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いくつもの季節を巡り、この世界で4度目の冬がやってきた。


13歳の今も4年前とさほど変わらない生活を送っている。

身長は30cm伸びて165cmになった。変わったことといえば10歳以降パンツの裾が長くなって、成人と同じ服装をするようになったこと。

それとイーダが結婚をして、春には母親になる予定だということ。オリヴィアは母上の侍女に戻り、ロニーが私の従者になったこと。ロニーはオリヴィアの弟で22歳。独身で、今は王宮に自室を持ち早朝から夜遅くまで私のために働いてくれている。



早朝の剣の鍛錬は欠かさず続けている。ヴィルホは第二騎士団の小隊長から副団長へと昇進し、ますます多忙になったにも係わらず、変わらず毎朝鍛錬に付き合ってくれていた。


「殿下の実力は既にアレクシーよりも上ですよ」


軍神一族に認めてもらえるとはお世辞でも嬉しい。


『ありがとう、世辞でも充分嬉しいよ』


「お世辞ではありませんよ。剣に関して私は嘘を言いません故」



『世辞ではないのだとしたら、それはそれで問題だな』


「そうなのです」


言った後2人顔を見合わせて笑う。


「殿下の護衛騎士となる予定なのですから、殿下をお守りする力をつけさせなければ」


『アレクシーも今は学園で忙しいだろう。あまりしごきすぎないでくれよ?』


15歳になったアレクシーは、この秋王立学園に入学した。まだ入学して数ヵ月、学園生活に慣れるのも大変だろう。自分の高校生活を思い出し懐かしく感じた。


この国は変わらず今も平和だ。護衛騎士など形だけのものになるだろう。将来に渡ってアレクシーが側にいてくれるのは心強いが、それは剣の腕だけを指すものではない。


『あと2年、か』


早く学園に通いたい。思いの外私は学生生活が好きだったようだ。





鍛錬の後、軽く湯浴みをして朝食を摂り父上の執務室へ向かう。今日は月に1度、父上から直接教えを乞う大切な日だ。

所謂帝王学を授けていただいている。今月のテーマは父上よりお借りしていた1冊の本の内容について話し合うこと。

本の内容は三国志と非常によく似ていた。三つの国のうちどの国を支持するかと、その理由を考えてくるように宿題を出されていた。


「レオはどの国を支持するのかな?」


『私はA国を支持します』


「そうか。では私はB国を支持することにしよう」


そうしてディベートが始まる。今回は国が3つあるから3回これを繰り返す。全ての国の長所と短所を徹底的に出し合うのだ。




ロニーが時間を告げに来たときには予定の時間を少し過ぎていた。父上との授業はあっという間に過ぎてしまう。今月もとても有意義だった証拠だ。


「昼食の準備が整っております 。王妃殿下もお待ちかねでございますよ」


父上の授業の後は母上も加わっての昼食だ。家族3人が揃う昼食はひと月にこの日くらいのことで、いつもの昼食より少し長く時間が取られている。



「ふふふ」


『何かよいことがあったのですか?母上』


パルードの王女として育ち、ステファンマルクに輿入れ後は王妃として生きてきた母上は、常にほほえみを浮かべた、絵に描いたお姫様のようなお人なのだけれど、今日は普段よりももう少し機嫌がよいらしい。



「ええ、あなたたちがますます似てきたなと思って」


理由はあまりにも素朴だった。


『それは嬉しいです

 でもやっぱり髪の毛だけは母上に似たかったなー』


正直に言うと、父と瓜2つなこの容姿を気に入ってるわけではない。王子のテンプレみたいでさ。


「あらレオ、それは私たちだけの秘密だったのではなくて?」


しまった、母上には何度か言ったことがあったのだが、父上には秘密にしていたのに!

そっと父上の方を見遣ると


しゅんと尻尾を垂れた子犬のような顔をしている。



『あっ』


一国の主が、こんな些細なことでわかりやすく落ち込むなんて、ちょっと呆れてしまうような、それでいて憎めないと思うのは、私が息子だという証拠なのかな。



「ふふふ、これは随分と欲張りな王様だわね、レオ

 いいわ、もっと言っておやりなさい。ふふー」


「酷いではないかイレネ」


相変わらず仲の良い両親がじゃれ合うように言い合う。



「ではレオに判断してもらいましょう。レオ あなたはどちらの味方?」


ニッと口角を上げて悪戯っぽく笑う母上に満面の笑みをお返しする。



「ああ完敗だ! 強欲な私が悪かった」


白旗を揚げた父上に、ツンと澄ました顔を作ったかと思うと母上はプッと小さく吹き出す。

今ここにいるのは王と王妃ではなく、きっとどこにでもある暖かい普通の家庭の父親と母親だ。

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