5. q鍋p φ(・ω`・ヾ)))ササゲに 酢をかけ さしすせそ ★
その魚浅瀬で差しました。
題名と続けて読む滑舌の練習です(笑)
挿絵挿入(2022/2/4)
アパートに戻ってきたおトキとリコ。
おトキはカーデガンを脱ぐと早速晩御飯の支度に取りかかる。
“ザラザラッ”
おトキが袋にカップを入れて中のものをすくい、ボウルに入れた。
(ん?穀物か?)
ボウルに入った白い小さな粒は 麦かと思ったが麦じゃない。
白くて固く、少し透き通っている。
(あれが『米』か!)
倫也がいつも食べている『おにぎり』
その粒と同じだ。
「なぁに、マイちゃん、見たいの?」
“キャン!”
「ふふふ、いいわよ。お米はこのカップで量ってね――」
おトキは軽量カップに米をもう一杯、通算二杯入れ、水を入れて軽くすすぐと、すぐに捨てた。
「はじめの二回くらいはすぐに水を捨てるの。お米は乾燥してて、はじめはお水をどんどん吸っちゃうから、なるべくキレイな水を吸わせたいでしょ?」
そして、水を捨てた状態で米を研ぐ。
「お米は『洗う』んじゃなく『研ぐ』のよ」
(研ぐ?包丁みたいにか?)
リコはヤマンバでしたからね。
包丁研ぐのは得意です。
ソフトボールを握るように広げた指を米に差し込み、シャカシャカと音がする程度のスピードと摩擦を起こしながら米をかき回すおトキ。
「お米とお米をこすり合わせて、不純物を取るの。今のお米は昔とは違って糠がほとんど残っていないから、優しくで大丈夫。ちょっとお米の表面に傷をつけることで 水が浸透しやすくなるのよ。やりすぎるとお米が割れちゃってベタついた炊き上がりになるから気をつけてね」
お米の旨みは表面にあるから、研ぎすぎはNG。
水が透明になるまで研いではイケマセン。
おトキはくるくると10回ほどやさしくかき混ぜたら、たっぷりの水ですすぎ、水を捨てる。
この工程を3回ほど繰り返した。
(ふむふむ、包丁を研ぐのと同じく、力の加減や水の馴染ませ方に注意するんじゃな)
「炊くときのお水はカップの回数と同じメモリに」
カップで米を二杯入れたから、メモリの下から二つ目まで水を入れ、『炊飯器』にセット、『炊飯』ボタンを押す。
赤いランプがついた。
「ご飯はこれでOK、一時間くらいで炊けるから、その間に肉じゃがを作るわね」
おトキは話し相手が出来て嬉しいようで、細かくリコに料理の説明をしてくれた。
料理の基本は『さしすせそ』
『さ』砂糖
砂糖は塩より分子が大きく浸透性が低いので、先に入れて味を馴染ませよう。
食材をやわらかくし、料理につやも出してくれますよ。加熱すると焼き色がついて香ばしい香りも広がります。
『し』塩
塩は砂糖より分子が小さく浸透性が高くなるため、先に入れてしまうと砂糖が馴染みにくくなってしまう。
だから砂糖より後に入れましょう。
塩には食材の水分を吸い取り、保存性を高める作用がる。
果物や野菜の色を良くするためにも使われますよ。
魚介類や肉類の身を引き締める効果もある。
『す』酢
酢は酸味が飛んでしまうので、後から入れましょう。
特に、煮物に入れたい場合は酸味を活かすために最後に入れるといいかも。
塩気と甘味を緩和してくれ、野菜の褐変を防ぎ、みょうがや紫キャベツなど赤色などの食材の色を鮮やかにする効果もあります。
殺菌作用もあるのです。
『せ』醤油
醤油は風味が飛んでしまうので、やっぱり後から入れましょう。
魚介や肉類の生臭さを消して風味を良くしてくれますよ。
殺菌や保存を助ける作用もあります。
『そ』味噌
味噌も風味が飛んでしまうので、これも後から。
風味をつけ、保存性を高めてくれます。
