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懐かしい顔が執務室を訪ねてきた。


「お久しぶりでございます 先程王都へ戻りました」

『三年間の国境警備ご苦労だった リリエンステット卿』


ボレーリン国境警備の任期を終えたヴィルホが、王都に帰還したのだ。

『今後は第一の副団長だったな』

「はい 王都の治安維持に最善を尽くします」


引き続き第一騎士団に所属し、数年の後には父の後を継いで将軍職に就くことが決まっている。



『ヴィルホ 今日はもう帰れ 夫人と息子が首を長くして待っているだろう』

三年ぶりの再会となるのは、彼の家族も同じなのだ。乳飲み子だった彼の嫡男ボルイェも、今では邸中を元気に駆け回るまでに成長した。


「ありがとうございます お言葉に甘えさせて頂きます」

『うん』



彼が出ていった先を視線だけで見送っていたベンヤミンが、ふと振り返った。

「会いたかっただろうな リリエンステット侯爵 すっかり大きくなっていて驚くんだろうなー」

『そうだな』


最後に会った息子は、寝返りすらできない赤子だったのだ。抱くことも、怖がってなかなかできずにいた当時のヴィルホを思い出して懐かしくなる。


「その点義姉さんとベロニカ連れて行ってる ケヴ兄は恵まれているよな」

ヴィルホとほぼ同じ時期に直轄地代官になったベンヤミンの兄、デルリオ侯爵はあと一年半の任期が残っている。


騎士と代官では立場も違うため、簡単に比べることは難しいけれど、家族を伴っての赴任という部分だけで考えるなら、夫人と娘に支えられているデルリオ侯爵は、恵まれていると思ってもいいのかもしれない。



デルリオ侯爵は今三十四歳。

一年半後中央に復帰してからは、さらに上級の官僚になるはずだ。周囲にもゆくゆくは彼が宰相の座につくだろうと考えているものが多い。


そして現在私の側近と自他共に認めているものが、彼の弟であるベンヤミン=ノシュールだ。


ノシュールが極めて発言権の強い座に二人就くことを、快く思わないもの達がいないわけではない。

このことは今考えないようにしようと、先延ばしにし続けている。


私の言い分を言わせてもらうならば、ベンヤミンとデニスを私の側近にしようとしたのは、二人を私の勉強仲間に推薦したもの達だ。そう、もう十年も十五年も前の話さ。

当然、当時既に彼らには優秀な兄がいた。こうなることは予測できていただろうに。



それを言うなら騎士団はどうなんだ?

圧倒的なダールイベック勢力じゃないか。そこには誰も疑問を呈さないのが逆に不思議だ。


今はいい、均衡が保たれていて両公爵家も互いに友好的だ。私の婚約者はダールイベックの令嬢で、ノシュールの令息は右腕だ。だがいびつじゃないか?この国は二つの公爵家に頼りすぎだ。



「レオ?どうした?珍しいな執務中にぼーっとするなんてさ」

ベンヤミンが伸びをしながら笑いかける。


『うん ちょっと集中が切れたな』

同じく伸びをしながら答えた。



優秀で、この国にとって欠くことの出来ない人材二人が、たまたま血の繋がった兄弟だと言うだけだろう。不満があるならそれ以上のことをやって見せればいいんだ。



『飯にしようか』

「おっ!そうだな 休むときは休む そしてまた頑張る! 飯行こうぜ」



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