表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/445

[125]

「明日の昼だね わかったよー フレッド様に伝えておくね」

『伝書鳩に使って申し訳ないなイクセル よろしく頼むよ』

「何言ってるんだよー このくらい手伝いにもならないよー」



日増しに強くなっていく日差しが心地よい季節になった。昼休憩時はこうして数多くの生徒が日光浴を楽しむように中庭で過ごす。私は今ベンチに腰を下ろし、昨日オーケストラの練習に向かうイクセルに言伝を頼んだフレッドを待っているところだ。


「レオ 待たせちゃったかな」

専科の校舎からフレッドが早足に向かってきた。

『いや 今来たばかりだよ 呼び出して悪かったな 休日はフレッドも忙しいかと思ってさ』

「レオと会えて嬉しいよ 同じ学園へ通えば毎日会えると思っていたのに ここでは全く会えないからね」

『そうだな 専科は近くて遠いよ』


『時間もないから先に本題から話す

 アンナから私達が今年の夏ダールイベック領へ行く話は聞いているか?』

「うん 聞いたよ 視察を兼ねて回るそうだね」


『ああその予定だ 聞いていてよかった

 それでだフレッド ダールイベックの港まで一緒に行かないか?』

「いいのかい?僕としてはとても嬉しい話だ」

『フレッド達の卒業式の後も 私達には授業が残っているから数日待たせることになる それでも構わなければ是非同行してほしい』


「もちろん構わないよ ありがとうレオ アンナさんと王都でお別れだと思っていたのに 一緒に旅までさせてくれるのだね」

『先に港まで向かおうと思うんだ 皆でフレッドを見送らせてもらうよ』

「何よりの贈り物だ レオ感謝します」

『どういたしまして それまで寮に残るのもいいが よければうちに来ないか?』

パルードの王族であるフレッドも例外なく寮生活を送ってきた。護衛を含む使用人の部屋も用意されている特別室ではあるが。


「そうだね ここの寮は快適だけれど 皆が卒業してしまった後は少し寂しいだろうからね レオのところへ行こうかな」

『ああ 待っているよ 短い期間にはなるがゆっくり過ごして行ってほしい』

「レオと過ごせるのも嬉しいよ 当分会えないのだ 積もる話でもしよう」

『そうだな』





----------

「わぁ!それはアンナ様もお喜びになりますね」

放課後のカフェで昼休みの出来事をスイーリに伝える。


『ダールイベックの港まで一週間はかかるから 別々に向かうのは残念だと思っていたんだ』

「そうですね お二人はこの先何年も離れ離れなのですもの ますます良い旅にしなくてはなりませんね」

『そうだな ダールイベック領に関してはスイーリとアレクシーに頼ることも多い よろしく頼むよ』

「お任せください!と胸を張れると良かったのですが 領地に詳しくなくてお恥ずかしいです」

『それは気にしないで 初めてのものを皆で見るのも楽しみの一つだからね』


スイーリもアレクシーも王都育ちだ。本邸へは何度か戻っているだろうが、そこは広いダールイベック領だ。一度も訪れたことのない町もあるだろう。


『スイーリも領へ戻るのは久しぶりだろう?』

「はい 四年ぶりです」

『そんなになるのか』

四年・・・私と交際を始めてから一度も戻っていないと言うことか。


『スイーリはどこへ行ってみたい?』

「港が楽しみです 兄様達は行かれたことがあるのですが私は一度もなくて」

『そうだったのか 初めての土地へ一緒に行けるのは嬉しいな 私も港は楽しみだよ』

ノシュールの港でスイーリと会ったことを懐かしく思い出す。


「夏の海を見るのも初めてですので それも楽しみです」

『そうか そうだなー夏の海は美しいのだろうな』

以前デニスが夏の海はどこまでも青いのだと言っていた。ノシュールで見た冬の海も美しいと思ったが、その海の色は鉛のような色をしていた。青い空の下に広がる青い海、一面が青に埋め尽くされた世界か。



「海ほど開放感はありませんが 湖も美しいのですよ」

『ああ そうかダールイベックの本邸は湖に面しているのだったね』

「ええ とても素敵なところです」

『湖のほとりに佇む城か 早く見てみたい』

「王都のお城やノシュールのお城とはかなり趣が違いますが 私はとても好きです きっとレオ様にも気に入って頂けると思います」

スイーリがここまで強く勧めるのも珍しいことだ。間違いなく感嘆の景色が待っていることだろう。

ダールイベック訪問への期待が高まるのことを抑えることが出来そうになかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