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レオ様と向かいあい馬車に乗り込みます。

レオ様は迷うことなく紺色の馬車を指定なさいました。ステファンマルクでは紺色の馬車を所有することは許されていません。王家のみが使用することができる色なのです。


まだ信じられません。レオ様が目の前で優しく微笑んでいらっしゃいます。私のためだけの笑顔、今はそう自惚れても許されるでしょうか。私はちゃんと笑顔をお返しできているかしら?嬉しくて嬉しくてどうにかなってしまいそうです。


数時間前この門をくぐったとき、まさかこのような未来が待っているなんて、その時の私には到底考えることができませんでした。


このままずっと乗っていたいーなのにあっという間に馬車は邸へと着いてしまいました。

門が開きそのまま中へ進んで行きます。馬車回しには既にテオドルが控えていました。

馬車の扉が開くとレオ様が先に降りられ、手を差し伸べてくださいました。温かい、でもゴツゴツとした男の人らしい手です。ああーもう一生手を洗いたくないわ!


「王子殿下、ようこそおいでくださいました。お嬢様、おかえりなさいませ」


『遅くなってすまなかった。ご挨拶申し上げたいのだが、ダールイベック夫人に目通りできるだろうか』


「ただいまご案内申し上げます」


レオ様は私に向かいニコッと笑顔を見せられ、左腕を差し出されました。こ、これは腕を組んでも良いということでしょうか!慌てて花束を左手に持ち替え、そっと右手を添えます。



玄関を入ると、お母様、そしてアレクシー兄様も待っていました。少しーいえ相当驚いているわ。兄様なんて目を剥いていますもの。

腕を放してレオ様の半歩後ろに下がりました。


「ようこそおいでくださいました、王子殿下。娘を送り届けてくださいましたことも真にありがとうございます」


『この度は誤解があったようで申し訳ありませんでした』


そう言うとレオ様は深々と頭を下げられました。


「殿下!おやめください 頭をお上げください」


お母様は驚き慌てています。無理もありません。王族に頭を下げられることなど一生に一度もないことですもの。


ようやく頭を上げたレオ様は、お母様と兄様の前ではっきりと宣言されたのです。


『私は本日ダールイベック嬢に交際を申し込みました。彼女からは承諾をいただけましたが、夫人からも許可をいただけるでしょうか?』


「まぁ!まぁスイーリー」


お母様は涙ぐんでおられます。


「光栄にございます。ありがとうございます、よろしくお願いします殿下」


「レオー」


ようやく我に返ったらしいアレクシー兄様がレオ様に近づかれました。


『アレクシー 許してもらえるかな』


「俺の大事な妹だ、大切にしてくれよ」


兄様の言葉も嬉しかった。大事な妹と思ってくれているのね。


『勿論だ』


「よろしく頼む、レオ」


言いながら兄様はがっしりとレオ様と抱擁を交わしました。待って!私もまだなのにどうして兄様が先に抱き合っているの?



私をゆっくり休ませてほしいとおっしゃり、レオ様はそのままお戻りになりました。


『手紙を書くよ』


と言い残して。

書きます!私もたくさん書きますね!毎日毎日書きますね!



「さあ!まずは食事にしましょう。スイーリは着替えていらっしゃいね」


お母様は邸のものに忙しく指示を出しています。


「よかったな」


アレクシー兄様がぽんと頭をなでてくれました。


「ずっとレオのこと好きだったもんな。レオもお前のことが好きだったとは驚いたけど」


ちょっと待って。ええ確かにまさかレオ様から告白されるだなんてこれっぽちも想像したことはなかったわ。けれどその前に!待って。


「え?兄様ご存知だったの?」


「バレバレ

 さ!着替えておいで。腹減っているだろう?」


「はい すぐに戻ります」


カリーナが瞳を潤ませて進み出ました。


「お嬢様、おめでとうございます。よかったですねぇよかったですねぇ」


言いながら泣いてるじゃないの。


「もぅ、どうしてカリーナが泣くのよ」


照れてそんな風に返してしまいましたが、自分のことのように喜んでくれるカリーナに私も感謝の気持ちでいっぱいなのです。


「お預かりいたしましょうか?」


抱えていた花束を引き取ろうとしてくれますが、これだけは絶対渡せないわ!


