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遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。

珍しい・・・どこかの家のベランダに迷い込んだのかな?

心地よい鳴き声を聞きつつ布団の中に潜り込む。


目が覚めて三秒で全覚醒することが自慢の私としては、珍しく二度寝を始めてしまいそうになったが今日が平日だったことを思い出し、とりあえずスマホに手を伸ばした。何時?もうちょっと寝られるといいけれど・・・



あれ?スマホは?!

枕の周りを探っても見つからない。寝ている間に落としちゃったのかな?


ベッドから降りようとするも足が床につかない。

あー寝ぼけているね、これ。

でもまだごはんの匂いもしてこないし、時間はたっぷりあるはず。

とりあえず水でも飲んですっきりしてからスマホ探せばいいよね。


そう考えながら立ち上がり、ふと横を見るとえらく立派な額縁に納まっているポスター(?)と目が合った。

柔らかそうなサラサラの金色の髪をした美しい少年。着ている服は恐ろしくシンプルな白の上下~まるでパジャマのようだけれど、全身から隠し切れない高貴さが滲み出ていた。


どこかで見たことがあるような気がする・・・


いやそうじゃなくて、こんなポスター知らないよ。うちにこんな巨大な額飾れる壁があるわけないじゃない。ここ家じゃないわ、夢だよ!

辺りを見渡すと無駄に広い。


夢だとわかれば不安がることもない。せっかくなのでこのだだ広い空間を探索してみることにしよう。


窓も大きいー。

窓の外には半円を描くテラスが広がっていて趣味のよい椅子とテーブルが置かれている。

そのさらに外は・・・



真っ白だ。



木々も雪に覆われていて、そこに朝焼けの光が反射して神々しさすら感じてしまう。


7月に雪ってことはここは南半球?オーストラリアの夢なの?


コアラでも見つからないかなと夢中で窓の外を見ていたら、扉の開く音がした。



「おはようございます お目覚めでしたか」


『はい おはようございます』


上品に扉を閉めてからお手本のようなお辞儀をしたその女性は、淡い水色のワンピースに白のエプロン姿、明るい栗色の髪をふんわりと頭のてっぺんでお団子にしている。


も、もしかしてこれはメイドさんなのでは?!


夢の中とはいえ初めて見る生メイドさんに大興奮!あまりジロジロ見るのは失礼と思いつつも興味津々、見ずにはいられない。


そんな視線を感じてか、メイドさんは優しく微笑みながら

「湯の準備ができております 湯浴みにいたしますか?」


『はい!お風呂いただきます!』

夢だというのに雪景色を眺め続けていたため身体が冷えたような気がしていたのだ。お風呂嬉しい。メイドさんありがとう!



メイドさんが先程入ってきた扉を再び開くと、振り返り笑顔のまま立っている。どうやらあの扉の向こうがお風呂場のようだ。


(おじゃまします・・・)


中に一歩足を踏み入れた途端、思わずほぅーっと溜息が漏れてしまった。

正面に置かれている白い衝立には、美術館に飾ってあっても違和感がないほど見事な彫刻がほどこされてあり、傍らには湯上りに寛ぐスペースだろうか、大きなソファーとテーブルも備え付けられている。



・・・

それにしてもいつまでいるつもりだろう。笑顔のまま一向に立ち去る様子のないメイドさんを不審に思いつつ、服に手をかけようとしたとき、目にも留まらぬ速さで手が伸びてきたかと思うとボタンをてきぱきと外し始めた。


『じ じ 自分でやります!!!』




「・・・さようでございますか」

一瞬メイドさんの目が大きく見開かれた気がしたけれど、気のせい、だよね?




『あの・・・一人で入れますので』




「・・・・・では何かございましたらお声がけくださいませ」

更に目を瞠ったのは多分見間違え、きっとただの思い過ごし。いやいやメイドさんとは言ってもお風呂の中までは普通ついてこないでしょう・・・ついてこないものだ、よね?お母さんとだって何年も前から一緒に入ることなくなったんだから、見知らぬ人なんて絶対に無理。




柔らかい湯気の立ち上るバスタブに身体を沈める。

はぁーーー気持ちいい。こんな夢があっていいのだろうか?いい香りまでしてきたよ。


う~んと伸ばした両腕を戻しながら眺めてみるとなんだかいつもの自分の手と違う気がする。


手ね、なんか違うよね、小さい?

胸の前で結んだり開いたりを繰り返していると、もっと大変なことに気がついた。


胸が・・・ない!


まだ高校一年生とは言え女子だ。多少は胸も膨らんできてるし、こんなぺったんこじゃなかった!はず!


うーん・・・お風呂は気持ちよくて最高だけれど、ちょっと悲しくなってきた。そろそろ起きたい・・・




やっぱ全てが完璧な夢なんてないんだねー、少しがっかりしつつ立ち上がった瞬間私は固まった。




え・・・・・・・・・・



半ば無意識に左の二の腕を思い切り捻る。


痛い、赤く痕がついてしまった。




恐る恐るもう一度確認する。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



『ぎゃーーーーーーーーー!!!()()・・・()・・・qa@er☆×●dsk・・・・・・・・』


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