仲間を求めて 4
船の上でのイカ襲撃事件の影響で少し時間が伸びてしまったけれど、なんとか私たちは東の国に到着。甲板から桟橋へ降りたあと、すぐにブレイズさんは宿屋へ案内すると私たちに告げ、私たちは彼のあとについて宿屋へと向かった。
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「まぁ! では、この小さい御方がアメリアさんなんですの?」
『……、』
驚いた様子でそう言ったシャスティアは、私の顔を指でツンツンしてくる。その動作があまりにもしつこかったので、私はパシンッと彼女の手を払ってジェスチャーで"止めて!"と伝えた。
私たちがシャスティアたちと合流したのは、宿屋に入って数分後の事。ロビーでくつろいでいた私たちのもとに彼女たちはやって来た。その場にアイシクルしか居なかった事に疑問を感じていたシャスティアだったけれど、かくかくしかじかと事情を説明すればいとも簡単に彼女は納得してくれた。
「でも良かったですわ。こんな形であれ、アメリアさんと合流出来て。これであと見つかっていないのは、ローデンさまとアンジェラですわね。…ああ、ローデンさま。貴方は今頃何処で何をしていますの?」
『……?』
シャスティアは言う。
その言葉を聞いて、私は頭の上に"?"を浮かべた。持ってきていた紙とペンを使って一生懸命に文字を書き彼女に質問する。
ートウマくんは?ー
「? トウマさん? トウマさんならもう居場所はわかっていますわ。シェルが見つけてくださいました」
『!』
ー本当?ー
「ええ。トウマさんは今、この国の西……名もなき森の中にある"迷宮区"という所に居るみたいですわ」
『……』
「ですから、アメリアさんと合流したあとでそちらに向かおうとさっきシェルと相談していたのです」
[昨日の夜中に突然ウンディーネちゃんの気配を感じてさ。詳しく視てみたらそこに彼女たちが居るってわかったんだ]
「離れた場所に居てもお互いの居場所がわかるって便利ですわよね」
口元を緩ませて、シャスティアは笑う。
チュウオウタワーから落ちてきてから凄く心配していたけれど、どうにかトウマくんも無事に此方に戻ってきているみたいで良かった。ずっと不安だったからこれでなんとか一安心だ。
[でもこれで一つ謎が解けたな、シャスティア]
「ええ。先ほどまで"どうしてウンディーネがトウマさんと一緒に居るのだろうか"と疑問に思っていましたが、今のアメリアさんの姿を見て納得しましたわ」
『……』
シャスティアは指の腹で私の頭を撫でる。ぐりぐりと強めの撫でがちょっとだけ痛い。
確かに私も、アイシクルの所に落ちてきた時にリヴィスが何処にも居ない事に疑問を感じていた。イヤリングごと無くなっていて何処に行ったのかと思っていたけれど、なるほど、トウマくんの所に居たのか。
『……』
ーなら、シャスティアたちはこれからその森に?ー
「ええ。そのつもりですわ」
[準備はあらかた終わってるから、あとはもう出発するだけだ]
「[『……』]」
シャスティアたちは、これからトウマくんたちに会いに森へと向かう。それを聞いて、私たちは顔を見合わせて頷いた。
アイシクルの足元で休んでいたケルンが"わんわん"と吠える。
『…!』
ー私たちも付いていく!ー
「当然ですわ。私たちはもう共闘者なんですもの」
「共闘者?」
「共に闘う者、と書いて共闘者ですわ。共闘者というのは、北の国へ帰るまでの間の私たちの呼び名です」
『……』
ー仲間、じゃ駄目なの?ー
「仲間だなんて言い方はよしてくださいませ。私たちは、たまたまあの場に偶然に集められただけの共闘者です。これは決定事項ですわ。変更は受け付けません。よろしいですわね?」
『……』
眉をひそめてシャスティアは言う。迫ってきた顔と言葉の圧に押されて、私はペンを手放して素早く頷いた。共闘者ね。共闘者。私たちは仲間じゃなくて共闘者。うん。了解。
[うしっ。じゃあそうと決まれば早速名もなき森へレッツゴーか?]
「…、いえ。少し待ってください、シェル」
[ん? なんだ、まだ何か話したい事でも?]
「そうではありませんわ。ですが、少し私に時間をくださいませ。少々やる事が出来てしまいましたので」
[やる事?]
