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賓客の皆様から先に王宮へ移動されます。この後は昼餐会が予定されているのです。


祝祭期間、高位貴族は全ての行事に参加することが出来ます。その為本来でしたらアレクシー兄様を除く私達五名は昼餐会に出席しなければならないのですが、お母様は今夜鳶尾宮で開かれる夜会の準備があるため、欠席されます。

鳶尾宮のお披露目も兼ねたとても重要な夜会は、お母様とノシュール公爵夫人が取り仕切っておられるのです。お二人が準備された夜会ならば心配はありません。素晴らしいものになるに違いないわ。


昼餐会は私も欠席させて頂くことにしました。レオ様も参加しなくていいと仰って下さって、ご用意頂いたお部屋でゆっくり準備をさせて頂こうと思っています。


聖堂でお父様達と別れて、私とお母様は一度邸に戻りました。

お母様の侍女と私の侍女も連れて王宮へ向かいます。私の手にはレオ様から頂いた指輪の入った箱が。これだけは他の方に任せるわけにはいかないもの、自分で持っていくわ。



用意されているお部屋に着きました。

とってもいい香りがするわ。レオ様が用意して下さったのかしら、お部屋の中にはラベンダーがたくさん飾られていました。とても落ち着くいい香り。早速カリーナが喜んでいます。

「お嬢様 大変素敵なお部屋でございますね それにラベンダーがこんなにも沢山ですよ なんてよい香りなのでしょう」

カリーナの言葉に他の侍女もうんうんと頷きながら荷物を広げています。


すると、どなたかいらしたみたい。ノックの音が聞こえました。

「お嬢様 昼食をご用意頂きました 今お運びしてよろしいでしょうか?」

鳶尾宮の侍女の方々が、ワゴンを運んできたのが扉の向こうに見えます。


「ええ ありがとう 運んで頂戴」

テーブルの上に次々と並べられる量に私だけではなく、侍女達も目を丸くしています。五人分はあるかしら?


「殿下より皆様でお召し上がりになれるようにと言付かっておりまして 少し多めにお持ち致しました」

今日連れて来たのは三人の侍女です。皆で頂いても充分すぎるわ。


「ありがとう お心遣いに感謝しますとお伝え頂けるかしら」

とてもレオ様らしいご配慮です。侍女達にとって初めての場所ですから、休憩を取る場所もわからないですものね。


「かしこまりました お伝えさせて頂きます お食事がお済の頃にお湯の用意をさせて頂きに参ります」

そう言って彼女たちは戻って行きました。

私が少しでも落ち着けるようにと心を配って下さっていることに、感謝してもしきれません。


「せっかくだから皆で頂きましょう お茶の用意をお願いね」

「お嬢様 私共も頂いてよろしいのですか?」

そうよね、邸ではあなた達と食事を頂くことはないものね。


「もちろんよ 鳶尾宮のお料理はとても美味しいの あなた達も気に入ると思うわ」

最初は恐縮しているようだった侍女達も、あっという間にお料理に夢中になったみたい。思いがけず賑やかで楽しい時間を過ごしました。


「お嬢様 お料理も素晴らしいですし ご覧ください この焼き菓子とっても可愛いですね」

「桃もたくさんあります お嬢様お取り致しますね」

レオ様も今頃はお食事をなさっている頃かしら。私だけこんなに寛いだ中で美味しいものを頂いて、申し訳ないくらいだわ。



侍女達がテーブルの上を片付け始めると、タイミングを見計らったように宮の侍女の方達が来ました。

「お湯の準備をさせて頂いてよろしいでしょうか?」

カリーナが応対しています。浴室へ下働きの子達が入って行くのが見えました。


宮の侍女がカリーナに籠を渡しています。

「お嬢様 バスオイルをご用意頂きました どちらをお使いになりますか?いつものものがよろしければ邸から持参したものをご用意致します」


籠の中には何本かのオイルが入っています。どうしましょう、せっかくですから使わせて頂こうかしら。

「こちらは特にお勧めのものでございます」

籠を運んできた侍女が一本のオイルを勧めてくれました。

「蓋を開けてみてもいいかしら?」

「はい もちろんでございます お手に取ってお選び下さいませ」


勧めてもらったオイルの瓶を開けてみました。あっ!レオ様の香り!

