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精霊戦争記 ~異世界に転生した私が世界を救う話~   作者: aki.
第4章「時は戻り、幼少へ」
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トール先生による、楽しい楽しい魔法の授業





 トール先生による、楽しい楽しい魔法の授業。1日目。


 その1。専門の学士先生に自分の魔力の量を見てもらう。



「…うむ。この子の魔力の量は凄く少ないねぇ」


 新発見。私の中にある魔力の量は専門の先生曰く凄く少ないらしい。でも、世の中には私のような魔力が少ない人は珍しくなく、あまり気にする必要はない。との事。トールさん曰く"誰よりも優れた魔法の使い手になる"には、今の量よりも3倍~5倍の魔力の量が必要なのだと言う。うっわ。何か果てしない。


 その2。魔力の量を増やす訓練をする。


「…あの、トールさん。本当にこんなので魔力って増えるんですか? 木を眺めてるだけなんですけど」

「黙って集中しろ」


 場所は再び私の自室。


 白いローテーブルの真ん中に置いた小さな鉢植えの木をじっと見つめる。お父様が"観賞用にするにはちょうどいいだろう"と買ってくれたこの鉢植えの木が、まさかこんな所で役に立つ事になろうとは思わなかった。


「…増える気がしない」

「この世界に生えているほとんどの木には全部、微量だが魔力が込められている。もちろんそれにもだ。その微量な魔力を感じ取る事が出来れば、それの魔力はお前のものとなり、おのずとお前の中の魔力も増えるだろう」

「言ってる意味がわからないんですが?」

「簡単に言えば、その木から魔力を吸え。という事だ」


 木から魔力を吸う。

 なんだか樹液を吸う虫みたいな話になった。


 その3。実施訓練。


「まずは、基本となる水の魔法からだ。あそこに的を用意したから、試しに撃ってみろ」

「的、…。水の流れよ、我が声に応じよ! アクア!…ぶあっ!?」

「…何故自分に向けて放つ?」

「……」


 自分の部屋から移動して、家の庭。数メートル先に、トールさんが用意してくれた的(案山子(かかし))があった。

 水の魔法を撃とうと呪文を唱えたけれど、手の平に水の球が出現したタイミングでその球がその場でパチンと弾けて、顔全体に水飛沫が飛ぶ。顔面水浸し。何でいつもこうなっちゃうんだろう。


 その4。反省。

 リビングにて、反省タイム。


 お母様が用意してくれた紅茶を飲みながら、私の魔法失敗の原因について考える。呪文はしっかり唱えているし、ちゃんと集中もしてる。的に当てようっていう気合いもちゃんとある。うーん。一体何が原因なんだ。


「…トールさん的には、私の魔法の失敗は何が原因だと思いますか?」

「魔法の成功失敗は使用者の魔力の量でだいたい決まっている。お前の魔力の量で魔法を放った場合の成功率は低くても約30%。失敗する確率の方が格段に高い。失敗するのは当たり前だ」

「…えー、と。つまり?」

「とりあえず、今お前がやるべき事は魔力を増やす事だ。魔法を放つのに必要な魔力が十分でなければそれ以降の事などそもそも問題にもならん」

「……」


 腕を組んで、トールさんは言う。


 魔法を使うために一番大切なのは魔力。そもそも魔力が無ければ魔法は使えない。魔法の成功と失敗に魔力が関わってるなんて話は聞いたことがなかったな。



+


 そして、あっという間に夜となった。


 トールさんは家に帰り、彼が帰ったあとも私は再び自分の部屋にて鉢植えの木を見続けるという作業を行う。本当にこんな方法で魔力が増えるのかどうか疑問だ。


「んー、……ぬぬぬぬ」


 鉢植えの木をじっと見つめる。10秒、20秒、30秒、40秒、50秒、1分。時計の秒針が刻々と時を刻み、気が付けば30分以上私は鉢植えの木とにらめっこをしていた。


 その間、自身の身体に変化は無し。まったくと言っていい程にこの時間は無駄に終わっていた。


「はぁ、全然駄目だ。……本当にこんなちっさな木の中に魔力なんてあるのかなぁ?」

[あるわよ]

「!」


 テーブルの上に顔を突っ伏して、独り言をポツリ。すると、独り言だったそれにどういうわけだか答えが返ってきた。


 空耳かと思いながら顔を上げると、そこには"彼女"が居た。テーブルを挟んで向こう側に居る彼女は、私を見つめて口元を緩ませながらニコニコ笑っている。


[ふふ。こんばんは、アメリア]

「…あ、貴女は…っ」

[この部屋、懐かしいわね。どれくらいぶりかしら?]