「これは私が持っていたいの。カリーナ花瓶をお願いできるかしら」


「ふふふ、そうでございますよね。大変失礼いたしました」


すぐに用意してまいりますと言うカリーナに花瓶は任せて、一度自室へ戻りました。



部屋で1人きりになると、改めて今日のことが思い出されます。


夢じゃないわよね、レオ様が本当にー

花束からふんわりと春の香りがします。スイートピーにヒヤシンス、フリージア、アネモネ、チューリップ~全て紫色です。そこにミモザの黄色が包み込むように添えられています。


「レオ様と私みたいね」


はっ!私ったら何を言い出すの?言いながら恥ずかしくなってしまいました。花束を抱えたままジタバタとしていたら、扉の前で花瓶を持ったままこちらを見ているカリーナと目が合いました。その視線はとても生暖かくてー


「カリーナ!戻ったのなら声をかけてちょうだい」


「お呼びしたのですが お返事がなかったもので」


もぅー嫌だわ そんなニヤニヤとした顔で見ないで!

花瓶を置きながらカリーナは優し眼差しを向けてくれます。


「いいのですよお嬢様。思い切り喜んで下さい、私も嬉しくてたまりません」


「ええ、ありがとう。夢みたいに幸せよ」


カリーナがいてくれてよかったわ。1人でいたら暴れ出してしまいそうなほど嬉しいのだもの。あなたのおかげでなんとか自分を保てていられるわ。


「お花を活けましたら、お着替えいたしましょう」


「そうだったわね。急いで着替えなくちゃ」



手早く着替えを済ませ食堂へ向かいます。

お母様とアレクシー兄様は既に席に着かれていました。


「スイーリおめでとう。本当によかったわ」


「ありがとうございます、お母様」


「ほら早く座って」


「はい アレクシー兄様」


今日は幸せすぎて食事が喉を通りません。約束どおりお母様は私の好きな物をたくさん用意してくださっていました。心配をおかけした分しっかりと食べたいのに。


「ふふふ、いいのよスイーリ。今日は仕方ないわ

 明日も家庭教師はお休みいただいたほうがよいかしら?」


ふわふわと夢の中を彷徨っているような心地からはまだ抜け出せていないけれど。


「いいえお母様、私しっかりとお勉強頑張るわ。レオ様の前で恥ずかしくない人間になりたいですもの」


兄様がうんうんと満足げに頷いてくれたわ。


「えらいぞスイーリ、でも無理だけはするなよ」


「はい、兄様」



お母様は優しい笑顔を浮かべたまま手にしていたワイングラスを置きました。


「明日には多くの方に知れ渡るわね」


え?


「殿下は王族専用の馬車であなたを送ってくださったでしょう?それは多くの人の目に留まっているはずだわ」


あの馬車にはそういう意図が籠められていたのね。レオ様と一緒に馬車に乗れることが嬉しくて、そこまで気が廻らなかったわ。


「スイーリ、あなた殿下にとても大切に想われているのね。嬉しいわ」


「そうなのでしょうか、そうだったら嬉しいです私ー」


「あー早くヴィル兄と父上にもおしえてやりたいなあ 。ヴィル兄なんて泣くんじゃないか?」


「ふふふお父様も泣き出すかもしれないわねえ」


兄様とお母様は楽しそうにこの場にいない二人のことを揶揄い始めました。

そうなの。お父様とヴィルホ兄様はとても涙もろいのよ。あんなにいかつい顔をしているのに信じられないわよね。騎士団の方々には決して見せられない姿よね。

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