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『ロニー至急頼みたいことがある』

「何なりとお申し付けください」

『学園の食堂で働く全てのものの名簿と勤務表 雇用時の調査書などもあれば漏れなく揃えてほしい

 専科と寮のものは不要だ 本科の食堂のものだけ頼む』

「かしこまりました」

『動くのは明日からで構わないが どのくらいで揃いそうか』

「学園の保管状況次第ではございますが 可能な限り明日中に揃えます」

『助かる 無理はしなくていいが 可能な限り急ぎでお願いする』

「お任せください」


その先のことを考えるのはロニーに頼んだ書類が揃ってからでいい。焦ったところで無駄だ。

今できること・・・宿題だな。


ロニーが明日と口にした以上、かなりの確率で明日には揃えてくるはずだ。それが揃えば忙しくなる。今のうちに進めるだけ予習もしておきたい。

そう思いながらまず最初に、昨日手を付けられなかったホベック語の宿題を開いた。




翌日、メルトルッカ語の集まりで二日ぶりに皆が顔を揃えた。

誰もがその話題には触れないよう、不自然なほどに明るく振舞う。

スイーリも表面上はいつもと変わらず穏やかに見えていた。

「レオ 次の日曜日はレノーイ様のところへ行くことになっているんだ レオ時間ある?」

『ああ 一日空いてるよ』

「久しぶりに馬を走らせないか」

『いいな 待ってる ―今の会話メルトルッカ語でもう一度言ってみるか?』

「お おう」

学園に入ってからベンヤミンたちと王宮で馬に乗ることもなくなっていた。三年ぶりか。

私に気晴らしをさせようと誘っていることはわかっている。有難いことだ。



時間になり、帰り支度をしてそれぞれが帰りの馬車へと向かう。ここ学園も馬車を停める場所には決まりがあって、王宮の馬車は一番手前、その隣はノシュールかダールイベックだ。余談ではあるが敷地内に入れるのは子爵家以上の馬車に限られている。


今日もいつもの場所にいつもの三台が停まっていた。

「レオ様おかえりなさいませ」

『ただいまロニー スイーリを馬車まで送ってくる』

「かしこまりました」


ノシュールの馬車を挟んで一つ奥に並んでいる馬車の前まで二人で歩く。

「殿下 お送りありがとうございます お嬢様おかえりなさいませ」


スイーリが馬車に乗り込んだのを確認して引き返す。

『気を付けて帰るように また明日』

「ありがとうございましたレオ様 また明日」



馬車でロニーと向き合い、報告を聞く。

「全て揃いました お部屋にご用意しております」

『早いな ありがとう 戻ったらすぐ取り掛かるよ』

「学園の書類管理は素晴らしかったです 半時間もかからず全て用意していただけました」

『流石だな 見習わなくてはならないな』


自室に戻ると着替えもそこそこに書類を開いた。

食堂に勤務する者の人数は、厨房が十一名、給仕が四十名か。厨房のものは除外していいだろう。念の為軽く目を通そうとは思うが、恐らく無関係と考えていい。


給仕担当四十名の調査書を抜き出し、一枚目から順番に読んでいく。

名前、特徴、家族構成、住まい、出身地、前職、紹介者、勤務年数。

二つの山に分けながら次々と読む。全てに目を通し終えた時、左に残った調査書は三枚だった。

その三枚を書き写す。右の三十七名は省いていいと思う。恐らくは三枚の中の一人・・・複数である可能性もゼロではない。三人とも疑うべきか。


ひとまず保留にして、次は勤務表を広げる。有難いことに三ヵ月先までの勤務予定が既に決められていた。先に絞った三人の勤務予定日を書き写していく。


そっと机の端にカップが置かれた。

「レオ様 少し休まれてはいかがですか?」

その隣に置かれていた冷めた茶の入ったカップを下げながらロニーが気遣うように言った。

『済まない 気がつかなかった

 ありがとう一息つくよ』


茶を飲みながら写した勤務表を見る。

『ロニー ヴィルホを呼んでもらえないか ロニーにも同席してもらいたい』

「かしこまりました」



さて、どう切り出すべきか。



ヴィルホは第二騎士団副団長。

第二騎士団は王宮、王並びに王族専門警護の騎士団だ。本来であれば学園の管轄は第一騎士団である。

私の計画を話せば、まず間違いなく二人は反対するだろう。そこで二人が納得できる代替案を出すことが出来れば考え直すこともあるだろうが、最終的には私の一存で進める覚悟は出来ている。

これは私の問題でもある。責任は取らなければならない。


「殿下 失礼いたします」

ロニーがヴィルホを伴い戻った。

『遅くに済まなかった こちらへ』

長椅子へ移動する。


ヴィルホとロニーが並んで座り、その向かいに座る。

『今から話すことは他言無用でお願いする』

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