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『スイーリ 目処が立ったよ』

「もうわかったのですか!」


当事者であるスイーリに隠したままではいられない。何せ全ての情報はスイーリによってもたらされたのだ。安全な部分だけは伝えておこうと思った。

『ああ 書類を当たって疑わしいものを見つけた 数日掛けて観察すれば顔と一致するだろう』

「ありがとうございますレオ様」


『そして内密に騎士を配備することも決まった 後は任せておけば確実に捕えてくれるはずだよ』

大幅に省略はしているが嘘は言っていない。


「ああ安心しました これでまた改変できましたね」

『そうだね でもまだ安心するには少しだけ早いよ』

「そうでした!騎士の方にはご負担をおかけしてしまいますね」


『騎士は任務に就くだけだ 気を揉む必要はない

 残る問題はそこではなくて いつ実行されるかがわからないということだ だからその日までスイーリは私と昼食を共にしてほしい それは後一週間かもしれないし 一か月先までかかるかもしれない どう?』

「私は・・・嬉しいです ずっと毎日ご一緒していたいですから」

スイーリが渋ることはないだろうとは思っていたが、これでひとつ安心だ。


『だが毎日二人きりではビョルケイを刺激しかねない 皆にも付き合ってもらおうと思う 理由までは話せないがどう思う?』

「わかりました これは私に手伝わせてくださいませんか 私が皆さんにお願いしたいと思います もちろん本当の理由は秘密にしますので」

『わかった ではスイーリに任せるよ』

これでスイーリが納得してくれたら成功だ。反応を見る限り問題はないように思う。




----------

「レーオー!ベンヤミーン!ヘルミちゃーん!こっちこっち!」

食堂に着くと、既に私達以外の四人が揃って待っていた。

『待たせたな』

「悪い!長引いちまってさ」


「お気になさらずに 今日はたまたま私達のクラスが早かっただけですわ」

今年も変わらずにイクセル達三人は同じクラスだ。そして私達三人も。


「アンナ様もご一緒できるのは嬉しいですわね 放課後は私達六人ですので」

「お誘い頂けて嬉しかったです これから毎日ここでご一緒できるのですね スイーリ様ありがとうございます」

「いえ 私こそ皆さまがわがままに付き合ってくださって感謝しておりますわ」

「何言ってるんだよースイーリちゃん 僕達だって嬉しいんだからわがままなんかじゃないよ」

「ふふ ありがとうございますイクセル様」

「なんだかさ 毎日お茶会みたいだよね アレクシーとデニスもいたら最高なのになー」


久しぶりにかつての日常が戻ってきたような気分になった。危うい薄氷を履むかのような日常だが、今はそれを楽しんでいたい。



だが楽しむ前に、イクセルに会話は任せて私は給仕のもの達の観察を始めることにした。今日は三人ともこの場にいるはずだ。

名前と特徴は頭に入れてきた。今日はそれを一致させるのが目的だ。

まずは一人目、小柄で亜麻色の髪・・・


・・・多いな、そうだった半数以上が亜麻色だ。序盤から挫けそうになる。

髪の毛以外の特徴は耳。立ち耳と書いてあった。立ち耳・・・正面から見るとすぐにわかるとロニーが言っていたが、どんな耳だろう。そう言われると今まで耳の形を気にして見たことは一度もなかったな。

なんだかとても耳が気になりだした。髪のことも忘れて耳ばかりを目で追いそうになる。駄目だもっと自然に、視線が鋭くならないよう気を付けなくては。



いた。

亜麻色の髪をひとつに束ねた小柄な女性。年齢は四十前後に見える。そして耳、あれが立ち耳か。本当だ、他のものの耳とはかなり違って見えるな。他の亜麻色髪に立ち耳と書いてあるものはいなかったからあの女性で間違いないだろう。彼女がオァンゲィだ。


二人目は運よくその直後に見つけることが出来た。私達の席へ料理を運んできたからだ。チョコレート色の髪を頭の高い位置でひとつに丸めた背の高い女性。すっと背筋が伸びた美しい立ち姿が印象に残る彼女はカトゥムス。



二人確認したところで気が滅入ってしまった。どちらも真面目に働く善良な人間にしか見えなかったからだ。その二人を私は疑っている。どうしようもなく罪悪感が湧き上がってきた。

この感情に流されてはならない。理屈ではわかっている。だがそう上手く割り切ることが出来ないのだ。


もう一人は明日にしよう。



「レオどうした?冷めるぞ」

手が止まっていたらしい。

スプーンを手に取りスープを掬った。

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