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レオ様
今日も登城して参りました。九月から週に三回ほど学ぶ時間を設けていただいております。
学園で学んだものとはまた別の角度から教えていただく歴史や、文化などはとても興味深くて、機会を与えてくださったレオ様や陛下に感謝しております。難しいものも多いのですけれど。
ですがレオ様も学ばれたのだと思うと、やっぱり嬉しくて頑張れてしまいます。ですのでご安心を。
王妃殿下にもお時間をいただく機会が以前より格段に増えました。
殿下からもたくさんのことを学ばせていただいております。
今日はハープの演奏もご一緒させていただきました。殿下にお褒めの言葉もいただいたのですよ。
レオ様との合奏が実現するように、こちらも練習を続けたいと思います。演奏は好きなのです。
今日のお昼はジェネット様とご一緒いたしました。今日のようにタイミングが合った時は、ご一緒しているのですよ。
研修は順調と伺っております。
オルソン卿は、ジェネット様の研修中は第二騎士団の訓練に参加されているそうです。
グリコスにいらした頃よりも、顔を合わせる時間は減ったそうですが、「距離は縮まった気がするの
あの性格だから他の方から見るとわからないほどの距離だとは思うのだけれど」ですって。
オルソン卿にはお会いしていませんが、きっと私にはまだわからないと思います。無口な方ですし、今でもジェネット様の斜め後ろを歩かれるのですよ。ジェネット様はそれが不満みたいです。
次のお休みに、鳶尾宮でお会いする約束もしました。楽しみです。そのお話しも書きますね。
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ジェネット様にお会いしてきました。
ジェネット様が滞在されているお部屋にお招きいただきまして、陽が翳る時間までいろいろなお話しをしました。(ほぼ恋バナでした。ジェネット様はすぐ赤くなって頬を膨らませるんです。年上の方ですのに、可愛いと思ってしまいました。どんな話をしたのかは"女同士の秘密"なのです。お許しくださいね。)
ブルーノさんのスイーツもいただきました。今日はカールさん直伝のアップルパイだったんです。ジェネット様も大変お喜びでした。カールさんのアップルパイは王都一ですもの。(またしても一人でいただいてしまってごめんなさい。) けれど、パイをいただきながらレオ様のことを思い出していました。
来年の秋はメルトルッカにいるのですね。メルトルッカにもりんごはあるでしょうか?私はステファンマルクのりんごが世界一美味しいと思っているのですが、それが正しいことを証明するよい機会です。メルトルッカにもりんごがありますように。
コルテラ卿が、時折研修の様子を手紙で報告してくださるそうです。
半年が過ぎて、彫刻の腕もうんと上がったとの報告に大変お喜びでした。他国へ研修に行きたいと思うほど意欲的な方々なのですもの。これからも貪欲に技術を吸収されることでしょう。私もいつかグリコスで作られた家具を目にする機会があるでしょうか。楽しみです。家具を見る目には少し自信があるのですよ。
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レオ様
ベーン領のお手紙読みました。ベーン邸のノリウツギの美しさは私も強く印象に残っています。春の華やかなピンク色とは趣の違う、暖かさと優しさを感じる色合いには、どことなくイクセル様を感じられる気がしておりました。ベーン領のカラーだったのですね。
自然と共にお出迎えをするなんて、とても素敵なことだなと思いました。やはりベーンは芸術と切っても切れない土地なのでしょうね。それが自然と身についていらっしゃるイクセル様も素晴らしい方なのだと、再認識いたしました。ふふ、時々は褒めて差し上げませんと。
野営が二晩もあったのですね。それだけ人里離れた地がベーン領にあるということにも驚いてしまいました。夜はどのようにお過ごしでしたか?天幕はどのくらいの大きさなのでしょう。お食事はどなたが用意したのですか?お聞きしたいことだらけです。
こちらにお戻りになりましたら、たくさん聞かせてくださいね。
兄様に言ったら怒られてしまうでしょうが、野営には少し憧れがあります。星を見ながら焚火を囲んで話をしたり、大きなお鍋でお料理をしたり、その前に焚火のための木を集める仕事もありますね。そして川で水も汲む必要もありますね。私意外と力持ちなのですよ。あれ?意外ではありませんでしょうか。
レオ様は怒らず聞いて下さると思いまして、書いてみました。
今夜は野営の夢が見れたらいいなと思いながら眠りにつこうと思います。
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レオ様、昨日は長くなってしまいましたので、今日もお手紙のお返事の続きを書きますね。
私もトナカイのお肉は時々いただきます。煮込んだものも焼いたものも食べますが、焦げ目が香ばしくついたステーキを、リンゴンベリーと一緒にいただくのが特に好きです。
レオ様が召し上がった二皿目のお料理がとても気になります。どんなお料理なのかしら?きっと私が今までいただいてきたようなお料理は、レオ様も召し上がると思うのです。ですから、思いもよらない料理なのでしょう、というところまでは想像できたのですが。その後はどう考えても、さっぱり思いつきません。お戻りになりましたら、こっそり教えていただけますか?
これだけは何回でも断言できます。レオ様からのお手紙は一文字だってつまらない文字はありません。見たことのない北方の地の景色の描写には、いつも目を閉じて想像を膨らませておりましたし、食べ物の話は楽しくて、つい召し上がっているレオ様の表情を想像してはにやけてしまいます。
今はノールチェス領の次のフェルダール領にいらっしゃる頃ですね。
ノールチェスの秋はいかがでしたか?王都も秋が深まって参りました。今日見つけた紅葉の葉がとても綺麗でしたので、手紙に挟んでお送りします。
スイーリ