味噌にも魚介や肉類の生臭さを消し、風味を良くしてくれる作用があります。
(砂糖、塩、酢は知っておるが “ショウユ”と“ミソ”は初めてじゃな)
おトキの作ったわりしたも舐めてみる。
(このスープで芋を煮るのか、甘い芋、旨そうじゃ)
他にも、海の旨みを凝縮した“コンブダシ”に、魚の旨みの“アゴダシ”野菜のスープ“コンソメ”と、不思議な調味料があり、リコは片っぱしからなめてみた。
「好奇心旺盛ね~マイちゃんは。うちの子もそうやって色んなことに興味を持ち、口にいれたり、探したりしてたわ」
シンクの下の開き戸に潜ってゴソゴソしているリコに、おトキはジャガイモを剥きながら微笑む。
(おっ!砥石発見!研ぎたい、、包丁を研ぎたいのじゃ///)
リコは砥石をこっそり拝借した。
◇
“シャーコ、シャーコ、シャーコ”
倫也の部屋に帰ったリコは、包丁を取り出し、おトキの部屋から拝借してきた砥石で包丁を研ぐ。
“シャーコ、シャーコ、シャーコ”
(やはり、落ち着くのぉ~)
水を打ち、包丁の刃を研ぐと、己も研ぎ澄まされていくようだ。
(倫也は料理をせんから、ナマクラじゃ、可哀想に)
包丁がリコによって 輝きを取り戻し、本来の姿に戻ってゆく。
(さて、本領発揮じゃ。力を貸しとくれ)
リコは 包丁を手に集中すると、フンッ、と脚に力を入れた。
『脚力強化:スサノオ』
“ボコッ、ボコボコッ”
リコの足の筋肉が強化され、長く伸びる。
魔法ではない。
修行の成果。
己の内なる力を開放し、増幅させ、脚に集中、脚だけマッチョ化させたのだ。
(これで料理が出来る)
小さな狸のままだとシンクに届きません。
足だけマッチョ子狸。
かなりシュールな姿だが仕方なかろう。
リコは米を量り、研いで炊飯器にセット。
おトキがしたように赤丸のボタンを押し、米を炊く。
次は煮物だ。
ジャガイモはないから、焼こうと思っていた里芋を使おう。
(今なら奴の気持ちが分かるな)
昔々の物語り。
ある寒い日の夜、百姓の男の家にそれはそれは美しい女が 弱った風で男の家の前に現れた。
男は、女を家に招き入れ、暖かい汁と寝床を与える。
女はお礼にと、反物を織るという。
“機を織る姿を見てはいけません”
女はそう言って、部屋へと籠った。
美しい乙女の名は“お鶴”
男が助けた 鶴だった。
鶴女房、鶴の恩返し。
リコの言う“奴”とは “お鶴”のことだ。
(奴は『千手:カンノン』を使ったのじゃろ)
翼を千の手に変えて 千手観音さながら、パタン、パタンと機を織るお鶴。
これまた、かなりシュールだ。
(何故人は見ちゃイカンものを見たがるのか)
リコはしゅるしゅると里芋の皮をむく。
(わしらにはわしらの事情があるというのに)
冷蔵庫にあった、倫也のつまみ用の魚のねりもの(さつま揚げ)を半分に切る。
(あんな姿を見られたら、そりゃ姿を消すわ)
里芋とさつま揚げ、冷凍庫にあったインゲン豆を鍋に入れ、“さしすせそ”の順番で おトキの作ったわりしたと同じ味つけに。
コトコト、コトコト。
(ワシだってこんな姿、倫也にだけは見られとうない)
次はおトキの庭から拝借してきたネギで汁物を。
冷奴用の豆腐と、おトキが買った鳥挽き肉(←半分拝借)
レンジでチンして水切りした豆腐と鳥挽き肉を混ぜ合わせる。
コネコネ、コネコネ。
まざったら丸めて握り、楕円の団子を、ネギとコンブダシで下味をつけた汁の中にそっと浮かべる。
“倫也にだけは……”
(ん?)
リコははたと手を止めた。
(何で、倫也にだけなんじゃ?)
『夕鶴』『鶴女房』は独身男性
『鶴の恩返し』はおじいさんとおばあさん。
『夕鶴』は『おつう』さん。