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「こんばんは殿下 ダールイベック嬢」

「こんばんは 良い夜でございます」

今夜も壇の側でベンヤミンが待っていた。ベンヤミンだけではなく、デニスやフレッドもそれぞれがパートナーを伴っている。そしてイクセル、ヘルミにアレクシーまで。友人達が揃っていた。


『皆で集まっていたのか』

「ああ ちょっとした打ち合わせも兼ねてさ」

『打ち合わせ?』

たいしたことじゃないからさ、と言葉を濁される。



「スイーリ様 昨夜とはガラリと雰囲気が変わりましたね 今夜のお二人も大変お美しいですわ」

「レオ様の式服はスイーリ様の!ですね!こうしてお召しになっておられると スイーリ様の腕前がどれほど素晴らしいかよくわかりますわね」

「ありがとうございます 皆様」

スイーリが注目されて絶賛されるのはとても気分がいい。



程なく陛下と王妃殿下の入場時間になった。

お二人が来られてようやく宴は本格的に始まる。

「硬い挨拶はなしだ 今宵も楽しむように」



クスッ

小さく笑いをこぼしたデニスを見る。目が合うと一瞬「はっ」としたような顔をしたものの、すぐ笑みに変わった。

「夜会に参加するようになってまだ一年だけれどさ 陛下のお言葉を聞く機会が増えて つくづく似ていると感じるよ」


聞き返さなくてもわかる。陛下と私のことなんだろう?

以前なら『あんなに酷くはない』と反論していたところだが、最近は渋々認めている。


渋々な。


『短いことはいいことだ』

「昨日ばかりはその言葉を噛み締めたな 身じろぎもせず立っているレオが気の毒になったぜ」

『ああ ずっと他のことを考えていた』

そうでもしていないと、立ったまま寝てしまいそうだったからな。



「殿下 ご歓談のところ失礼致します」

ダールイベック公爵夫人、ノシュール公爵夫人をはじめとした高位貴族夫人が十人、それ以上か?大人数で挨拶に来た。


『ダールイベック夫人 ノシュール夫人昨夜はありがとう 二人のおかげで素晴らしい披露目になったよ』

「光栄でございます殿下」「ありがたいお言葉に感謝致します」


「早速でございますが殿下」

何だろう?瞳をキラッと輝かせたノシュール夫人に思わずたじろぐ。ベンヤミンやデニスに視線を移したものの、二人もやや困惑気味だ。


「王妃殿下から伺いました 昨夜のお二人のドレスを手掛けたのは王太子殿下なのでございましょう?」

ずいと進み出たのはアルヴェーン夫人だ。


「どちらで手に入るのでしょう?」

「いつ頃王都に出回る予定でございますか?」

「お色は他にもご計画なさっておられるのでしょうか?」

「私は装飾も大変気になっておりまして」


・・・母上、宣伝をありがとうございます。

そうだった、反響を期待していたことをすっかり忘れていた。



『どうだろうスイーリ ドレスのことは私にはよくわからない スイーリが夫人達の要望を聞いてくれないか?』

「かしこまりました 私でよければ喜んでお手伝いさせて頂きます」


『生地は直に出回る予定だ 要望はダールイベック嬢に伝えてもらえるだろうか 装飾のことも彼女は詳しいから相談に乗ってくれるだろう』

「よろしくお願い致しますスイーリ様」

「あちらのお席でお飲み物を頂きながらいかがでしょうか」


「レオ様 少し外させて頂きますね」

『ああ 頼んだよ ダンスが始まったら迎えに行く』

夫人達と一緒ならば心配はない。離れていくスイーリを見送って、友人らとその場に残ることにした。


「スイーリも立派に務めているな」

『ああ 昨夜も落ち着いて堂々としていただろう?』

自分のことのように自慢しているな。いいよな、事実だし。


「パレードも拝見致しました 白いドレスがとても素敵で―あのデザインも流行しそうですね」

「僕も見たよ レオ気が付いてくれたよね ポリーナがずっと手を振っていたんだよ」

イクセルの妹はまだ八歳だからな。夜会の期間は一人で留守番か。


『しばらくポリーナにも会えていなかったな 近いうちに会いに行くか』

「ほんと?それじゃお茶会の計画を立てなくちゃ!ポリーナが喜ぶだろうなー」

イクセルの妹溺愛ぶりは相変わらずだな。




ダンスの時間になったようだ。

陛下と王妃殿下がゆっくりと中央へ進んでいかれる。今のうちにスイーリを迎えに行こう。

「ふふ お迎えがいらっしゃいましたわ」

「スイーリ様 ありがとうございました」

「お時間をありがとうございましたスイーリ様」

「殿下 ありがとうございました」


『ありがとうスイーリ 行こうか』

「はい 楽しく過ごさせていただきました」

スイーリの手を取り、友人達の元へ戻る。夫人達も後から続いてきた。


「おかえりスイーリ 母上達に無茶を言われなかったか?」

笑いながらデニスが声をかける。

「ええ お話しに参加させて頂けて 良い経験になりましたわ」


「レオとも話していたところだが スイーリも随分努力したんだろうな 見違えたと言っては失礼だろうか」

「いいえデニス様 そう仰って頂けて光栄でございます」

「スイーリのことも幼い頃から見てきたからかな 妹のように思えてさ」

二人のやり取りを聞いていると心が温かくなった。わかるよデニス、私もこの友人達には特別な思いがある。一人一人に友人と言う言葉以上の思いを感じているよ。



今夜は穏やかに終わりそうだ。

お二人の踊る様子を見ながらそう考えていた。


そろそろ終わりか。そっとスイーリの腰に手を添えて顔を見た。スイーリも私を見上げ、小さく微笑む。

『顔色がよくないな やはり今夜は早めに切り上げよう』

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