 部屋を見渡して彼女は言う。私は目を見開き、これはどういう状況なんだと頭を働かせた。


 今、私の目の前に居るのは彼女。"アメリア・ラインハーツ"。彼女は、私があの黒い空間の中で出会ったアメリアさんだった。


[…? どうしたの? 豆鉄砲喰らった鳩みたいな顔して?]

「え、えと、…あの、どうしてここに?」

[ふふ。言ったでしょ。助けてあげようと思ってって]

「助け…?」

[忘れた? あの中で話したじゃない]

「……」


 彼女の言葉に、思い出してみる。


 助けてあげようと思って。

 うん? うーん。確かにそんなような事を言われたような。言われてないような。


[本当に覚えてないの? …まぁ、覚えてようが覚えてまいがどっちでもかまわないけどね]


 鉢植えの木の葉に触れる。触れた瞬間、その小さな葉からポッと白い玉が飛び出した。


 ふわふわと浮かんだ玉はアメリアさんの手の中に吸い込まれていく。


「今のは?」

[今のが、この鉢植えの木の魔力よ。……ね? 本当にあるでしょ?]


 ニコニコとアメリアさんは笑う。


 私も葉に触れてみる。しかし何も起きなかった。今の所はただの葉っぱだ。


「…出ないんですけど」

[まだまだ貴女には集中力が足りないのよ。頭をからっぽにして、この鉢植えの木の事だけを考えるの。集中して集中して集中して、その集中が頂点に達した時、おのずと魔力は見えてくるわ]

「……」


 そんな事言われましても。私凄く集中してますが。これ以上どうやって集中すればいいのか。


[それにしても驚いたわ。まさかあのトールさんが貴女の魔法の師になるなんてね]

「…トールさんを知ってるんですか?」

[当たり前よ。私は貴女だったんだから]


 頬杖を付いて、アメリアさんはトールさんの話をする。トールさんが時の番人である事から始まって、性格の事からプライベートに関わる事まで色々と。


 私の知らないトールさんの話まで出てきて、ちょっと吃驚した。


[とまぁ、私が知ってるトールさんはこんな所だけど、…一体どんな経緯であの人が貴女の魔法の師になったの?]

「それは、…」


 トールさんが私の魔法の師になったのは、お父様のおかげ。口を開いて私はアメリアさんにそう伝えようとした。


 しかしその時、突然大きな音を立てて部屋の扉が開かれる。吃驚して顔を向ければ、そこにはお父様が居た。


「アメリアー!」

「おっ、…パパ!?」

[……]

「ん、おお。起きてたかアメリア。あまりにも静かだったから疲れて寝てしまったのだと思っていたぞ」


 ははは。と笑って、お父様は近付いてくる。この状況は色々とまずいのではないかとアメリアさんの方を見ると、彼女は慌てず騒がず、その場で普通にしていた。


 お父様は、アメリアさんが座っている場所に腰を降ろす。どうやらお父様にはアメリアさんの姿が見えていないようだ。そして、アメリアさんの姿はお父様の身体の中にすっぽりと収まって見えなくなってしまう。…え、どう反応すればいいんだろう、これ。


「……」

「アメリア、何してたんだ?」

「え? あ、えーと、…トールお兄ちゃんから出された宿題だよ? この鉢植えの木から魔力を吸い取れって」

「魔力を? …こんな木に魔力なんてあるのか?」

[あるわよ]

「!」

「? アメリア?」

「あ、あるよ! この木に限らず、すべての植物の中には微量に魔力が宿ってるんだって! トールお兄ちゃんが言ってた!」

「そうなのか。知らなかったな」


 ふーん。と、お父様は感心しながら鉢植えの木を見る。お父様の中からアメリアさんの声が聞こえてくるのはちょっと不意打ち。


「パ、パパ。私に何か用なの?」

「ん? ああ、そうだ。ママがな、スパイスパンを焼いたんだ。だから呼びに来た」

「スパイスパン!?」

「お前の好物だろ。誕生日特典として、ママが」


 スパイスパンと聞いたら、いてもたってもいられない。あとのお父様の言葉を聞かずに立ち上がって、私は早々に部屋を出ていき1階へと降りていく。


 目にも止まらぬ早さで部屋を出ていった私に、お父様はポカンとして、そして眉を下げて笑った。


「はは。本当に好物なんだなぁ」

[……]

「…それにしても、もうあいつも9歳か。時が経つのは早いなぁ」

[……]

「これから先もずっと、何事もなく、あいつの傍であいつの成長を見守っていきたいもんだ」

[……]

「そのためには、俺もまだまだ頑張らないとな。なんたって俺は、この家の大黒柱なんだから」

[……………、]




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