表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/423

黒龍の羽を求めて 2





『黒龍の羽』


 伝説の魔獣が持つとされる、この世に数個しかない魔道具(まどうぐ)のうちの1つ。手にした者に強大な呪いの力を与えるが、これを手にした瞬間に自我が崩壊し、敵味方関係なく襲い掛かる。強大すぎる力ゆえに自我を失ったら最後、元には戻らない。


+


「ぐ、あああああ!!」

「がっ、くっ、苦しいっ! ぐるじいっ!! ぐおおおお!!」

「か、かね! 金が欲しい!! 金が! かねかねかねかねかねぇ!!」


 宙を舞っていた黒龍の羽を手にした瞬間、ハンターたちの様子がおかしくなった。声を荒げ、武器を片手に仲間割れを始める。目の前で突然繰り広げられるハンターたちの奇怪な行動に、私たちは何が起こったのか理解が出来ず、目を見開いていた。


「ゼオン! 貴様! 何しやがった!?」


 ハンターの一人が叫ぶ。先ほど、ゼオンさんと口論をしていた人だ。容赦なく襲い掛かってくる仲間たちに対し、彼は迷う事なく武器を振るい、殴り倒していく。


「なんにも。勝手に羽に触れたのはそっちだろ? いつまでも妖精獣の捕獲を諦めないからバチが当たったんじゃないか?」

「なっ!? んだとぉ…!? ええい! お前ら目を覚ませ!! 俺がわからないのか!!」

「残念だけど、そいつらはもうそうなっちまった以上元には戻らないぞ」

「っ、…ぐ、ぬぬぬぬっ! ぬおおお!! 貴様はぁ!! 貴様だけは絶対ぇぶっ殺す!!」


 歯を食い縛り、ハンターは武器を構える。ハンターの武器は魔弾銃(まだんじゅう)と呼ばれる二丁の銃。魔力を込めた特殊な弾を装填して放つ遠距離型の武器だ。


 引き金を引くと、銃口から勢いよく煙と共に魔力の弾が放たれる。自分たちに向けて放たれたその弾を見て、ゼオンさんは腰にさげている鞘から剣を抜いて足元に魔法陣を描いた。私たちの周りに防御壁を張り、弾を防ぐ。


「その! 妖精獣は! 俺の! ものだ!!」


 バンバンと何発も弾を放ち、叫ぶハンター。魔力が尽きれば、当然だけれど弾を放つ事はできない。


 怒りに身を任せてプチ暴走しているハンターを見ながらゼオンさんは小さく息を吐き、付近でひらひらと舞っている黒龍の羽を手にする。その羽を剣の刃の部分に当てると、羽は刃に吸い込まれるように消えていって、刃を黒く染めた。


「ぐあああっ!!」

「金! かねえええええ!!」

「ふっ、ふふ、ふふはははは! 殺す! 殺す! ここに居る奴は全員俺様のこの可愛い大剣ちゃんでなぶり殺してやるよぉ!! ふふははは!!」

「助けて! 助けてくれ!! 死にたくない! 死にたくないいいいいい!!」


 黒龍の羽を手にしたハンターたちが、叫び、武器を振るい、意識を失ったまま仲間たちを斬りつける。彼らが攻撃するのは、何も目の前に居る者たちだけではなかった。我を忘れたハンターたちが、一斉に私たちのもとまで走ってくる。


「こっちに向かってきますわ!」

「主さん…!」

[っ、…相手にするのは少し気が引けるが、ゼオン一人にやらせるわけにはいかない。私たちも戦おう]


 リネアさんの言葉に従い、アイシクルとシャスティア、トウマくんはブレイズさんたち精霊を呼び出し戦闘態勢に入る。私もイヤリングを弾いてリヴィスを呼び出そうとしたけれど、またもそれは妖精獣の手に邪魔されて出来なかった。


[ダメ。ダメ。アメリア、こっち。こっち]

「え?」


 妖精獣に手を引かれて、みんなから離れる。我を忘れたハンターたちとアイシクルたちが戦っている中、私は妖精獣に連れられて先ほどまで彼女が眠っていた岩の裏側へと歩いていった。


[アメリア、これ開けて!]

「?」


 そう言って、妖精獣は指を差す。


 岩の裏側。正面からでは見えなかったけれど、そこには箱があった。人が一人入れそうな大きな箱だ。


「箱?」


 箱を見つめて、首を傾げる。妖精獣は"開けて。開けて"と言うばかりで、箱の説明は何もしてくれなかった。


 とりあえず、このまま悩んでいても仕方がない。向こう側ではアイシクルたちが戦っているし、早いところ私も加勢しなくては。そう思って、私は妖精獣の言葉に頷いて箱に近付く。恐る恐る箱に手をかけてゆっくりと蓋を開けると、その中には。


「うわあ!?」


 箱の中に入っていたものを見て、叫びながら目を見開く。箱の中に入っていたのは大量の骨だった。人間の骨と魔獣の骨と動物の骨と妖精の骨。妖精獣曰く、この箱の中にはそれらの骨がたくさん入っているらしい。


 一部の骨には血のようなものが付着していて、それを見て私は表情を歪ませる。何てものを見せてくれるんだこの妖精獣は。


[アメリア。ここに手を入れて]

「え!?」


 妖精獣は言う。

 顔を見ると、彼女はニコニコしていた。


 眉を下げて、箱の中の大量の骨を見つめる。この中に手を入れるって、どんな拷問なのだろう。断れるなら即嫌だと断りたい。


[早く]

「っ、」


 妖精獣が私を見つめる。生唾を飲み込み、意を決して私は骨の中に手を入れた。ガラガラと骨同士がぶつかる音が聞こえる。手に触れるのは、当たり前だけれど骨しかない。


 これに何の意味があるのだろうと思いながらも、バラバラと手を動かす。少しの間そうしていると、そこでカツンと手の甲に骨以外の何かが当たった。"ん?"と首を傾げて、それを手に骨の中から手を引かせる。手にしていたのは透明なケースだった。ケースの中には白い羽が入っている。


「これは?」

[それはスペスが持ってたものなの。スペスはアメリアと同じだった。だからそれはアメリアも使えるはず]

「スペス…?」

[蓋を開けて]


 妖精獣は言う。彼女が何を言っているのかわからなかったけれど、言われた通りにケースの蓋を開けた。すると、中に入っていた白い羽が強く眩い光を放つ。


「うわっ!」


 強い光は一瞬だった。光が消えると、ケースに入っていたはずの白い羽が無くなっていて私は目を見開く。


 何処に行ったのだろうか。と探していると、ふと目に違和感を感じた。パチパチと瞬きをしても目を擦ってもその違和感は消えない。


[アメリア。こっち見て]

「?」


 呼ばれて、妖精獣の方に顔を向ける。特に何も変わらない彼女の姿。けれど彼女を見つめていると、ざわざわと少しずつ目の中が疼いた。そしてそのままじっと彼女を見つめていると、うっすらと彼女の身体に黒い渦が巻き付いているのが見え始める。その黒い渦は、蛇のように彼女の身体の周囲を漂っていた。


[何か見えた?]

「何かって、…え、何その、蛇みたいな…。今までそんなの無かったよね?」

[これが、呪いだよ]

「呪い?」

[うん。ほら、見てみて。あそこで戦っているみんなの中にもあるよ]

「…?」


 そう言って、妖精獣はアイシクルたちの方に顔を向ける。


 彼女の身体を這う黒い渦に表情を歪ませながら私も彼らの方に顔を向けると、そこに広がっていたのは先ほどまでとは違う光景だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