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『陛下 十日間お貸し頂きありがとうございました』

休暇を終えたロニーと共に陛下に礼を伝えに行った。


「どうだ?収穫はあったか?」

陛下は口元だけに笑みを浮かべている。

『そうですね 勉強になりました』


ゆっくりと足を組みなおした陛下は、相変わらず笑みを浮かべたままだ。

「どうやら成果はあったらしいな 扱い方は心得たようだ」

『扱い方 ですか』

どうもロニーの休暇にかこつけて、何か試されていたような気がしてならない。


「あれが特別なわけではない あのようなものが毎年のようにここへ来る」

『はい』

「なんだ?他人事ではないぞ 次からはお前のところにも来るのだからな」

やはりそう言うことか。予想はしていた。


「メルトルッカへ行くと知ったら殺到するだろう 好きに選べ」

いや勘弁してくれよ。慣れない他国で自分の従者にまで気を使わなければならない生活などうんざりだ。


『留学時の従者は必要ですね ロニーがいませんので優秀なものが来てくれるといいのですが』

背後でロニーが息を呑んだ気配がした。ちょうどいい機会だ、自室に戻ったらこの話もしよう。




ロニーが茶を淹れている。私は長椅子でそれを待つ。

ロニーの淹れた茶を飲むのも久しぶりだな。

カップを二つ置いて、ロニーは向かいの椅子に腰を下ろした。

「今朝お伺いした以上に大変だったようでございますね」


毎日渡していた報告をまるで信じていなかったようなロニーは、今朝もそれとなく休暇中の様子を探って来ていた。

『そんなことはないさ そりゃロニーがいる時のようにはいかなかったけれどな』

「お二人いれば とは思ったのですが」

そうか、二人従者がついたのはロニーの要請でもあったのか。二人で補い合うことを想定していたのだろうが、残念ながらあの二人は磁石のようにぴったりと行動を共にしていたからな。


『ロニーが気にすることはない それにもうすぐビルも来てくれるからな 今後も定期的に休暇は取るようにしてほしい』

「はい 今回のように長い休みを取らされるわけには参りませんので こまめに頂くように致します」

なんだか罰を与えたような気になったが気のせいだろう。与えたのは間違いなく休暇だ。


『それから先程陛下の執務室で話した件 だな』

「はい」

『留学には別の従者を連れて行くつもりだ』

出来れば長く引き受けてくれるものを連れて行きたいが、それを考えるのは今でなくてもいいだろう。


「私をお外しになると言うことでございますね」

今年のうちにそうするのが理想だとは思う。しかし視察には同行してもらいたいと、何年も前に言ってある。その視察を最後にすると決めた。いつまでも連れ回すわけにはいかないからな。


『侍従を 引き受けてくれるな?私が不在の間 宮を任せられるのはロニーしかいない』

トローゲンの嫡男だ。いずれ侍従になることはわかっていたことと思う。


「承知致しました 大変光栄なお話をありがとうございます レオ様には安心して留学に専念して頂けますよう精一杯務めさせて頂きます」

『ありがとうロニー 一年ほどは兼務になると思うが受けてくれて安心した』


「はい 私は当面従者も続けて参りますので 直轄地の視察には何がありましても随行させて頂きます」

大真面目な風を装っているものの、これはロニーなりの冗談だろう。この視察にロニーが欠かせないことは百も承知の上だろうから。

『ああ 頼りにしてる』



これで宮の人員が全て揃った。いつでも移ることが出来るだろう。

『そろそろ向こうに移らないといけないな』

「いつになさいますか?全て準備は整っております」

『うん』


叙任式の前に茶会でも開こうか。先に見せておきたいしな。

『六月最終の日曜日で茶会の案内を出そうと思う その前に引越しを終えよう』

「かしこまりました 手配致します」


「それとレオ様」

思い出したようにロニーが顔を上げた。


「差し出がましいようですが ノシュール様にはもうお伝えになっておられますか?」

あ・・・


学園を卒業した後は、ベンヤミンに私の補佐を願うつもりでいる。ベンヤミンもその心づもりをしているはずだ。

駄目だな、ベンヤミン相手だとつい話すのが遅れる。なんだか以前にもそれで気まずい思いをしたはずなのに、また忘れていた。


『ありがとうロニー 忘れていた 近いうちに必ず伝えてくる』

ここでは侍従は使用人統括として書いています。従者に比べてお給料も何倍も上がる大出世です。

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