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記憶の暴力





 ー僕はアイシクル。…君は?ー

 ーぁ、…わ、私は、…アメリアー

 ーアメリア。…よろしく、アメリア!ー


 これは、昔の記憶……?


 ー9歳の誕生日おめでとう、アメリアー

 ーはいこれ。パパとママからのプレゼントよー

 ーわあ! ありがとう! ママ!パパ!ー


 これは、9歳の誕生日の時の記憶……。

 これは、走馬灯、なのかな……?


 ーすまない。アイシクルは今日は来ていないんだ。体調を崩してしまってねー

 ーアイシクル、びょーきなの?ー

 ー心配する事はないよ、アメリアちゃん。ただの風邪だ。すぐに治るー

 ー…私、アイシクルのびょーきが早く良くなるよーに何かプレゼントする!ー

 ーそれは良いね。アイシクルもきっと喜ぶー

 ーうん…!ー


 …? 何だろう、この記憶。

 私、こんな経験…。


 ーあんさんがアメリアちゃんか? こりゃまたエライ別嬪さんやなー

 ー貴方は?ー

 ーわいか? わいはローデン。ローデン・ズィーバーグ。よろしゅうー

 ー…………ー


 ローデンさん……?

 私と出会った時の記憶。

 だけど、こんな出会いじゃ……。


 ーぐ、……ああっ!?ー

 ーアイシクル!?ー

 ーなんや! どないしたんや!?ー

 ーく、そ……っ! 入って、……くるな!ー

 ーアイシクル!ー

 ー来るな! 俺から離れろ!ー


 何、これ。

 こんな記憶、私知らない。


 ー俺は、この世界を統べる王となる。そのためには、邪魔な貴様らを殺さねばなー

 ーサラマンダー! アイシクルを返して!ー

 ー返せ、だと? 口を慎め女。こいつの意識はもう死んだも同然。こいつの身体はもう俺のものなんだよ!ー


 この声、知ってる。

 何処かで聞いた事のある声だ。

 何処で、聞いたんだっけ。

 思い出せない。


 ー…どうしてー

 ーどうしてこんな事になったの?ー

 ー私はただ、アイシクルを……。彼を救いたかっただけなのにー

 ー何で、…どうしてっー


 アイシクルを、救う……?

 一体なんなの、この記憶は…。


 ー結末を変えたい?ー

 ー変えられるのなら変えたい! どうすればいいの?ー

 ー簡単だよ。元に戻せばいいだけだー

 ー元に戻す?ー

 ーそう。戻すんだよ、時間をー


 時間を、戻す……?


 ー結末が同じなら、また戻せばいいだけの話よ。私は絶対にアイシクルを助ける! そのためならどんな事でもするわ!ー


 アイシクルを、助ける。

 アイシクルを、救う。

 何度も、……何度もやってきた。

 時間を戻して、何度も、何度も、何度も。


 ……………。


 そして、何度も同じ結末を迎えて、私はとうとう疲れてしまった。何度も時間を戻して、何度も同じ時間を繰り返して。


 だから私は、身代わりを用意した。この世界じゃない、何処か別の世界から適当な子を連れてきて、私の代わりに彼を救ってもらおうとした。何度も同じ結末になるのは"私"という存在が居るからではないか。そう思って、私は彼女にすべてを投げた。


 ………………。

 そうか。これは私(彼女)の記憶だ。

 こんな事、するべきではなかった。全部、私のせい。何度も同じ結末になるのも、私のせい。ごめんなさい、みんな。ごめんなさい、アイシクル。ごめんなさい、身代わりになった女の子。ごめんなさい、ごめんなさい。


 ごめんなさい。

 ごめんなさい。

 ごめんなさい。

 ごめんなさい。

 ごめんなさい。


 …彼女は、ずっと謝っていた。


 私は、何も言えない。何も言えない。これは、私の記憶でもあるのだ。


 アメリア・ラインハーツの記憶。


 時間を戻して、何度も同じ結末を迎えて、心が疲弊して、もう誰かに(すが)るしか自分を逃がす方法がわからなかった、私の記憶。


 …ああ。"私"は、また失敗してしまった。


 時間を戻せば、また最初からやり直せる。

 時間を戻せば、また最初からやらなければいけなくなる。


 私は、"私"に質問する。

 どちらにする? もうやめる?


 ……………。


 "私"は否定する。

 "私"は、やらなければいけない。


 一度逃げてしまった"私"だけれど、でも、どうしても、"私"は、私として、世界を、彼を、救いたい。


 …………。


 "私"は、私と、一緒に行く。

 "私"は、何度も、彼を救うのを諦めない。


 私は

 "私"は………。





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