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大好きなレオ様
今日はソフィア様やアンナ様、ヘルミ様とベーン邸にお邪魔して参りました。
イクセル様が専科へ進まれてからは、めっきりお会いする機会も減っておりましたので、近況を聞かせてほしいとご連絡をいただきまして。
私からはレオ様から届いたお手紙の話もしました。ベーン領を周られた時の話にはとても喜んでおられました。やはりベーン領の方にとって、晩夏から初秋にかけての季節には特別な思いがあるみたいです。
イクセル様の話によりますと、何代も前の領主が半生をかけて創り上げたものなのだとか。
領主がさまざまな産業に力を入れることは珍しくありませんけれど、領地の風景と言いますか、景色を一から創ると言うのは珍しいですよね?私は初めて聞きました。
どれほど美しいのでしょう。一年前にお邪魔したベーン邸の美しさを思い出しながら、それを想像しています。
このことを聞きましても、ベーン領が芸術への意識がいかに高いのかと言うことが改めて窺えますね。
皆さんもいつかベーン領へ行きたいと仰っています。それを聞いたイクセル様の喜びようは、きっと今レオ様の頭の中に浮かんだそのままだと思います。
「必ず来てよ 招待するから!」と三度は誘ってくださったでしょうか。
今年のクリスマスコンサートは十八日に決まったそうです。視察団のお戻りは十四日の予定で変更ございませんか?イクセル様はレオ様やベンヤミン様、そしてデニス様にも是非聴きに来てほしいと意気込んでおられました。間に合いますように。
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今日は王宮で手紙を受け取ることができました。届きたてのお手紙です。その場で封を切って読みたいところを、泣く泣く我慢して邸まで大切に持ち帰りました。
ノールチェス領の織物のことを聞いてみました。王都も本邸も、ダールイベックでは全てノールチェス産のテーブルクロスを使っているそうです。それを知ってからもう一度レオ様のお手紙を読むと、ノールチェス領が少し身近に感じられる気がしました。
王宮には麻畑もあるのですね!王宮で育った麻は一体どこで使われているのでしょう?極極極上なのかしら。王族がお使いになるものにだけ使われている?あら?そうなると織機も必要になりますね。王宮内には工房もあるのですか?それともどちらかに送られて加工されるのかしら。
麻にはどのような花が咲くのでしょう。何色かしら?レオ様、いつか麻畑に連れて行ってくださいますか?楽しみなので調べずに待とうかなと思います。
レオ様がご覧になった白樺の木立を何度も想像しています。黄金色に染まった木々の間から光が差し込む様子、一枚、また一枚と葉がひらひら飛んでいき、それが厚い絨毯のように足元を覆うようになれば、次は白い季節がやってくる。
この季節を再び迎えることを、レオ様の目を通して美しいと感じられたことに感謝いたします。
お手紙には書かないつもりでしたが、あの日が近づくにつれ思い出さずにはいられませんでした。初雪への辛い思いが、レオ様のお手紙のおかげで軽くなりました。
どうかお身体を大切に。無事のお戻りを毎日お祈りしております。
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レオ様、今日は王宮で陛下をお見かけしました。遠目に拝見いたしましたため、ご挨拶することは叶いませんでしたが、陛下のお側にいらした従者を見てフェルダール様のことを思い出しております。
フェルダール様のことをと言うよりも、当時のレオ様の表情の方が先に浮かびました。
眉を下げて困っていらっしゃる姿がとても印象強かったのです。なかなか見ることの出来ない貴重な表情だったものですから。レアを引き当てたような高揚が―
ごめんなさい、つい・・・。推しへの目線のクセが抜けません。こうして数ヵ月お会いせずに肖像画に話しかける日々が続いておりますと、推しのレオ様に戻ってしまうのでしょうか。
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今日も登城して学んで参りました。その中には歴史の授業も。
レオ様に励ましていただきましたので、今までの何倍もやる気が出ました。
先生からお聞きしたことを、より丁寧にノートに残すことだけを心がけるようにしてみました。
レオ様に関連したことは、どのようなことであれ全て憶えておきたいのですが、数百年も前の王族のお名前と功績を記憶するのはとても大変ですものね。
これからはノートは私の分身と思って、大切に記録していきたいと思います。
ジェネット様にも頻繁にお会いしています。登城した日にはほぼお昼をご一緒しているのです。官僚の中に女性はとても少ないそうですし、ジェネット様も私と過ごす時間は気を張らずに過ごせて心地よいと、仰ってくださっているのですよ。
ジェネット様にもクリスマスコンサートの話をしてみました。
ステファンマルク自慢の学園オーケストラを是非とも聴いて頂きたくて。必ず行くと仰ってました。私もとても楽しみにしているんです。演奏は勿論楽しみですが、それよりも久しぶりにレオ様とデートですから。待ち遠しくてたまりません。
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運河の開通日が決まったと聞きました。レオ様の元へも届いていることと思います。
ご帰還直後の日付に驚きましたが、王太子抜きでの開通式はあり得ないと、陛下が強く仰ったそうです。陛下の英断に大変感謝いたしました。だってレオ様が繋いで下さったのですもの。
お父様とお母様は一番船に乗って本邸に行くと、張り切っております。本邸まで一日半で付くのだそうです。今までの半分以下の時間ですね。毎日のようにその話をしては、レオ様に感謝しているのですよ。
開通式にご一緒させていただけますか?少しでもレオ様とお話しできる時間が持てると嬉しいです。
スイーリ




