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きっかり一時間後に医者が戻ってきた。仕方ない約束は約束だ。

『毎日悪かったな 皆疲れた顔をしている 今日は早く帰って休んでくれ』


まさかそう言っただけで笑われるとは思わなかった。

「レオ 鏡見てないだろう」

「レオに心配されちゃ僕達も帰るしかないねー」

なんだよ、仕方ないだろう今朝まで寝てたのだから。


『スイーリもありがとう 今日はアレクシーと戻ってゆっくり休んで』

「わかりました レオ様もお休みください」

皆が出ていき、再び部屋の中は静寂に包まれた。


「お疲れではございませんか?お顔の色は先程より良くなられましたね」

『疲れてはいない もう大丈夫だろう』

頭痛やだるさが取れると途端に退屈になった。だがその何気なく言った言葉に医者は目を吊り上げる。


「何がどう大丈夫なのでございましょう さあ横になって下さいませ」

先程無理を押し通した手前言うことを聞かざるを得ない。


「焦ってはなりませんよ まだスープしか召し上がっておられないのです 形のあるものが出てくるまでは歩くことは許可できませんのでご承知くださいませ」

『・・・』


『本は』

「勿論禁止でございます」

・・・まだ最後まで言ってなかったのに。




そんな退屈に思えた午後が、一瞬で張り詰めた空気に塗り替えられた。

「王子殿下 陛下がお見えです」


急いで身体を起こす。

「起きて大丈夫なのか?横になっていて構わないのだぞ」

先日聞いた温度のない声とは違う、よく知る陛下の声だった。

『はい大丈夫です お越しくださりありがとうございます このような格好で申し訳ございません』

「病人が何を気にしている

 言葉はしっかりとしているな ようやく乗り越えたようだ」


陛下は側まで来ると腰を下ろした。

「辛くなったら横になりなさい」

『ありがとうございます』

あの冷たく見下ろしていた陛下は見間違えだったのだろうか。でもあの声ははっきりと憶えている。



「まずはお前が気になっていることから話してやろう」

『はい』

ロニーの処分のことだろう。


「お前の読んでいた通り何者かにより脅されての犯行だった」

『えっ?』

予想と全く違う話が出たため、思わず気の抜けた声が出た。


「なんだ?もう聞いていたのか?」

『いえ・・・初めて聞きました』

「パラ=カトゥムスの荷物から手紙が見つかってな 供述と相違なかった」

『カトゥムスは何と?』

「うむ あの日の朝見知らぬものから手紙と毒を渡され 昼食の茶に毒を盛りダールイベック公爵令嬢に飲ませろと指示されたそうだ 従わない場合は唯一の身寄りである母親の身に危険が及ぶと脅されたらしい」


「それとな 毒は遅効性で効き目が出るのは夕食の後辺りだから 疑われる心配はないとも書いてあった」

『そう ですか・・・』

毒を用いる時点で充分卑怯なやつだが、それ以上に卑劣だ。そんな無意味な嘘を何故つく必要があった。


『陛下 カトゥムスは今?』

「王族が死にかけたのだ 無罪とは行くまい それはわかるな?」

『・・・はい』



「レオ 次は私が問う番だ」

『はい』

背筋に冷たいものが走る。陛下がご納得される答えを私は返すことができるのか。


「そう脅えた顔をするな レオ お前は今回の事件を事前に察知していたと聞いたが?」

『はい 大まかにですが』

困った、それだけは答えることが出来ない。でも聞かれて当然のことだ。


「ああ 情報の出所を教えろと言うのではない お前も草の一人や二人飼っていて当然だからな」

えっ?草?密偵のことか?またしても予想とはかなり別の方向へ話が進んでいる。


『え ええそれでは何を?』

「心当たりはないのか」


心当たり・・・

『黒幕 ですか?それが・・・予想が外れました 全く心当たりがありません』

「そうか・・・」




『あの 陛下』

「なんだ」

『私からも一つだけお伺いしてもよいでしょうか』

「言ってみなさい」

『ロニーは

 ロニーは今どこにいるのですか』



「ロニーには暇をやった」

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