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地の迷宮 ガーベラ・スカビオサ 2 ※トウマ視点






 一時的に主さんを仲間に加えた俺たちは、再び迷路の中を進む。"迷路を進むためには地図は絶対に必要"と、そう言って主さんが取り出したのは一枚の紙切れだった。受け取って少し待つと、その紙にはこれまで俺たちが通ってきた道が炙り出しのようにゆっくりと浮かび上がってきた。道の他にも十字のマークが浮かび上がってきて、このマークは俺たちの現在位置を表しているのだそうだ。


[ほら、これがあればもう迷う心配はないよ]

[おお、すげえ! どうなってんだこれ!?]

[ちなみに、ペンが無くても歩けば勝手に新たな道が書き足されていく仕様だ。名付けて"自動マップ・バージョン3"!]

[バージョン3?]

[…という事は、この前に1と2があったのですか?]

[ふふ。それはご想像にお任せするよ]


 口元を緩ませて、主さんは笑う。


「それにしても、ここまで結構な距離歩いてきましたのね」

「ここがスタート地点だから、ここをこう行ってこうでこうで…。なかなかくねくねした道のり歩いてきたんだな」


 スタート地点に指を添えて、現在地までの道をなぞる。くねくねとあみだくじみたいな道を辿って、俺たちはここまで歩いてきたみたいだ。これまで歩いてきた道にも書かれていない部分がいくつもあった。こうして未完成の地図を渡されると、なんだか無性に完成させたいという気持ちが沸々と沸き上がってくる。


[どうだいトウマ。うずうずしてくるだろ?]

「はい、なんか…うずうずしてるというか、わくわくしてます。うーん。…こうしてみるとまだまだ行ってない箇所がいっぱいあるな。 この道の先はどうなってるんだろう…。うぅ、引き返して行ってみたいけど、でも」


 うぐぐ。と、顎に手を添えて眉をひそめながら地図を見つめる。


 真剣な表情を浮かべながら地図とにらめっこを始めた俺を見て、シャスティアと精霊たちはそれぞれ顔を見合わせた。


[トウマさま、どうしたのでしょう?]

「なんだか嬉しそうですわね」

[トウマは"ゲーマー"だからね。血が騒いでいるんだろう]

[…げえまあ?]


 主さんの言葉を聞いて、シャスティアたちは首を傾げる。


 ゲーマーなんて単語、この世界に来て久し振りに聞いた。


[トウマ。地図を埋める時間はないからあとに取っておきな。今は一刻も早く先に進まないとだからね]

「! わ、わかってます。この地図を見る限り、全部埋めるのにはだいぶ時間が掛かりそうですもんね。外でアメリアたちを待たせている手前、こんな事で時間を消費するわけにはいかないですよね。わかってます。わかってますよ! …うん。外ではアメリアたちが待ってるんだから、早くノエルのところに行かないとな。アメリアたちが待ってるんだからな。うん」

「何故3回も言う必要が?」

[おそらく、地図を埋めたいという気持ちと仲間を待たせてはいけないという気持ちが彼の中で主張しあっているのだろう]

[地図を埋めたいという気持ち、なんとなくわかる気がします。ここには何があるのだろう。選ばなかった道の方にはもしかしたら宝箱があったのかもしれない。と、思ったら、胸の奥がうずうずしてきますよね]

[…そうか?]


 柱の外で待つアメリアたちのために、ここはぐっと我慢。地図を見つめながらそう思い、地図を傍に居たノルンに渡す。


 これ以上それを持っていると危険だ。リラックスしろトウマ。平常心。平常心。


[トウマ、大丈夫?]

「ん? …ああ、うん。大丈夫。危うく我を忘れそうだったけど」

[地図で我を忘れるってどういう事だよ]

[さて。トウマも落ち着いた事だし、そろそろ先に進もう。まだまだ折り返しには遠いからね。ノルン、先頭を頼めるかい?]

[…ええ。もちろんよ]


 主さんの言葉に頷いて、ノルンは地図を見つめながら歩き出す。彼女が歩くと地図には道が自動で書き足されていった。俺たちもノルンのあとに続く。地図を埋めたいという衝動を抑えながら最後まで行くというのは個人的になかなか厳しい事だけど、シャスティアたちには迷惑は掛けられないし、それに外ではアメリアたちが俺たちの帰りを待っているから、多少無理をしてでもこれだけは表には出してはいけない。


 だけど、ここに居るのがもし俺一人だったら? 迷惑を掛ける相手も居なくて、外で待っている相手も居ないとしたら? ……その場合、俺は確実に本来の目的を頭の片隅に置いて地図埋め作業に没頭するだろう。…ああ。地図埋めがしたい。


「うぅ、……うぅ~ん……」

[あの、シャスティアさま。トウマさまがさっきから変なんですけど?]

「プクプ、あれはおそらく見てはいけないものですわ」



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