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仲間を求めて 5






 …という訳で、やって来ました"名もなき森"。この森にトウマくんたちが居るという話だけれど、やっぱり何処に行っても森というのは鬱蒼としている。見渡す限り木と草花ばかりでそれ以外何もない。


「ここにトウマたちが居るのか?」

『……、』

ー迷宮区って何処にあるの?ー

[入り口に行けばたてかんがあるから見ればわかる]

「たてかん?」

[ついてくればわかる]


 そう言って、シェルが先行して森の中へ足を踏み入れる。私たちは互いに顔を見合わせて、彼の後ろをついていった。


 報告しておくと、先ほどのシャスティアによる衣服選びの件は"少年系の衣服"を選びました。優雅でも清楚でも正直に言えばどれでも良かったのだけれど、この姿でドレスっぽい衣服はどうなのかなと思ったのと動きやすそうだからという理由で、優雅、清楚、少年の三つの中から少年系の衣服を選びました。ちなみに、Tシャツと短パンです。



+


「…あー、たてかん二つあるけど?」

[マジか]


 私たちはシェルのあとについていって森の中を歩く。暗い森の中をひたすら進み、その先にあったのは、二股の道と二つのたてかん(立て看板)だった。


 二つの看板には同じ文章が書かれてて、それを見てシェルは眉をひそめる。


「…この先、迷宮区」

「こちらにも同じものが書いてありますわ」

『どっちに行けばいいの?』


 アイシクルの肩から身を乗り出して、二つの立て看板を見る。右の道に行っても左の道に行っても迷宮区とはどういう事か。


[うーん、…右だな!]

「根拠は?」

[そんなものはない。ただの勘]

「勘って。適当ですわね」

[こんなとこで迷ってても仕方ないだろ? ほら、行くぞ]

「あ、シェル! 待ってください! せめて相談を!」


 さっさと行く道を決めて歩き出してしまったシェルにシャスティアは慌ててついていく。そんな二人の背中を横目に私は立て看板を見つめていた。


 同じ文章が書かれた二つの立て看板。見た目はほぼ同じだけれど、その二つの立て看板の下には花が咲いていた。右の立て看板の下には白い花、左の立て看板の下には青い花が二輪ずつ咲いていて、私はそれを見て頭の上に"?"を浮かべる。


『…?』

「アメリア、どうした?」

『……』

「…、アメリア?」

[アイシクル、俺たちも行こう。置いてかれると大変だ]


 ブレイズさんが言って、私たちもその場から歩き始める。二つの看板の下に咲いた二種類の花。特に意味はないのかもしれないけれど、気にはなるので頭の隅に置いておこう。



+


「あら? また立て看板ですわよ?」


 先に進むと、またしてもそこには二股の道と二つの立て看板があった。二つの看板には先ほどと同じく"この先、迷宮区"と書かれていて、それを見てシェルは再び眉をひそめる。


[次はどっちに行くんだ?]

[…おかしいな。迷宮区ってこんなとこだったか?]


 うーん。と、頭を悩ませてシェルは腕を組んで考える。立て看板の下には、花が咲いていた。白い花と青い花。右と左の立て看板の下にそれぞれ二輪ずつ。


[よしっ。今度は左だ!]

「また勘ですの?」

[当然]

「…はぁ。適当に進んで迷いでもしたら貴方容赦しませんわよ」


 シェルとシャスティアは左の道を進む。左の立て看板の下には白い花が咲いていた。


 そういえば先ほど選んだ道の立て看板の下にも白い花が咲いていたけれど、これは偶然だろうか。


+


[朗報だシェル。またあったぞ]

[…どうなってんの?]


 先を進むと、またまたあった二股の道と立て看板二つ。やはりその二つの看板にも"この先、迷宮区"という文章が書かれていた。


 二つ立て看板の下を見ると、白と青の花がさも当然のように咲いている。それを見て、私は頭を悩ませた。やっぱりこの花、何か意味があるのかな。


「今度はどっちにいたしますの?」

[うーん、…次は右かな。いや、左? …違う。やっぱ右だ!]

[信じていいんだな?]

