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「これは珍しいデザインでございますね 初めて目に致しました」

レオ様の鍛錬を見学させて頂いた後、お部屋に戻るとパルードの衣装が届いていました。レオ様に頂いたお揃いのショールと、フレッド様から頂いた髪飾りも丁寧に包まれて中に入っています。


「ええ パルードの衣装なのよ 皆で一着ずつ選んだの ショールはレオ様 髪飾りはフレッド様から頂いたものよ」

「まあ そうでございましたか とても美しい色でございますね」

「今日はこれを着るわ」

「はい かしこまりました」


お店で試着をした時、今日の晩餐の時にこの衣装を着るお約束をこっそり四人でしていました。今頃は皆さん着替えていらっしゃる頃かしら。私も準備しなくては。


「湯浴みの準備が整っております お入りくださいませ」

「ええありがとう そうするわ」

レオ様と同じバスオイルを私も頂いてきましたが、届いた荷物の中から探すのを忘れていたわ。

仕方がありません、そちらは今度ゆっくり使ってみることにしましょう。


湯船に浸かり、手足を伸ばします。

パルード街の散策では大変楽しい時間を過ごすことが出来ました。街の方々は陽気で親切な方ばかりでした。その中でもやっぱり一番はオリーブショップの方だったかしら。

思い出すとまだ笑いが込み上げてきます。


「良い一日だったようでございますね」

髪を流していたカリーナがすかさず反応します。

「ええ 毎日が楽しくて堪らないけれど 今日は格別に素晴らしい日だったわ」

「それは何よりでございます」


毎日レオ様とご一緒できるのですもの。素晴らしいのは当たり前なのです。それでも今日が特別なのは、ええ!初めてレオ様が剣を振るうお姿を見ることができたからよ!

ああ、目に焼き付いて離れません。鍛錬を持ちかけて下さったベンヤミン様には、どんなに感謝してもし足りないわ!



初めにレオ様はイクセル様と鍛錬を始められました。

イクセル様は、無理!、届かない!、もうおしまい!を連発しながらも、楽しそうに剣を交えていらっしゃるように見えました。お二人が鍛錬をご一緒なさったのは二年ぶりなのだそうです。

レオ様も口では厳しいことをおっしゃりながら、目はずっと笑っていらっしゃいました。イクセル様はそれに気がついておられたかしら?


続いてアレクシー兄様がイクセル様をしごいてやると追いかけ回し始め、レオ様とベンヤミン様の番になりました。

今年の剣術大会、私はソフィア様と観戦しておりましたので、ベンヤミン様の対戦は全て拝見しておりました。その為・・・ごめんなさい、同時刻のイクセル様の対戦は見逃してしまいました。その・・・次はイクセル様の試合を見ようと、対戦表を見に行った時には・・・既に・・・。


ええと。

ベンヤミン様は二年生ながら、三年生も退け三回戦まで進んでおられました。四回戦からは訓練場の中央で、一戦ずつ対戦が行われます。きっとベンヤミン様は四回戦へ進むのが目標なのですね。あっ少し違うわね・・・四回戦、全生徒が見守る中で勝利することが目標なのだと思います。その瞬間、勝利した方へ観戦者全員からの惜しみない賞賛が降り注ぎます。その光景は剣術を学んでおられる方皆様が憧れるものなのでしょう。だって私達から見ても、とても素敵ですもの。


レオ様が参加されないのが残念でたまりません。

でも、レオ様が剣術をお取りにならなかったのは、この大会の存在も大きな理由のひとつでしたから、それを口にしてはいけないわ。けれど、もしもレオ様が参加されていたら・・・考えるくらいはいいですよね。



「イクセルも真面目にやれば そこそこ筋はいいと思うんだけれどな」

隣で見学なさっているデニス様が苦笑を漏らしました。相変わらずイクセル様は、剣を両手に持って構えてはいるものの、ヒーヒー言いながら逃げ腰になっています。

「ふふ そうなのですね」


「初参加の剣術大会で余程懲りたようだな」

「まあ!どんな方と対戦なさったのですか?私ベンヤミン様の応援をしておりまして イクセル様の試合を見逃してしまったのです」


「ああ そうだったのか あーいや・・・見たものの方が少ないかもしれないぞ」

気になります。どういう意味なのでしょうか?

「デニス様?それは・・・」

デニス様は思い出し笑いなのでしょうか、クククッと笑って教えてくださいました。

「俺のクラスのやつに一瞬でやられてた 今年の優勝者さ」

「まあ!・・・」


「それこそ最悪の運だったな そいつは秋から騎士科だよ」

「あ・・・それは・・・ですね」

なんとお答えしたらよいものか、この場にイクセル様がいなくて助かりました。



デニス様とお話ししていたら、イクセル様がよれよれのお姿で戻って来られました。

「もう無理 相手は騎士科だよー?!レオお願い 僕と替わって!ベンヤミンと僕は休憩!」

ベンヤミン様は何やら物騒なことをおっしゃったように聞こえましたが、それでも仲良くイクセル様の隣に座り、お二人も暫く休憩をされることになったようです。



「本日二回目始めるとしますか 今朝のあれも試したいしな」

いよいよ兄様とレオ様が鍛錬を始められます。ドキドキするわ!

レオ様も兄様も今までとは目の色が違います。とても真剣な眼差し、初めて見る表情です。素敵・・・



「すげーな さっきまでとは音からして全然違う」

ベンヤミン様の呟きで、ようやく息を継いだ・・・息を止めていたことすら気がついていませんでした。


「アレクシーが圧されてるよ レオおかしいよ」

イクセル様が言いたいことは尤もです。ああ素敵・・・永遠に見ていられるわ。



いつも私に向けて下さる優しい眼差しも、大好きで特別で堪らなく嬉しいですが、この真剣な表情、射るような鋭い目つき、たまりません。カメラが欲しい、連写したい、等身大に引き延ばして邸中に飾りたいわ。



「レオはそこまで考えていたのか・・・」

デニス様が独り言のように呟かれました。

「デニス様?そこまでとは?」


「いや レオが弓術にしたのは間違いなく正しい選択だったよ 騎士団からも感謝されるべきことだ」

「レオ様がお強いから という意味でしょうか?」

「うん レオが今年の大会に参加していたら 間違いなく結果は違っていただろう 騎士科への推薦が決まったもの達がすっかり自信を無くすような結果にな」

デニス様と顔を見合わせましたが、お互い苦笑しか出てきませんでした。

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