表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/445

[84]

「また三年生が来ているぞ」


教室の入り口に女子生徒が集まるようになった。卒業が近づいた三年の女子生徒だ。中を覗いてはいるが何をするということもない。


「何をしたいんだろうな」

ベンヤミンにも見当がつかないらしい。


「レオ様の見納めに来ているのではないですか?」

『なんだよそれ』

「案外トルストイの言うことも間違ってないかもしれませんよ ここを出たらレオ様にお会いする機会はうんと減りますから」

『まさか それはないだろう』

そこまで珍しい存在でもあるまい。


「マルクスは何か知っているんじゃないのか?姉がいるだろう」

ええ まぁ・・・とマルクスは言葉を濁す。

「えー!解ってるなら教えてくれよ 毎日あれでは廊下にも出にくくて困るじゃないか」

『マルクス 知っているなら教えてくれ』


「恐らくレオ様をお誘いに来ているのだと思います」

「誘い?何の誘いだ?」

「あ・・・もしかして・・・」

『舞踏会・・・か?』

「そうです・・・あの・・・うちの姉もお誘いしたいと大それたことを言っていましたから・・・」

「「・・・」」

「僕が同じクラスだから行きにくいとは言ってましたので良かったですが」


卒業生のための舞踏会だ。学園内のホールでの催しだが、女子生徒はそこで初めてパリュールを身に着け、裾の長いドレスを纏う。参加できるのは卒業生と、そのパートナーに指名された在校生のみだ。


『全ての女子生徒が私を誘いに来ているわけではないだろうが 私は今年参加するつもりはないよ』

申し訳ないが、ファーストダンスの相手はもう決めている。このくらいの我儘は通させてほしい。


「そうなのですか 残念がるだろうなぁ 姉曰く他の女子生徒はライバルではないそうなのです 誰かがお誘いできれば舞踏会でレオ様のお姿が拝見できるからと・・・」

「それはそれで なんというか平和的でいいな・・・」

『ベンヤミン その[平和的]の使い方はなんとなく間違っている気がするぞ』

「なんでだよ レオの隣の座をかけて争いが始まるよりいいだろう」

『・・・』


『ともかく私は自分の卒業まで参加するつもりはない』

「そう書いて掲示板に貼るのが一番手っ取り早そうだな」

『絶対に止めろ』



数日後には入り口を塞ぐ女子生徒はいなくなった。マルクスとその姉には感謝しかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