話~   作者: aki.
第4章「時は戻り、幼少へ」
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葉っぱを探そう




「今回は、この葉っぱを探してもらう」

「………(また葉っぱ)」


 トール先生による、楽しい楽しい魔法の授業。30日目。今回はトールさんのご実家、ディー家での特別授業だ。


 私の家が丸々入ってしまいそうな噴水庭園にてトールさんと私は向かい合い、本日の授業内容を説明される。トールさんが手に持っているのは、一枚の色が付いた葉っぱ。この一枚の葉っぱをディー家の何処かに隠すから、それを二時間以内に見つけなさい。との事。


「探す手段は何でもいい。魔法を使ってもいいし、誰かの力を借りてもかまわん。二時間以内に見つけられなかった場合、今回の授業は不合格とし相応の罰を受けてもらう。わかったか?」

「は、はい……!」

「では、開始は15分後だ。それまで、お前は木でも見てろ」


 言って、トールさんは離れていく。トールさんの背中が遠くなっていくのを確認して、私は肩を落として溜め息を吐いた。トールさんが私の魔法の師となって、今日で一ヶ月。慣れたか慣れてないかで言われると、まったくと言って言いほどに慣れてはいない。授業内容には全然文句はないのだけれど、難易度が毎度毎度違いすぎて、これはまだ私には早いんじゃなかろうか、というものが多々組み込まれている事がある。


 ちなみに、少し前に課された《鉢植えの木から魔力を吸い上げる》というやつは、未だに全然成功していない。


「…むむむむ」


 すべての植物には、微量だが魔力が宿っている。


 あれから暇があればずっと木を見続けているけれど、これどうやったら木から魔力を吸い上げられるんだろうか。アメリアさんにコツを聞かされてはいるけれど、更に集中するってどういう事だよ。


[ピー! ピー!]

「!?」


 近くにあった植物をじっと見つめていると、手首に付けていた小型の端末が突然音を鳴らす。吃驚して小さな液晶画面に目を向けると、そこには文字が浮かんでいた。


 この小型の液晶端末は、離れた場所に居ても簡単に連絡が取れるようにとトールさんから貰った物だった。リィドさんの手作りのようで、時の番人愛用の品なんだそうだ。


『15分経ったぞ。じゃあ、見つけたら連絡しろ』


 液晶画面をタップすると、トールさんの顔が映し出される。どんな技術を使っているのかさっぱりわからないけれど、なかなか凄い機械だよこの端末。



+


 そして、私はディー家の屋敷内に移動する。色の付いた一枚の葉っぱを隠したと言っても、トールさんの事だからきっと簡単に見つけられる場所には隠してはいないだろう。


 玄関からリビングへと続く長い廊下を等間隔に並べられた鉢植えを一個ずつ確認しながら歩いていく。ふむ。ここには無さそうだ。


「…こんにちはー」


 ガチャッと観音開きの扉を開けてリビングへ。ここには、白い色のテーブルクロスが敷かれた高そうな猫足のテーブルが部屋の中央にドンと置かれていて、そのテーブルを同じく白い色の椅子が何脚も囲っていた。


 うん。客人用に何脚もの椅子を置いているのはなんとなくわかるけれど、いくらなんでもこんなにはありすぎじゃなかろうか。私の家の倍は軽く越えているよ。


「…これは」


 この部屋には、テーブルの他にも様々な物が置かれていて、中でも一際目立っていたのが扉近くにあるとても大きな暖炉。その上にはキャンドルやら写真立てが何個か置かれていて、その更に上の壁にはディー家の家族たちが描かれた大きな絵が飾られていた。