[…いや、自信はもうない]

「選んだからにはせめて自信くらい持ってくださいませ」


 右の道を選んだシェルを信じて、シャスティアとブレイズさんは彼と共に歩き始める。シェルが選んだ右の道の立て看板の下には青い花が咲いていた。


 白いの花と青い花。何か違いがあるのか。頬に手を当てて考えていると、アイシクルが口を開いて"どうしたのか"と聞いてきた。立て看板の下にある二種類の花を指差すと、彼もそれを見つめて頭の上に"?"を浮かべる。


「…花?」

『うん。一回目の時も二回目の時も、立て看板の下に花があったの。…何か意味があるのかなって』

「今まで俺たちが来た道の看板にはどっちの花が咲いてたんだ?」

『白い花だよ。…で、今回は青い花の道を選んでった』

「……、」


 顎に手を添えて、アイシクルは眉をひそめて考える。この花たちはもしかして、迷わないための目印として咲いているのか、或いは迷わせるための罠として咲いているのか。


「アメリアさん! アイシクルさま! 何をしていますの! 早く来てくださいませ!」


 先を歩いていたシャスティアが私たちを呼ぶ。


 シャスティアの方に顔を向けて、声には出さないけれど、アイシクルは手をあげて"今行く"と彼女に伝えた。


「とりあえず俺たちも行こう。先に進んで、また同じ状況になったらブレイズたちにも話して考えればいい」

『……うん』


 そう言って、アイシクルは歩き始める。私は花の方に顔を向けて、頭を悩ませ続けた。そして、右の道を歩いていった先でも二股の道と二つの立て看板が私たちの前に現れる。


+


「もう! どうなっていますの!?」


 シャスティアが口を開いて叫ぶ。

 四回目の二股の道と立て看板。私たちはそれを見て、シェルの方に顔を向けた。


[…で、シェル。次はどっちに行けばいいんだ?]

[楽しそうに聞かないでくれる?]

「…ここにも花があるな」

『うん。やっぱりあった』

「花?」


 立て看板の下には、今までと同じく花があった。地面に片膝を付いて、アイシクルはその花をまじまじと見つめる。


[アイシクル、どうしたんだ?]

「ここに花があるんだ」

[花?]

「まぁ。綺麗な花ですわね」

[どうしてこんなとこに花なんて…?]

[まぁ、ここは森だからな。花が咲いていてもおなしくはない]

「アメリアが言うには、今まで俺たちが通ってきた道の看板の下にもこの花が咲いてたらしい」

[そうなのか? …全然気が付かなかった]

「看板の下に二つの花…。何か意味があるのでしょうか?」


 シャスティアもその場にしゃがみ込み、花を見つめる。


 看板にはこれまで通り"この先、迷宮区"と書かれていたけれど、しかし今回は今までのものとは違い、文章が書き足されていた。それを見つけて、私はアイシクルに伝える。


『ねぇ、ここに何か書いてあるよ』

「? …本当だ。…何々。問題、これからの世界に必要なものを次の中から選べ。1、世界に希望をもたらす勇者。2、世界に破滅をもたらす魔王。ただし、この問題には正解はない。己の選んだ答えの道を信じて進め。…、なにこれ?」

[これからの世界に必要なもの?]

「何ですのこれ? 意味がわかりませんわ」

『希望と破滅?』


 どういう意味だろう。


[…っていうかこれ、どう考えても1だろ。1。この"ゆうしゃ"ってのがよくわからんが、俺たちから言わせてみれば世界の破滅なんて絶対に駄目だし。なぁ、ブレイズ?]

[ああ、…まぁ、]

[って事は、えーと…左に行けばいいのか]


 シェルは言う。


 …まぁ、普通に考えれば選ぶのは1の"世界に希望をもたらす勇者"だよね。希望か破滅かの二択なら圧倒的に希望の方が良いし。破滅って、…なんか怖い。


「それじゃ、左の道に進みますの?」

[…そうだな。異論はない]

「うん。俺も。左でいいと思う」

『私も構わないよ』

「アメリアも構わないって」

[よし、全会一致だな。じゃあ左の道へゴー!]


 シェルの言葉に頷き、私たちは左の道へ進む。


 何だったんだろうあの問題は。そう思いながら、私はアイシクルの肩に掴まって頬に手を当てた。



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