表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/423

目が覚めると……?






「…ん、」


 目を覚ますと、そこは知らない場所だった。ここは何処だろう。私は一体どうしてここに…?


「目が覚めたかしら?」

「!」


 ボーッとしている頭で考えていると、近場から声が聞こえた。聞き慣れた声に顔を向けると、そこには彼女…アメリアさんが居て、彼女は私を見つめながら口元を緩ませている。私が寝ているベッドの脇にある丸椅子に座っていたアメリアさんは本を読んでいたようで、それを近くにあった棚の上に置いた。


「…ここは?」

「見ての通り小屋の中よ。良かったわね、助かって」

「助かった…?、…っ」


 痛みに表情を歪ませながら起き上がる。見ると、所々に包帯が巻かれていた。着ている服も変わっていて、それを見て私は頭の上に"?"を浮かべる。


「……、」


 キョロキョロと辺りを見渡してみると、アメリアさんの言う通り、確かにここは小屋の中みたいだった。"誰が助けてくれたんだろう?"と思っていると、そこで再び声が聞こえてくる。窓が開いているため、外の声がここまで届いて来たのだ。


「あら。外は楽しそうね」


 窓から外を見つめて、アメリアさんは言う。ベッドから降りて私も窓から外を見てみると、声と共にカコンという音も聞こえてきた。見ると、小屋の出入り口付近には人が居た。


 一人は斧を片手に薪割りをしていて、もう一人はそれを見つめながらぴょんぴょんと飛び跳ねている。薪割りをしている人の方はフードを被っているためここからでは顔が見えないけれど、もう一人の飛び跳ねている方には見覚えがあった。彼の姿を見て声をあげる。


「彼らが貴女たちを介抱してくれたのよ?」


 アメリアさんが言う。ああ。なんとなくだけれど思い出してきた。私たちはあの時、襲われたんだ。北の海峡にしか姿を現さないと言われた"セント大王イカ"という巨大なイカに。


 壊されかけた船の上で戦ったのがそもそもの間違いだった。私たちはセント大王イカに全滅寸前にまで追い詰められてしまい、呆気なく船と共に海に落とされてしまったのだ。みんなとはそのままはぐれてしまって、しばらくは頑張っていたけれど、海の冷たさと蓄積された疲労で私は次第に意識を失ってしまった。


「お礼をしないとね」

「…?」


 アメリアさんは笑う。そこでふと、彼女が言った言葉に疑問を持った。今アメリアさん"貴女たち"って言った? ここに居るのは私だけじゃないの?


「アメリア!」


 首を傾げて考えていると、その時背後から私を呼ぶ声がした。声を聞いて振り向くと、そこに居たのは。


「トウマくん…!」


 振り向いた先に居たのは、トウマくんだった。トウマくんは驚いた表情を浮かべたあと、足早に近付いてきて私の肩に勢いよく手を置く。突然の彼の登場に吃驚して目を見開いたけれど、私はトウマくんの元気そうな姿を見てホッと胸を撫で下ろした。


「アメリア! 良かった! 目が覚めたんだな!」

「ん、うん。ト、トウマくんも無事だったんだね。良かった…」


 肩に置かれた手には力が入っていて、ちょっと痛い。


「本当に良かった…!」

「う、うん。だけどトウマくん…、ちょっと痛い」

「! …ああ、ごめん。怪我してるんだったな。…大丈夫か?」

「うん、大丈夫…。あ、いや、大丈夫じゃない…けど、大丈夫」

「…どっちなの?」


 私から少し離れて、トウマくんは眉を下げて笑う。その様子から、どうやら凄く心配されていたようだ。


[アメリア! 起きた! 起きた!]

「「!?」」


 すると、今度は外から声が聞こえてくる。今日はよく声が掛かる日だな。そう思いながら声の方に顔を向けると、それは窓の外でぴょんぴょんと飛び跳ねていた。結構な声量で聞こえてきたものだから、私とトウマくんは目を見開いて肩を震わせる。ピピピと音を鳴らして、それは嬉しそうに目を細めて笑っていた。


「コロタマ!?」


 ぴょんぴょんと飛び跳ねているそれを見て、私は吃驚して声をあげる。名前を呼ばれ、それは、ドンッと音を立てて部屋の中に入ってきた。私の腕に飛び込み、再びピピピと音を鳴らす。


 私たちの目の前に現れたのは、コロタマと呼ばれる銀色の球体だった。数年前に師匠の家で一緒に暮らしていたスイさんという男の人の傍に居た機械の球だ。


「コロタマ、邪魔しちゃ駄目」

「うわっ!」

[スイ! アメリア、起きた! 起きた!]

