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メルトルッカで私達が滞在した宮はとても素晴らしかったんです。

レオ様が『元は王妃宮だったのだと思う』と仰って、私も納得でした。


ステファンマルクに留学で来られる方のお住まいは、その方の身分に関わらず学園内にある寮ですから、その差にはただただ驚くばかりでした。



到着の夜に催された歓迎の晩餐も、私達ステファンマルクの人間には衝撃の大きいものでした。レオ様も驚かれていましたから。


国王陛下と、王太子殿下ご夫妻、そしてレオ様と私を中心として輪のようにテーブルが用意されていました。驚くのはその後です。その輪の外に一回り大きな輪がもう一つ。


その外側のテーブルにも私達と同じ人数分の席がありました。

運ばれてきたお料理は最初にその方々の前に置かれます。


「もしかしてそれはお毒見?」


そうなのです。メルトルッカでは全ての食事にお毒見がつきました。かつて悲しい出来事が続いた王家は、どんなささやかなお茶の時間ですらお毒見を欠かすことはないのですって。



話が前後してしまいました。

国王陛下とは謁見室を通さず、その晩餐の席で初めてお会いしました。

二年前に体調をお崩しになられ心配しておりましたが、その後無事回復なさったとか。拝見したご様子ではお元気そうに見えました。



翌日は学院の校舎を見学に行きまして、その後城下の町を一通り案内していただきました。

そうそう!制服は夏と冬で二種類あったのですよ。冬の制服は紺色で、レオ様に素晴らしく似合ってらっしゃったわ。あ!ベンヤミン様もとてもお似合いだったのですよ。最初は「少し緊張するなー」って仰っていましたが、ベンヤミン様もビルさんもよく似合っていらっしゃったわ。



メルトルッカに着いて一週間が過ぎた頃です。

クラウディオ殿下の婚礼が執り行われました。


クラウド様には既に第二妃と第三妃がいらっしゃるのですって!私驚いてしまって。メルトルッカのことは学んでおりましたのに、どこか現実とは違うところで捉えていたみたいです。

直接お知り合いになった方のことだと思うと、とても複雑な気持ちになりました。正妃とのご婚礼前に妃をお迎え済だなんてショックですよね。


「ええ 私ならとても耐えられると思いません はっきり言ってしまうと嫌だわ」


私もです。これを知った時はステファンマルクに生まれてよかったと、心の底から思いました。レオ様に別の妃がいるなんて考えられませんもの。


「ふふ もしもここがメルトルッカだったとしても レオ様がスイーリ様以外をお迎えになることはあり得ないと思いますけれど」



~きっとそんなことはないのでしょう。レオ様は常に国に従ってこられたお方。

国から命じられたことならば、不満を口にしながらも必ず従うのがレオ様ですもの。


ううん、そんな"もしも"の話をする必要はないわ。ここはステファンマルクで、私達はお互いが唯一の婚約者なのですから。~



第二妃と第三妃も参列する中、私達も結婚式に参列させていただきました。

メルトルッカの花嫁衣装は伝統的でとても素晴らしいのです。事前にレオ様に挿絵で見せていただいておりましたが、王族の花嫁ともなりますと、それは豪華で。


「スイーリ様も大変素晴らしいドレスをお召しになったと伺いましたわ」


はい、王妃殿下がご用意下さったドレスを着させていただきました。あまりにも素晴らしくて夜会では着られそうにありませんので、ご許可をいただけたら手直ししたいと思っています。だって一度きりにするにはあまりに惜しいのですもの。いつか見ていただきたいわ。


「すぐ伺いますわ 手直し前に一度見せていただきたいですもの」


嬉しい!邸に持ち帰らせていただきましたから、いつでも見にいらして下さいね。実は制服も持ち帰ったんです。それも見ていただきたいわ。私の制服だけですけれど。



「メルトルッカの学園 ・・・学院でしたわね いかがでしたか?」


ベンヤミン様からもお聞きになっていたと思いますが、ベンヤミン様は私達三人とは別の校舎でした。メルトルッカの学院はかなり細かく分野ごとに分かれていまして、理学分野を学ぶベンヤミン様はそちらへ通われたんです。


そのことを知った時はかなりがっかりされておられましたけれど、授業が始まるとすっかり夢中になっておられたところは、流石ベンヤミン様と思ったのですよ。毎晩その日の出来事を一番楽しそうにお話しになっていたのはベンヤミン様でしたから。


「私には最後まで泣き言を書き連ねて送ってこられておりましたが そうでしたか安心致しました」


ふふ、ずっと本音を隠して努力されていたのかもしれませんね。ソフィア様にだけは本音が言えるってことですもの、そこは大目に見て差し上げてくださいね。



「ベンヤミン様からは放課後に寄り道をしている話はほとんど聞いたことがございませんでしたの スイーリ様が教えてくださらなかったら真に受けてしまうところでしたわ」


頻繁にではありませんでしたが、時々はお約束して四人で寄り道もしたのですよ。

レオ様はよく公園に誘ってくださいました。王宮の庭は、大変素晴らしく整えられていて一年中一切の無駄がなく美しいのですが、息が詰まると仰って。


「レオ様のお言葉らしいですね どのような庭なのか想像できる気がします」


アレクシー兄様達、レオ様の護衛騎士以外にもメルトルッカの騎士が常に同行していましたから、レオ様は外で食事をされることをできるだけ避けておられました。お毒見の文化が根付いていますから、気軽にカフェに立ち寄ってお茶を楽しむことも難しくて。


「お気の毒に スイーリ様は放課後のデートを楽しみにしておられましたのに」


ああ、でも一度もなかったわけではないんですよ。それに公園をお散歩するのもとても楽しかったですから。



「ご旅行の話も聞かせていただきたいわ 長期の休暇には毎回行かれたのでしょう?」


ええ、是非聞いて頂きたいわ。

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