似ている香りはあるのですが、どれも少し違うの。これはレオ様だけの、大好きな香りです。

「ふふお嬢様 そちらがお気に入りのようでございますね」


「いいのかしら 私が使っても」

「これは殿下からお預かりしたものでございます 自由にお選び頂くよう申しつかっております」

そう言って微笑んだ彼女は、知っていてこれを勧めてくれたのね。


「ありがとう これを使わせて頂くわ それとあなたの名前を聞いてもいいかしら」

「はい 鳶尾宮専属侍女のヘルガと申します」

「ありがとうヘルガ よろしくね」

「光栄でございます ダールイベック様」


お湯の準備が出来たようです。カリーナがそのオイルを受け取り浴室へ向かいました。

「それでは私共は失礼致します 近くに待機しておりますのでいつでもお声がけ下さいませ」

「とても助かったわ」



「お嬢様お嬢様 お勧め頂いたオイルとっても良い香りです」

浴室から興奮したようなカリーナの声が聞こえてきました。



よい香りに包まれて、身体も心も充分にほぐれました。かなり寛いでしまっているけれど、今日はこれからが本番なのだわ。


侍女達が念入りに髪や肌を整えていきます。皆顔がとても真剣、先程までの楽しげな様子は全く見られません。頼もしいわ、レオ様の隣に相応しい私になるよう頑張ってくれているのね。


「お嬢様いかがでしょう?王都一美しい肌に仕上がりましたよ 間違いございません」

「ふふ ありがとうカリーナ カリーナがそう言うと本当のように聞こえてくるわ」

「あらお嬢様 私は常に真実しか申し上げておりませんよ 本当のようではなく本当でございます」

いつもカリーナはこうして私を勇気づけてくれるのです。


「次はこちらの鏡の前にお座りいただけますか?髪を整えてお化粧をして参りましょう」

「ええ お願いね」

立ち上がった時、またどなたかがいらっしゃいました。


応対した侍女が緊張した様子で戻ってきました。

「お嬢様 王妃殿下の侍女の方がお手紙を持ってこられました お入り頂きましょうか」

「ええ!すぐにお通しして頂戴」


あっオリヴィアさんだわ!何度かお会いしたことのある方です。以前はレオ様の侍女をされていたこともあると聞いたわ。そしてロニーさんのお姉様です。いつもどこかでお会いしたような気がしていたの。姉弟と知った時はひどく納得したわ。


「お久しぶりでございます ダールイベック様 お忙しい時間に失礼致します」

「オリヴィアさん お越し頂きありがとうございます」

王妃様からのお手紙、一体どんな内容なのかしら。私も知らず知らずのうちに緊張していたようです。


ニコリと微笑みながら手紙を渡してくれたオリヴィアさんが、私を励ますように付け加えてくれました。

「ご安心ください 悪い内容のものではございません」

「わかりました 今お返事をご用意した方がよいのかしら」


便箋は用意してきたかしら、用意周到なカリーナなら用意しているかもしれないわね。

「いいえ お読み頂くだけで結構でございますよ ご準備の邪魔になりますので私はこれで失礼させて頂きます お時間を頂きありがとうございました」

「ありがとうオリヴィアさん カリーナお送りして差し上げてね」


カリーナがオリヴィアさんをお送りしている間に、手紙を読みます。



えっ・・・


「いかがされましたかお嬢様?お手紙にはなんと書かれていたのですか?」

「あなた達も読んで頂戴」

手紙を渡すと侍女達は頭を揃えて手紙を覗き込みました。そして悲鳴が上がったのです。

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