「わかってる。…目が覚めて良かった」


 コロタマがここに居るという事は、=彼もここに居るという事。でも、どうして彼らがこんな所に居るのだろうか。眉をひそめて腕の中に飛び込んできたコロタマを見つめながら考えていると、いつの間にやら彼もここへやって来ていた。窓の向こうから、スイさんは私とトウマくんの顔を交互に見つめて口元を緩ませている。フードを被っているスタイルは変わらずのようだ。


「スイさん?」

「彼が俺たちを見つけてくれたんだ」

[アメリア、トウマ、森で倒れてた。僕が見つけてスイに知らせた。偉い。偉い]

「傷だらけで倒れてるのを見た時は驚いた」

「森?」

「海でアメリアを見つけたあと、そのまま泳いで近くに見えていた陸にあがったんだよ。それでしばらくアメリアを背負いながら森の中を歩いてたんだけど、限界が来て倒れちゃったんだ」

「…なるほど」


 トウマくんの言葉に頷く。


 そしてそのあと、傷だらけ+ずぶ濡れの状態で倒れていたのをスイさんたちに発見されて、私たちは彼らが住むこの小屋に運ばれた。というわけか。


「そうだったんですね。助けてくれてありがとうございます、スイさん」

「お礼なんていいよ。…濡れてた服はあそこで干してあるから、乾いたら持っていって。それじゃ、まだ薪割りが残ってるから」


 そう言って、スイさんは踵を返して私たちから離れていく。スイさんを見送ったあと、私はトウマくんに聞いてみた。


「…ねぇ、トウマくん。私、どれくらい寝てたの?」

「え? あー、えーと、…三日くらいかな?」

[トウマ、二日寝てた。アメリア、三日寝てた]

「三日も…。シャスティアたちは?」

「わからない。ローデンさんには端末で逐一連絡してるんだけど、なかなか繋がらなくてさ。無事でいるといいんだけど」

「そう…」


 言いながら、トウマくんと私は眉を下げる。ピピピと音を鳴らして、コロタマはぴょんとベッドの上に飛び降りた。


[…? アメリア。誰か探してるの?]

「…うん。友達をね。はぐれちゃったんだ」

[友達。はぐれちゃった。悲しい。悲しい。友達。悲しい]


 ベッドの上で、コロタマはコロコロと転がる。悲しい悲しいと言いながら転がり続けるコロタマを見て、私もベッドの上に腰を降ろした。するとそこで、"ぐー"と誰かのお腹が鳴る。誰のお腹が鳴ったのか、すぐにコロタマが教えてくれた。


[トウマ。お腹空いた]

「…ごめん。そういえば俺、今朝から何も食べてないや」

[トマト食べる?]

「トマト?」

[今朝採れた野菜。新鮮。新鮮]


 パカッと身体を開いて、コロタマはその中に入ったトマトをトウマくんに見せる。トマトは二つ入っていた。美味しそうなトマトだ。


[トマト。トマト。美味しい。美味しい]

「…ああ、と。ごめんコロタマ。俺、トマト苦手なんだよ。だから気持ちだけ受け取っておく」

[ぬぬ。トマト苦手。残念。無念]


 カポッと身体を閉じる。


[じゃあトウマにも食べられそうなご飯、スイに聞いてくる]


 そう言って、コロタマはぴょんとベッドから降りて部屋を出ていく。パタンと扉が閉まり、コロタマが居た所にトウマくんは腰を降ろした。


 傷が少しだけ痛む。眉を下げて包帯に触れていると、トウマくんが心配そうに顔を此方に向けた。


「大丈夫か?」

「…うん、大丈夫。ちょっと痛みが来ただけだから」

「相当傷が深かったんだろうな。コロタマの治癒魔法だけじゃ、完全には治らなかったみたいだ」


 スイさんは治癒魔法を使えないらしいし、これ以上の治癒が見込めないんじゃ、あとは自然治癒の力に任せるしかない。トウマくんは言って、肩を竦める。


 自然治癒の力。包帯の下にある傷がどれ程のものかはわからないけれど、それだとあと何日くらいしたらこの包帯は取れるのだろうか。


「それより、これからどうするの?」

「? …うーん。まずはローデンさんたちを捜しに行きたいけど、でも先にここが何処なのかを把握しないと」

「コロタマに聞いてみる?」

「…そうだな。戻ってきたら聞いてみよう」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