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レオ様からレノーイ様をご紹介いただいた帰りの馬車でのことです。

レオ様は御者に少し回り道をするよう告げていらっしゃいました。

『疲れているのに申し訳ない 今日話しておきたいことがあったのだが つい機会を逃してしまった』

とんでもないですレオ様。レオ様とご一緒して疲れるなんてことがあるはずありません。毎回回り道していただきたいくらいです。

とは言えませんので、ここは令嬢らしく・・・ですね。

「いいえレオ様 少しでも長くご一緒出来て嬉しいです」


どんなお話しでしょう。今日は色々な方に偶然お会いした日ではありましたが、レオ様と二人きりでお話しした時間もそれなりにありました。公園を歩きながら、それと昼食をいただいたとき。

つまり側に人がいては話しにくい話題ということですね。


『スイーリ 単刀直入に聞く 私が原因で辛い目に遭ったり嫌なことがあったりはしていないか?』

えっ?

「ええ 大丈夫です ありません」

『そうか 良かった・・・ないならいいんだ』

いつもレオ様は私のことをとても心配してくださっています。それが嬉しい反面申し訳なくも思ってしまいます。


「どうしてそのようなことをお考えに?」

『先日食堂で集まっていた時 ヘルミが言っただろう いい加減に自覚しろと あの時急に腑に落ちたんだ 何故私がここまで注目され続けるのかと』

「続きをお聞きしても?」


『うん 今までは私の立場がそうさせているのだと思っていた だがどうやら違うらしい・・・

 なんだか自分で言うのは少し恥ずかしいのだが・・・

 これは自分のことではなくレオと言う人間のことを私が説明していると思って聞いてほしい』

「わかりました」


『この世界の令嬢の多くは レオのことを最も好ましい異性と思うように定められているのではないか? その・・・定められているというのは 見えない力とでもいうか・・・物語の設定として・・・』


どうしてレオ様はこんなにもご自身のことを俯瞰して見ることができるのでしょう。何度でも驚いてしまいますが、これこそが天賦の才、レオ様だけが為せる業なのかもしれません。


『そして主人公だと言う少女はこれから先に登場すると言っていたね その為スイーリを排除しようとする力が働くのではないかと心配している とは言えスイーリは公爵令嬢だ 面と向かって厳しい言葉を吐けるものはいないだろう それでも嫌がらせが起こらないとは限らない

 スイーリを害する以外にも 私達を引き離そうとする力が今後働くこともあるかもしれない』


『それともう一つ ベンヤミンとイクセルも攻略対象というものだね?』

「そこまでお気づきに・・・!」

『不思議に思うことはあったんだ 侯爵家の令息で地方の学園を選ぶものが多いのは何故か しかし王都の学園にも多少は侯爵家の令息がいる だがその者たちがまるで注目されないのは何故だ 対象者ではないからなのではないか?見目も決して悪くはない上に高位貴族だ もっと注目されてよいはずだろう その・・・ヘルミ曰く学園は女子生徒の戦場だと言うから・・・』

最後は少し顔を赤らめ恥ずかしそうにされていました。ああ・・・レオ様の照れ顔は大好物です。


「レオ様のおっしゃる通りです 今学園に在籍しておられる侯爵令息の方に攻略対象はいません」

『スイーリだけではなくソフィアも気にかけてやらなければいけないな 尤もソフィアも侯爵家筆頭のボレーリン家だ そうそう卑劣なことを企てるようなものはいないとは思うが』


『スイーリとソフィアが同じクラスで良かった それにベンヤミンなら何も言わなくてもソフィアのことは守るだろう 私もスイーリのことは何があっても守る だからどんな小さなことでも不審なことがあったら私に隠さないと約束してほしい』

「ありがとうございますレオ様 必ずお伝えしますお約束します」


私にはレオ様がついている。もう無敵になった気分です。もうレオ様のお気持ちを信じられず不安でいたころの私ではありません。一緒に乗り越えて留学すると約束したのですから。


でもやはり、ひとつだけ納得できないことがあります。

「レオ様 皆さまがレオ様に惹かれ 夢中になってしまうのは設定ではないと思います」

『そうなのか?』

設定だから認めるしかないとお思いのレオ様には申し訳ありませんが、これだけは知っていただきたいわ。


「レオ様が魅力的すぎるからです 惹かれてしまうのも当然です」

目を見開いて呆気にとられたようなお顔をされたかと思うと、みるみる真っ赤になってしまわれました。

こんなに素敵で完璧なのに無自覚なのは最早罪だわ。レオ様はなんて罪深い・・・


『勘弁してくれ スイーリにそんなこと言われたら・・・くそ・・・』

窓の外を見てうんと小声でおっしゃいましたが、しっかり聞いてしまいました。



『スイーリが・・・スイーリだけが想ってくれたら他に誰も要らない』

窓の外を見たままでしたが、今度は私に聞かせるようにきっぱりとそう言って下さいました。



やはりゲームの中のレオ様と()()()レオ様は違うわ。全然違います。私のことを、私だけを思って下さるレオ様。ゲームのレオ様のことがあれほど大好きだったのに、今はそこまで魅力的に思えません。だってここはゲームの世界なんかじゃない、私もレオ様もこの世界で生きていて、ここだけが現実なのですもの。

現実のレオ様は何百倍も素敵だわ。

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