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いよいよダールイベック領へ向かう日が近づいてきました。
以前ノシュール領へ伺った時は、アレクシー兄様がお休みに入るのを待ったためご一緒出来なかったことが残念でたまらなかったのです。でも今回は王都からレオ様や皆様と一緒に出発することが出来ます。待ち遠しいわ!
今回、私はどうしてもやりたいことが一つありました。
王都を出発した三日後は七月二十八日、レオ様のお誕生日の日です。
レオ様とお付き合いさせて頂いて四度目のお誕生日です。実は今までの三回のお誕生日、私は一度もお祝いさせてもらえませんでした。十歳のお誕生日の時からお送りしているカードは毎年続けておりますが、それだけです。
陛下と王妃殿下からお祝い頂くからかしら、最初はそう考えましたが、それも違うようです。
私の誕生日は毎年お祝いしてくださいます。プレゼントもご用意してくださるし、去年からは手作りのケーキも焼いてくださっています。今年もご入学されて大変お忙しい中、ご用意くださってとてもびっくりしました。『焼きたてを用意できなくてごめん』とおっしゃっていましたがとんでもないわ。今年はチーズケーキを焼いていただきました。嬉しかった・・・
なのにレオ様のお誕生日を一緒に過ごしたことは一度もないのです。
ですので今年は皆さんと一緒にお祝いしたい、そう思っておりました。まずはアレクシー兄様に相談をして、協力いただこうと思います。
「アレクシー兄様 本邸に三日後の夕方に着くことは難しいでしょうか」
「んー夏だから雨が降らなければ行けないこともないだろうけど なんで急ぐ必要あるんだ?」
「レオ様のお誕生日なのです お祝いしたいのですが せっかくなら道中の宿よりも本邸でお祝いしたいと思いまして」
「誕生日か!知らなかった そう言うことなら間に合わせてやりたいな」
「本邸にも連絡して準備をお願いしようと思います」
「わかった そういうことならロニーも仲間に引き入れた方がいいな」
「皆様にもご協力いただきたいと考えておりまして ご連絡差し上げてよいでしょうか」
「そうだな イクセルあたりが途中で騒ぎ出さないように 予め知らせておくのがいいな」
「よし 俺とスイーリの連名で全員に手紙出すわ フレッド様にはアンナから伝えるよう頼むか
スイーリは本邸に連絡するといい 俺より詳しいだろうからな」
「お祝いするのは初めてなので 私も詳しくはありませんが 連絡を取ってみます」
「えっそうなのか?」
「はい いつも必要ないっておっしゃって・・・一度もお祝いさせてもらえませんでした」
「そうなんだ まーなんとなくわかるわ」
「そうですか・・・」
兄様にはわかるのね。ちょっとだけ悔しいわ。
「楽しみだな レオの驚く顔がさ」
兄様と私の楽しみは少し違うみたいですが、こうしてこっそりと準備を進めていたのです。
三日目の朝、予定では今日の夕方には本邸に到着することになっています。最後の打ち合わせのために、私達は少しだけ早く朝食の席につきました。レオ様には内緒で。
「今日の休憩地は元々泊まる予定だった町だ ここから普通に進んだのでは七時間はかかる」
「その町から本邸まではどのくらいかかるの?」
「五時間・・・いや四時間半てところかな」
休みなしでも半日かかる距離です。本当ならレオ様がお立てになった計画通りに進むのが正解でしょう。
「それを何時間で到着させるんだ?」
「休憩地までは四時間 そこで馬を替えて本邸までは三時間弱で着くと言っている」
護衛の騎士の皆さん、そしてパルードの皆様も私達の計画に協力してくださいました。移動時間を予想して下さったのは小隊長さんです。
「本当に夕方には到着するのですね」
「ああ 着いてからのことは前に決めた通りによろしくな」
「皆荷物は大丈夫だな?」
王宮から出して頂いた馬車の他に、皆様個人の荷馬車を帯同させています。荷馬車だけは当初の予定通り一日かけて進むので、今夜のための荷だけこっそり別の馬車に積ませて頂くことにしたのです。
これで今出来る準備は全て終わりました。
『早いな・・・いや遅れて済まなかった』
レオ様が来られました。既に全員が揃っていることに驚かれたようです。
「俺達も来たばかりだよ 今日はさ 出発が早いって言うから急いで支度したんだ」
デニス様が何食わぬ顔でおっしゃいます。す・・凄いわ、私ならしどろもどろになってしまいそうです。皆様が協力して下さって良かった・・・
「急ごうぜ もう馬車の準備も終わってるらしいからな」
『そうなのか なんだか忙しないな』




