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今日は半日をかけて視察同行予定者との面談だ。志望書を読んで声をかけた十数名のもの達が集まることになっている。最後は会ってから決めると言ってはいたが、余程のことがなければ今日会うもの達は全員同行者にするつもりだ。



「レオ様 ヴィルヘルム=ハパラさんがお見えになりました」

まだ約束の時間まで一時間以上あるはずだ。随分と早いな。

『わかった すぐ向かう』


志望書の中にビルの名前を見つけた時は、少々の驚きの他は素直に嬉しかった。ビルは確実に、私には見えない視点で物事を見ることが出来る人物の一人だと思っているからだ。


ロニーと共に面談を予定している部屋へと向かう。

「こちらでお待ちでございます」

聞いていた部屋と違う。だが場所の変更など些細なことだ。


『おはようビル』

「王子殿下 おはようございます」

ビルは座っていた椅子から立ち上がり、深く頭を下げた。


『どうぞ座って 気楽に話そう』

ビルの向かいに腰を下ろして、ビルにも再び椅子を勧めた。

「はい ありがとうございます」

それでもビルはまだその場に立ったままだった。


扉を閉めてこちらへ向かってきたロニーが、ビルの隣に立ち意外なことを口にした。

「レオ様 視察の同行者面談の前に少しだけお時間を下さい」



「ご紹介致します 新しくレオ様の従者をお引き受け頂きましたヴィルヘルム=ハパラさんです」

「未熟ではございますが ロニー様にご指導頂き精一杯務めさせて頂きます よろしくお願い致します」



『ビル―


 ビルだったのか・・・』


驚いた。まさかロニーが声をかけていたのがビルだったとは思いも寄らなかった。

良いのだろうか、ビルほどの優秀な人材を私の従者に留めておいて。ビルならば専科へ進みさえすれば、その先官僚になることも十分可能だ。


『後悔しないか?ビルの実力ならば専科を卒業すれば官僚になることも可能だろう』

「はい 殿下のお側で学ばせて頂くこと以上に価値のあることがあるとは思えません」



『わかった 私としては大変ありがたい話だ ビル 私の従者になったことを後悔させないだけのものを見せると約束しよう』

「生涯をかけまして 誠心誠意お仕え致します」


ロニーがあれだけ自信たっぷり言っていた意味がようやくわかった。ビルならば従者として申し分ない。数ヵ月もすれば充分ロニーの代わりが務まるだろう。



『ビル 視察の面談もこのまま済ませよう どちらで行きたい?』

「はい どちらと言いますと・・・?」

『同行者の立場と従者 どちらでも構わない ビルの望む形で連れて行く 今回はロニーもいる』

ビルは考え込んでいるらしい。迷う理由はなんだ?ロニーからは私が早く従者を望んでいるとでも聞かされているのだろうか。



「レオ様 私から少し補足させて頂いても?」

『ああ ロニー任せるよ』


「ビルさん 従者は常に主と共に行動します あなたならばこの説明でもうおわかりでしょう」

ロニーはビルが何を迷っているのか理解しているということか。流石だな。


「殿下 従者として参加させて下さい」

『わかった よろしく頼む

 あとビルから聞いておきたいことはないか?』


「今はございません ロニー様から従者の職務に関してはお聞きしております」

『そうか 詳しい話はまた改めよう』

この場で一番時間を置く必要があるのは、多分私だ。今は驚きが勝ってしまい、ビルに聞きたいことも浮かばない。



『そうだビル 呼び方を変える必要はない ビルは大切な友人の一人でもあるんだ これからも名前で呼んでくれ』

「わかりました ありがとうございますレオ様」

『うん』


ちらと時計を確認したロニーが囁く。

「そろそろ志望者の方がお見えになっているかと」

『そうだな ビルに宮も案内したいところだが』

今からが面談の時間だ。数時間はかかるだろう。


「ビルさんにお待ち頂きましょうか?ビルさん如何でしょう この後お急ぎのご予定はございますか?お急ぎでなければ王宮の図書館をご案内差し上げようかと思いますが」

ビルは完全にロニーに捉まれているな。ビルがその誘惑に勝てるはずがない。


「レオ様 お待ちしてもよろしいでしょうか」

『ああ 出来る限り急ぐ その間図書館で時間を潰してもらえるか?』

嬉しそうな顔のビルを見ていると、急ぐ必要もないように思えるな。



三人揃って部屋を出た。図書館への案内は外で待機していた騎士に任せ、私は当初から予定されていた通りの部屋へと向かった。

『ロニー 面談の後は三人で食事にしよう 簡単につまめるものを私の部屋に用意してくれ』

「かしこまりました」



一度別室を覗いてきたロニーが確認したところ、既に全員が揃っているようだ。

今日面談に臨むのは、同級生が三名、専科を卒業予定のものが二名、その他が七名。同級生のうち一人はビルだったから、残るは二名だ。

『では今日ここに到着した順に呼んでくれるか』

何順でも構わなかった。皆甲乙つけがたい優秀なもの達だ。





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「お疲れ様でした いかがでしたか?」

『うん 全員問題ないだろう ロニーから見てどうだった?』

全員と面談を終えた後、ロニーと二人で一息つく。


「はい どの方も大変意欲的でございましたね レオ様にもよい刺激になるのではないでしょうか」

『では全員にその旨伝えてくれるか?』

「かしこまりました 今すぐお伝えして参ります その後ビルさんのことで少々お話しが」


『わかった ここで待つよ

 ああそうだ 視察には既に決まっている同行者が二名いると言うことも伝えてほしい』

「承知致しました」



ビルのことで話があるとロニーが言った。

卒業後に一度ボレーリンへ戻りたいのかもしれないな。一年帰っていないのだろうし、仕事に就いた後では帰ることも難しくなるだろう。ロニーには悪いが暫くのんびりして来いと言ってやるつもりだ。

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