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その日の夕方には陛下にお会いすることが出来た。

『進展がありましたのでご報告に上がりました』

「そうか 待っていたぞ」


ビョルケイのタウンハウスから、学園で使用されたものと同じラベルの貼られた毒が見つかったこと、そしてビョルケイの工場の不正を調査中であることも説明する。

『本邸は調査中です 遅くても今月末までには最終的なご報告ができると思います』


「よくやった 約束通り自分の手で犯人を見つけたな」

陛下のその言葉に曖昧な笑顔を浮かべる。そうなのか、これで事件は解決したのか。

「なんだ?あまり嬉しそうではないな」

『いえ・・・実感が湧かないだけかと 工場の調査もまだ途中ですし』


「密輸か 長年それを見抜けなかったことも問題だ あまつさえそのようなものに爵位まで与えるとはな」

この件に口を挟むことは憚られた。事実の報告のみ続ける。


『ダールイベック公爵から港の報告を受けました 不審な動きは見られないとのことです』

公爵が港まで出向いたのは、薬物密輸の疑いがあった為だが、何も出なかったということは、当然生糸の密輸も港では行われていないと言うことだ。


「ああ私もダールイベックの心配はしていなかった フィルはそのような仕事をする男ではない」

陛下の公爵への絶大な信頼がわかる。


「さて 第二を呼ぶか これまでの経緯から第二に任せる方が良いだろう レオお前も同席しなさい」

『かしこまりました』



すぐに第二騎士団の団長と副団長が呼ばれた。

「レオ まずはお前から説明しなさい」

二人に経緯を説明する。二人は顔を見合わせて、ほっと息をついた。

「殿下のご尽力に感謝申し上げます 後はお任せください」

『うん 頼む』


「邸にいるのは夫人と娘が一人 使用人が三名だ 全て捕らえよ 男爵と嫡男は王都に戻り次第同様にせよ 南門に騎士を回せ」

「はっ!御意のままに」

ビョルケイ一家への捕縛命令が出された。今年は波乱の幕開けとなったな。貴族の間には学園の事件も広く知れ渡っているだろうが、平民にはほぼ伝わっていないはずだ。それもビョルケイ一家の逮捕で一気に知られることになるだろう。正直に言うとあまり知られたくはなかった。




「陛下 男爵には夫人が二人いると聞いております ダールイベック領の夫人への処分も同様でしょうか」

ヴィルホの問いに間髪を入れず陛下がお答えになる。

「無論だ 本邸の使用人も全て連れてこい」


『陛下 少しだけお待ち頂けませんか?』

「なんだ?」

どうしてもすっきりとしない理由は何故なのかと考えていた。

薬物か。ビョルケイ嬢の使った薬物の出所がまだ掴めていない。毒物のラベルの筆跡が酷似している、それだけでも充分な証拠と言えるかもしれないが何か足りない。


ビョルケイ嬢が第三者からあの薬を買ったという可能性もまだ残っている。しかし生糸、毒物、そして薬物。全てが繋がっている気がする。


『間もなく本邸を調査しているもの達が戻ります その報告を聞くまで本邸へ騎士団を送るのを待っては頂けませんか?』

「別件も合わせて処理したいと言うことだな?」

『はい 必ず証拠を持ち帰ると信じております』


「わかった この件の責任者はお前だ お前が指示を出すまで待とう」

『ありがとうございます』


陛下が事の次第を二人に説明する。

「実はな 男爵には密輸の疑いも掛かっている それもレオが調査中だ」

二人が目を瞠った。

「とんだ悪党がいたものですね しかしどうやって毒物を・・・港からは離れた町だと聞きましたが」


『毒物ではない 今調べているのは生糸の密輸だ その過程で毒物も出てくればとは思っている』

「なんと・・・」

驚きの後に込み上げてきたのは呆れらしい。団長は溜息を漏らした。



最終的に、南門で男爵とペットリィを捕縛次第、邸の捜査を行う小隊へ伝令を走らせると言うことで話はまとまった。リーラの予測では十七から二十日頃だと言う。学園が始まるのが二十一日だ。ペットリィはギリギリに戻りそうだな。二人は同じ馬車で帰ってくるだろうか。

休暇は残り六日だ。それまでに納得できるものを必ず見つけ出す。



『陛下 これで失礼しても構わないでしょうか』

「あ ああ まだ資料の確認途中だと言っていたな 戻って構わない」

『お時間を頂きありがとうございました 失礼致します』




「たまには夕食に誘おうと思っていたのだが 言い出す前に断られたな」

レオが先に退出し、二人の騎士も辞した後の部屋で王が独りごちた。

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