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「お早うございます殿下」

廊下に出るなりアレクシーが扉の前で敬礼している。

『どうした?』


昨日の朝までは訓練場に直接来ていたアレクシーが、今朝は私室の前で待っていたのだ。

『あ お早うアレクシー』

「本日よりお迎えに上がらせて頂きます」


・・・

『なあ アレクシー』

「はい殿下」

『勤務時間外は今まで通り接してくれないか』

「殿下のお望みとあらば」

揶揄ってるだろう、今絶対楽しんでいるよな?私はそれに乗ってやる気はないぞ。



・・・・・

「わかったよレオ なんかさうっかり勤務中に出たらまずいと思って 普段から慣れておこうと思ったんだけどさ やっぱりなんか落ち着かないな」

揶揄ってたわけでもなかったのか、そういやアレクシーは生真面目なところがあるんだよな。


『昨日はどうだった?勤務初日は疲れただろう』

「いや 有難いことにも俺はさ 本宮もここも初めてじゃないだろう?初めてのやつらは憶えるだけで必死だったと思うけどな」

『そうか それならよかった』



『アレクシー 似合ってたよ第二の騎士服』

「それは嬉しいな ずっとあれを着ることが目標だったらな俺」

済まないな、この先アレクシーが紺色の騎士服を着る機会は激減するけどな。


『白も似合うと思うぞ』

「あ・・・・・」

アレクシーが頭を抱えているうちに訓練場に着いた。



訓練場の中は今朝も静かだ。

アレクシーと二人、いつものように向かい合う。


『アレクシー 夜勤はあるのか?』

「叙任式前はあるだろうな」

『そうか その時は言ってくれよ』

叙任式までは十日を切った。それまでってことは多くても二、三回ってところか。


その時アレクシーがくっと頭を下げた。フェイントか?

半歩下がって出方を伺っていると、どうやら笑っていただけのようだ。鍛錬中に舐められたものだ。

剣を弾き飛ばしてやった。


ニヤニヤと笑いながら剣を拾ったアレクシーが、再度剣を構える。

「いや俺はさ 夜勤明けよりも祝祭期間の方が恐ろしいぜ」

『は?』

「連日夜会明けだろうと鍛錬するだろう?うちの王太子は」

そう言うなり剣を地面に突いて笑い始めた。



・・・そうだな、間違いなくするな。数少ない息抜きの時間なんだ。いいじゃないか!

『休憩するとは聞いていないぞ 首を斬り落としても構わないな』

全力で剣を振り下ろすと、アレクシーは慌てて転がりすんでのところでそれを躱した。


「くわっ危なっ!」

『笑い終わるまで賊が待ってくれるとでも?』

「こんなえげつない斬撃繰り出してくる賊がそうそういてたまるかって!」


手を貸し、アレクシーが立ち上がると再び構え直した。

「よし全力で行く」

『今までは遊びだったのか 傷つくな こちらは最初から全力だったのに』

肩を回しながら距離を取っていると、アレクシーが今度は苦笑いをしている。懲りない奴だな。


「レオ その顔じゃ まるで悪党だ」

『光栄だね じゃー今日は賊役に徹するとするか』

「何が光栄だよ 褒めてないぞ スイーリが見たら傷つくぞ」

『その手には乗らん』

その後はお互い無駄口を叩くこともなく、鍛錬に没頭した。




『そろそろ時間か アレクシーを遅刻させるわけにいかない』

「じゃ戻るか もう少し続けたかったけどな」

剣を置いて出口へ向かうと、そこにはロニーとビルが来ていた。


『おはようロニー ビル

 ビル 昨日はよく眠れたか?』

「おはよう ロニー ビル」


「おはようございますレオ様 ダールイベック卿」

「おはようございます・・・」

ビルは朝から元気がない。昨日の疲れでも出たか。


『大丈夫か?ビル』

「はっはい!大変驚きました」

ん?


「だろ?初めてだと驚くよな これがレオの正体だよ 悪鬼みたいだっただろう?」

はっ?

『おい人のことなんだと―』

「はい あ!いえ・・・あの はい レオ様が早朝に鍛錬をなさっているとはお聞きしましたが 剣術とは思っておりませんでしたので あの 驚いてすみません はい 驚きました いえ申し訳ございません」

あのビルがしどろもどろになっている。何故そこまで動揺する?



・・・あ、そうか。

ここにいるとついつい忘れる。学園で私は剣術嫌いと思われていたのだったな。

「ここでしか言えないけどさ レオは俺より強いぜ 見てたからわかるだろう?」

「はい! あ・・・申し訳ございませんダールイベック様」

「いやいいんだ 本当のことだからさ レオを超すのが俺の次の目標だ 超さなきゃいけない」


階段を上り、私室に向かいながら雑談を交わす。

『そうだペットリィはどうなったんだ?王都の貴族に雇われた話は聞こえてこないな』

暫く話題に上ることのなかったペットリィも、無事騎士科を卒業した。騎士団に入ることは叶わなかったものの、貴族の護衛騎士として引く手あまたなはずだが。


「旅に出るとか言ってたな 王都に居づらかったんじゃないか どこかの領地で働き口が見つかるといいと思っている」

『そうか』


「卒業式の日にお会いしたのが最後でした その日のうちに寮を出て行かれたようです」

『ビルもペットリィと親しかったのか?』

「特別親しかったわけではありませんが 何度か話をしたことはありました」

本科と専科は不思議なほど接点がないのだが、寮はまた別なのだろうな。


ふと視線を感じて横を向くとロニーが何か訴えるようにこちらを見ていた。

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