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レオ様
楽しみにしていたお手紙が届きました。日付を見ると、遠く離れていることを実感します。
可愛いお花もありがとうございました。どれもしっかりと形が残っています。これも額に入れて飾ることにしました。
ベーレングへ行かれたのですね。初めての国外旅行!ですね!
王都に住んでおりますと、外国という存在があまり現実に考えられません。城壁を挟んだ向こう側が別の国だなんて、何度考えても不思議な気がします。
このことをソフィア様とお話ししたことがありました。
ソフィア様にとっては、それを当たり前に過ごしてこられましたから、不思議に思う気持ちが不思議みたいです。レオ様はどう思いますか?
ソフィア様もベーレングには行かれたことがあるのですって。
レオ様の仰るように、平和な時代に生まれることができてよかった。普段はなかなか考えることもありませんが、お手紙を読んで私も気が引き締まりました。
送っていただいた貝は割れずに届いております。
外と中でまるで違うのですね。内側の美しさには驚きました。ダールイベックの三種類の貝とは違って巻貝ですから、加工するのが難しいのでしょうか。これがビーズになれば素晴らしいものになりそうです。この貝はたくさん獲れるのかしら?ああ楽しみです。
お届け物も無事お手元に届いて安心致しました。
お使い頂けているのですね、嬉しいです。
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今日は王妃殿下にご一緒させていただきまして、いくつかの教会を回って参りました。二十名ほどの方がいらしてまして、私はお母様と参加したのです。
ソフィア様もお母様と参加されていましたので、帰りにボレーリン邸にお邪魔してお茶を頂いてきました。その時クルーム領の話を聞かせていただいたのです。
レオ様から頂いたお手紙の話もしました。
ソフィア様も冬のクルーム領はご存知ないですから、夏の話だけでしたが、想像よりも快適で楽しく過ごされていたとか。ですが、レオ様の持たれた感想には、感謝の気持ちでいっぱいですと仰っていました。
ソフィア様は、夏のお花畑がとても好きだったのですって。まさしく絨毯のようだと。それを伺って初めて気がつきました。ボレーリン邸のサロンに飾られている絵はクルーム領の夏の景色だったのですね。レオ様、その絵を憶えていらっしゃいますか?優しい花の絨毯がどこまでも続いている素敵な絵です。
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今日もレオ様からのお手紙が届きました。こんなに早く次のお手紙を頂けると思ってもおらず、嬉しくて急いで封を切りました。
レオ様がいらっしゃる直轄地で打たれる剣の話は聞いたことがあります。アレクシー兄様が騎士の叙任を受けてから初めて邸に戻った日に、持ち帰ったものを見せてもらいました。
ヴィルホ兄様とお父様も、今は叙任時に賜った剣ではないそうですが、同じ鍛冶場で打たれた剣を愛用しているそうです。
その時兄様達が話していたことはよく覚えています。
レオ様が叙任式の時にお持ちになっていた宝剣を始めとする、豪奢に装飾を施した儀礼用の剣は、こちらでは作られていないのだとか。
王家の所有する鍛冶場ですのにと意外な気がしましたので、記憶に残っておりました。
それとも装飾の部分だけ別の地で作られているのかしら。飾る箇所はヒルトや鞘ですものね。
ドレスのご相談にも乗って下さりありがとうございました。
読み進めるうちに顔が熱くなってしまいました。
今決めました。紺色のドレスを作りますね。完成しましたら見ていただけますか?最後に
レオ様も紺色の式服を着て下さるといいな、と大きな独り言を書いてみます。
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レオ様がマーケットの商品に賛同して下さって、自信が湧きました。
まず初めに城下に住む方々は、ダールイベックと言うと何をイメージするのだろうと考えてみました。
貴族にとってはどうでしょう?
ぱっと思いつくのは馬の産地、でしょうか。これはステファンマルクで一番ですから。
でもマーケットと馬は関係がありませんし・・・。
他に大きな特徴になるものが浮かびません。鉱山はありませんし、やはり食べ物かしら。けれど農業はそれなりに盛んですが、ダールイベックならではの作物と言えるのは蕎麦だけだと思うのです。
蟹を加工して運ぶことができたらどうでしょう?茹でた蟹を瓶詰にすれば、王都の皆さんにも蟹を味わっていただけるのではないでしょうか。
けれど、それには時間がかかりますね。実現できても少し先になるでしょうから、その前にそば粉と一緒に楽しんでいただけるものを考えたいと思います。私はクレープにしていただくのが一番好きなのですが、クレープに添える食材は王都で簡単に手に入るものばかりですし、困りました。
これはお父様よりも料理長に相談した方がよい考えが浮かびそうですね。早速明日聞いてみます。
いいアイディアが浮かびましたら、お手紙に書きますね。
スイーリ




