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『お早うアレクシー』

「お早うレオ いい朝だな ひとまず一周してくるか?」

アレクシーから誘ってくれるとはありがたい。


『ああ 嬉しいな そろそろ走りたかったんだ』

「レオの好きなペースで走っていいぜ この邸の中は安全だ」

『アレクシーはどうするんだ?』

「ついて行けそうならついて行く 一度レオの本気の走りも見てみたいしな」

『そういうことなら遠慮なく』

部屋を出る前に身体はほぐしてある。準備は万全だ。


『それじゃ行くか』

「おう」

『・・・ちょっと待った 一周じゃ足りないな 二周していい?』

「・・・本気か?」

『多分二周くらいだと思う』

「何が?」

『一万五千歩 走る時の目安だ よし行こう』

早速数え始める。後はひたすら走るだけだ。




(あ 少し超えるか)

一万五千を数えたところはまだ庭の奥深いところだった。もう一度一から数え始める。二千に近くなってきたところでスタート地点に戻ってきた。そこでは既にアレクシーが剣を用意して待っていた。


『はぁー 少し 多かったな 一万 七千 くらいだった』

「参ったよ 降参だ」

半分呆れたような声を上げている。


「数分走って諦めたわ レオさ伝令にもなれるぜ あそこまで早いとは思わなかった」

『走ること だけは 得意だから な それなりに 自信は ある』

まだ息が乱れてはいるが、久しぶりの充実感を噛み締めていた。

「本気で騎士科来いよ この逸材を逃すのは惜しいわ」

『そうだな そろそろ 本気で考えるか』

いつものように勧誘されながら、渡された剣を受け取った。


『さあ 始めるか』

距離を取ろうとしたところで止められた。

「いやもう少し休んでからでいいぞ 俺は一周しかしてないからさ」

『平気だ いつになく調子がいい』

「くわー嫌になるね」

『若いからな』

「あー頭きた 今日は絶対先に一本取ってやる」

『お手柔らかに』


どれくらい打ち合っていたか。近くの扉が開き、卿がこちらへ向かってくるのが見えた。

『お早う 庭を借りているよ』

「お早うございます いやはや驚きました 私の知らぬ間に甥が一人増えていたのかと思いましたぞ

 殿下の師はヴィルホでしたな いや実に見事です」

「叔父上お早うございます まるでヴィル兄相手にしているようですよ」

「アレクシーお前も素晴らしいぞ 流石は兄上の息子だ

 さあ私に構わず続きを 暫く見学させてもらおう」


最初のうちは、見学などと言わず指導してもらいたいがな、と思いながら再開したのだが、そのうち卿が見ていることも忘れて打ち合いに没入していた。

(まただ)

アレクシーの隙をついて剣を弾き飛ばす。

「あー またやられた」

剣を拾いながら納得のいかない顔をしている。


『左足』

「うん?」

『今右肩を狙っていただろう その時いつも左足がほんの僅か逃げていることに気がついていたか?』

アレクシーは目を瞠り唖然としている。やはり気がついていなかったか。


「ありがとうレオ 今まで一度も指摘されたことがなかった」

『一瞬なんだ 私も気がついたのは最近だ』

「一番得意なのにどうしてレオにだけ全然決まらないのか ようやくわかってすっきりしたわ」

『余計なことを教えてしまったか』

言いながらニヤリと笑うと、アレクシーも笑い出す。

「おいおい 俺が何目指しているか知っててそれ言うか?」


「この辺にしておくか」

『そうだな』

そこで声を掛けられ、ようやく卿がいたことを思い出した。


「よく気がつかれましたな 驚きました」

『アレクシーとは毎日鍛錬しているからな それでたまたま気がついただけだよ』

「いえ 対峙しながらではなかなか気がつくものでもありますまい

 騎士科への勧誘は不要でしたな 即小隊長を任せられますぞ」

昇格した。

『第一騎士団に空きが出たら推薦をお願いするよ』


すると卿は呵々大笑、涙目になるほど笑い出した。

『第一騎士団志望とはますます貴重でございますな 歓迎いたしますぞ』


一度卿と別れてアレクシーと二人、部屋へ戻る。道すがら気になったことを聞いてみた。

『なあ 卿の言ってたあれ 本当なのか?』

「うん?どれのことだ?」

『騎士は第二騎士団志望のものが多いのか?』


「ああ!そうだな俺の感覚だと八対二か九対一で第二騎士団だな 第二は花形なんだぜ」

知らなかった。見習いで入った騎士が全て第一騎士団からスタートすることは聞いていたが、そんなにも差があるとは意外だ。普段第二の騎士としか接点がない私には、騎士団全体の内情に関しては知らない部分も多いのだろう。


『騎士科を出たものは皆第二騎士団に入るのか?』

「いやそうとも限らない 入団の時に割り振られるよ」

『そうか』

少しほっとした。とある顔がよぎったからだ。


「俺もレオの専属になりたいなんて言ってるけどさ 専属は本来エリート揃いの第二騎士団でも特に精鋭 トップクラスの実力のものが担うべきなんだ 新人の俺が任されることはありえないんだよ」


「それでも俺はなるつもりだけどな 俺を選べよ レオ」

『ああ アレクシー以外を指名するつもりはないさ』



部屋に戻り、そのまま汗を落としに風呂へ向かう。

(専任騎士 か・・・)

王太子叙任時に正式に任命するようにと言われている。専任はとりあえず四名は、とのことだ。

アレクシーを選ぶことは決めている。残りは三名。多分今それに近い存在でいる二名の騎士、ヨアヒムとゲイル。彼らに任せることになるのは間違いないだろう。ヴィルホが直々に推薦したもの達だ。アレクシーの言葉を借りるならばトップクラスの実力の持ち主なのだと思う。残る一名もヴィルホに任せよう。今回旅を共にしている騎士達、私の宮の専属になるもの達なら誰が来ても問題ない。皆いいやつばかりだ。



さて支度するか。フレッドがパルード街を見たいと言ったのは意外だったが、私も見てみたかった場所のひとつだ。どんな街が待っているのか期待しかないな。

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