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『ぎゃーーーーーーーーー!!!()()・・・()・・・qa@er☆×●dsk・・・・・・・・』



穏やかな朝の空気を切り裂くような絶叫に、王宮内全ての人間が反応する。


厨房のものはフライパンや麺棒を片手に、雪かきをしていたものはスコップを担ぎ、洗濯に取り掛かろうとしていたもの、温室にいた庭師、門番を除く全ての騎士...呆けて立ち尽くすものなど一人もいない。全てのものが過酷な戦いの日々を常として、骨の髄まで染み込ませていることを容易に理解させる見事な動きを見せ始めた。



そんな強者揃いの王宮で、最も早く駆けつけたのは扉のすぐ向こうで待機していた侍女のオリヴィア―


ではなく、半歩の差で扉を蹴破り転がり込んできた騎士のヴィルホだった。




「殿下ーーーーーーーーーー!!!」



瞬時に部屋を隅々まで見渡し、賊の存在がないことを悟ると迷わずバスタブへ突進する。



果たしてそこには白目を剥いたままブクブクと沈んでいる美しい少年が―











----------



・・・ん


今度はしっかりと目が覚めた。朝だ。


が、目の前にあるのは見慣れた天井ではなく美しい男女の顔だった。



『ひっ!』


思わず悲鳴を上げそうになったけれど、喉がイガイガしていたおかげで軽く空気が漏れた音だけで済んでくれた。


よかった・・・

いきなり顔を見て悲鳴上げられたらショックだものね。何故ここにいるのかわからないけれど、叫びそうになったことはバレていないかな。



「気がついたか」

「どこか痛むところはない?」

豪華な衣装に身を包んだ二人から代わる代わる問われる。


『はい どこも問題ありません』

掠れた情けない声ではあったけれど、しっかりと答える。



そこへ二人の後ろから先程のメイドさんが飲み物を持って現れた。


「薬湯をお持ちいたしました」


トレーをサイドテーブルに置くと、手早く枕を重ねて背もたれを作ってくれる。



『あ ありがとうございます』


何故夢の中にいたメイドさんがまだここにいるのか、わからないことが多すぎて何から考えればいいのかわからない。でもまずはこの喉の不調を解決したい。

薬だというそのカップを受け取った。いい香り、ハーブティーみたい。

一口飲むと優しい甘さが喉に染み渡る、美味しい・・・毎朝飲みたいくらいだよ。




喉のかさつきも治まった頃合で男性がコホンと咳払いをした。

そちらへ視線を移す。



あれ?この人・・・


嘘?!





「さて 自分の名前が言えるかい?」

麗しい金髪碧眼の男性に問われた。



自分の名前って・・・もちろん言えますとも!私の名前は











『はい レオ=ステファンマルクです 父上』



嗚呼ーーー!

部屋中から安堵の溜息が聞こえる。


だけど・・・





え?


えええ?


自分の発した言葉の意味が理解できず両手で口を塞ぎ考え込んでしまった。

今なんて言った?誰の名前言った?



「よかった よかったわレオ あなたに何かあったかと思うと私・・・」

涙目の母上に抱きしめられる。




はは?うえ・・・?



まるで二つの人格が交差しているみたいだ。


そのとき女性の背後にある鏡の中の自分と目が合った。

全ての情報が一気に流し込まれる感覚、頭の中で嵐のように映像が飛び交う。

これは、この場所は、この人たちは・・・


ああ・・・そうだ、そうだった。



私はレオ=ステファンマルク。

ステファンマルク国の王子、父である国王オスカリ=ステファンマルクと母イレネ=ステファンマルクの一人息子だ。


― そして碧たちの大好きな乙女ゲームのメイン攻略対象キャラでもある。―



え?違う・・・私は高校一年生の遠藤 芽夏。今日も学校だから早く準備しないと遅刻しちゃう。一時間目何だっけ?

いや違う。私はレオ、この国の王子だ。



楓穂に借りてた小説鞄に入れたっけ?確か今日美術あるから絵の具も・・・

違う、今日の午前はパルード語からだったか。授業の前に解らない箇所を母上にお聞きしたいと思っていたのだ。



どっちだ?私はどちらなのだ?

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