 トールさん、アイシクル、おじ様とおば様。描かれたのは随分昔みたいで、アイシクルがまだ赤ん坊の姿でおば様に抱っこされていた。トールさんも凄く若い。


「…あ」

「?」


 絵を見続けていると、私が入ってきたのとは違う扉が開いて、誰かが部屋に入ってきた。


 音と声に反応して振り向くと、そこに居たのは銀色の髪の男の子・アイシクル。右目を包帯で隠していて、彼は私を見て目を見開いていた。


「ア、アメリア!? なんでここに…っ、ごほ!」

「アイシクル!」


 吃驚して()せる。


 突然咳をし始めたアイシクルを見て、私は慌てて彼に近付き背中を擦った。


「だ、大丈夫?」

「げほっ、…ん、うん。ごめん。大丈夫」


 心配して聞くと、アイシクルは眉を下げて笑いながら頷く。


「ごめん。驚かせちゃって」

「…アメリア、何でここに居るの?」

「あ、えと、…ちょっと探し物を」

「探し物?」


 アイシクルは首を傾げる。


 トールさんの特別授業のためにこの家に来た。というのは言った方がいいのか、言わない方がいいのか。


「…あ、ねぇ、アイシクル。ここに来るまでに、どこかで色の付いた葉っぱを見なかった?」

「色の付いた葉っぱ? …ううん。見てないけど。それを探してるの?」

「う、うん…」


 どうやら、アイシクルは見ていないらしい。


 うーん。これはちょっと二時間では無理かもしれない。……そういえば、トールさん言ってたな。探す手段は何でもいい。魔法を使ってもいいし、誰かの力を借りてもいいって。


「そうだ! アイシクル、葉っぱ探し手伝ってくれない?」

「え?」

「色の付いた葉っぱ。二時間以内にどうしても見つけなきゃいけないの! お願い!」


 両手を合わせて、お願いする。

 時を戻す前にトールさんから言われた言葉。それは"アイシクルと仲良くしろ"というもの。


 アイシクルとの関係が悪かったのも私が失敗した原因だとトールさんは考えていて、とにもかくにもまずはアイシクルとの関係を良好にしろと頭に叩き込まれていた。…それって、原因のうちに入るのだろうか。


「…うん。いいよ」

「ほんと!? やった! ありがとうアイシクル!」


 私の言葉に、アイシクルは頷く。


 協力者が出来た事に喜んで笑顔を見せると、それを見たアイシクルは頬を赤くしてそっぽを向いた。


+


 色の付いた葉っぱをアイシクルと探し始めて、一時間が経過。まだ色の付いた葉っぱは見つけられていない。一階は全部探した。あとは二階と二階の中庭。二階に中庭があるとは何て家だよ。そう思いながら、私はアイシクルと部屋を一つ一つ徹底的に洗っていく。


 もう、どこにあるんだよあの葉っぱ!


「はぁ! どこにもないっ!」


 二階にある中庭。噴水前に置かれたベンチに腰を降ろして背もたれに首を預ける。吹き抜けの天井から青色空が見えて、雲がゆっくりと流れていた。


 隣に座ったアイシクルも歩き詰めで疲れたのか、息を吐く。


「ねぇ、アメリア。色の付いた葉っぱなんて本当にあるの?」

「あるよ。トールさんが隠したから」

「…兄さんが?」


 トールさん。と聞いて、アイシクルはきょとんとする。


 ……、おっと油断した。


「何でそこで兄さんが出てくるの? どういう事?」

「う、…あー、と」


 思い切り詰め寄られて、返答に困る。まぁ、隠しておく必要もない事なんだけれど、一応、ねぇ……?


 罰が悪い表情を浮かべて、何て言おうか悩む。と、その時、タイミング良く端末が音を鳴らした。トールさんからだ。…いや、ちょっと待ってこれタイミング良くないな。


『アメリア。どうなっている? あと一時間しかないぞ』

「ト、トールさん…その、なかなか見つからなくて」

「兄さん?」

『…アイシクル。何故そこに居る?』


 部屋に居ろと言っただろう。と、トールさんはアイシクルに言う。


 しかしアイシクルはそれどころではないようで、私の手首を掴んでトールさんに詰め寄った。


「兄さん、どういう事なの? アメリアに何やらせてるの?」

『…、まぁ、誰かの力を借りても良いと言ったのは俺だからな。問題はないか』

「兄さん、質問に…!」

『ちょうどいい。アメリア。アイシクルの力を使って、葉っぱを探せ。そいつの力ならば、5分もあれば見つかるだろう』

「あの、トールさん…!」

『それじゃ、さっきも言ったが、見つけたら連絡しろ』


 こちらの話を聞かずに、通信を切られる。私は眉を下げて、恐る恐るアイシクルの方を見た。


 アイシクルは、眉をひそめて端末を睨み付けている。これは、私が言わなかったのが悪い…よね。


「ア、アイシクル。これはね」

「…わかってるよ、アメリア」

「?」

「さ。色の付いた葉っぱを探しに行こう。あと探してないのは…俺の部屋と兄さんの部屋だよね…」


 口元を緩ませて笑い、アイシクルは立ち上がって、顎に手を添えて考えながら歩き始める。


 私もそこから立ち上がって、眉を下げたまま、離れていく彼の背中を見つめた。私とアイシクルの関係云々よりも、まずはアイシクルとトールさんの関係を良くした方が良いのではないか。


「アメリア、早く!」

「! あ、うん…!」


 そして、私は再びアイシクルと一緒に色の付いた葉っぱ探しを開始する。


 あと探していないのは、アイシクルの部屋とトールさんの部屋だけだった。




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