そう言って、シャスティアは私の身体に触れる。
くすぐったいので止めてくださいませ。
「…アイシクルさま。アメリアさんを少しの間お借りしますね」
「え?」
『……?』
そしてそのままシャスティアは私を手に持ち、アイシクルたちに背を向けて歩き始めた。
何処へ向かうかは知らされず、私はおとなしくシャスティアの手に掴まる。見ると、シャスティアの顔は真剣そのものだった。
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『…えーと、』
雑貨&食事屋。そこにあるイートインスペース内のテーブルの上。カフェオレの入った蓋付きのカップと一緒にずらりと並んだ人形用の衣服を見つめて、私は困惑していた。
ここのテーブルの上で待っているようにと言われてから数分。シャスティアが持ってきたのは、片手で持てるサイズの小さな紙袋だった。そこに入ったいたのは透明な箱に梱包された人形用の衣服の数々。彼女はそれらをテーブルの上に並べて、"どうぞこの中からお好きな物を選んでくださいませ!"と何の説明もなく私に言ってきた。どういう事なのか全然わからず、私はここへ来てからずっと頭の上に"?"を大量に浮かべているばかりだ。
『……』
ーなにこれ?ー
「見たらおわかりでしょう? …さぁ、アメリアさん。この中からお好きなものを選んでくださいませ」
『…?』
ーどうして?ー
「どうしてって…。…はぁ。どうやら貴女は今のご自分の状況を理解していないみたいですわね」
首を傾げて聞く私を見て、シャスティアは溜め息を吐く。そして彼女は紙袋の中に手を入れて鏡を取り出した。衣服と一緒に買ったのだろう。鏡の右下に値札が貼られている。
鏡には私の姿が映っていた。白くて丸々とした私。少しだけでっぷりとしたお腹は、触ると柔らかくてだいぶぷにぷにとしていた。
「よく見てくださいませ、貴女の今のお姿を。どこかおかしい所はありませんか?」
『……、』
ーおかしい所?ー
聞かれて、自分の身体を隅々まで見てみる。特におなしな所はない。
ー何もないけど?ー
「あるでしょう!? 根本的に! 私と見比べておかしな所が!」
『???』
大きな声をあげて、シャスティアは言う。私はもう一度、自分の身体を隅々まで見てみた。けれど、何度見たところで特におかしな所なんて見当たらない。
シャスティアと見比べて、根本的におかしな所って…それってどこ?
「…ああもう! 何でわからないんですの!?」
『!?』
「衣服です、衣服! 貴女は今、まったく衣服を身に付けていないんですよ!?」
『…?』
衣服?
きょとんと首を傾げて、再び鏡に映る自分を見る。
ああ。確かに言われてみれば私今服着てないね。あまり気にした事なかった。
ーそれがどうしたの?ー
「それがって、…ちょっと! 貴女がその姿になってどれほど経っているかわかりませんけれど、その反応はだいぶおかしいですわよ!? そんな姿になったからといって人間であった頃の貴女を失わないでくださいませ!!」
『……』
シャスティアは叫び続ける。
周辺を歩いている人たちが、今どんな気持ちで私たちを見ているかなんて考えたくはない。
「いいですか、アメリアさん。よく考えてくださいませ。アメリアさんは今までずっとアイシクルさまと一緒だったんですのよね?」
『……』
「衣服を身に付けていない。つまり貴女は今、現在進行形で裸なんです。という事は、貴女は今までずっと裸の状態でアイシクルさまと一緒に居たという事になるのですわよ?」
『…、』
衣服を身に付けていない。=裸。シャスティアの言葉が頭の中で復唱される。私は、今までずっと裸だった? その状態で、ずっとアイシクルの傍に居た?
ずっと裸。ずっと裸。ずっとはだか。ずっとはだか。ずっと。…ずっと?
『!?』
そこでやっとシャスティアの言葉を理解し、私はハッとする。声が出ないので叫ぶに叫べず、代わりにペンで紙にたくさん吃驚マークを書いた。
『……』
なんで今まで気付かなかったのか。いや、気付いていたけれど気付いていないフリをしていたのか。…いやいや、気付いていないフリなんてしていない。本当に気付いていなかった、というか気にしていなかった。
私は両手を顔に押し当てて、顔を伏せる。今までずっと裸。シャスティアの言う通り、チュウオウタワーからここまで私はずっと裸で、アイシクルの肩に乗ったりケルンに乗ったりアイシクルの手に掴まれたりしていた。
『…っ、』
どうしよう。凄く恥ずかしくなってきた。
「まったく。…ようやく理解したようですわね。今まで自分がどれだけ周りの人間に醜態を晒してきたか」
『…うぅ』
返す言葉もない。
「では、話を戻しますわ。さぁ、この中からお好きなものを選んでくださいませ。ここは無難に優雅系で行きますか? それともその白に合わせて清楚系で行ってみます? …ああでも、ここは思いきって少年系という選択もありますわよ?」
言いながら、シャスティアはテーブルの上に並んだ衣服を見つめてどんどんおすすめのそれを選んで私に渡してくれる。
鏡を見ると、恥ずかしさからか私の身体はだいぶピンク寄りの色に染まっていた。




