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<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪女マリア~一度目の人生で娼婦扱いされた悪女は二度目の人生で王太子に溺愛される【短編】

作者: 八月朔宮 諒

連載を始める前のプロットの一部(のようなもの)です。

あえて端折った文章にしていますので、長めの“あらすじ”だとお考えください。

伏線は回収せずにそのままにしておきます。

あとがきまでお読みいただけると幸いです。


R15で良いと思うのですが、どうでしょうか。

この程度の表現でR18になりますか?



『娼婦の娘は娼婦』


そう言われて、十三歳の男爵令嬢マリアは第二王子に陵辱された。


王国の貴族子女が十三歳から通うことになる学園の、入学式が終わった後のできごとだった。

式典の行われた講堂から帰りの馬車が停車する待機所までの移動中、二学年上の第二王子が取り巻きの貴族令息三名を従えて、マリアを拘束したのだ。

全ての生徒が個人所有の馬車を使うと渋滞が発生する。

そのため、王族と公爵家以外の馬車は乗入れが禁止されていた。

学園所有の送迎用乗り合い馬車に、男爵令嬢がひとり乗っていなかったとしても、誰も気にはしない。

マリアは王家の馬車に乗せられ、第二王子の宮へ連れ込まれたのだ。


十三歳になりたてのマリアが、十五歳の令息四人に囲まれては逃げようがない。

ましてそこは第二王子の領域だ。

どれほど泣き叫んで抵抗しても、助けなど来るはずもなく。

第二王子に強引に純潔を散らされた後は、残りの三人に代わる代わる穢された。


娼婦の娘は娼婦───言い掛かりだった。

マリアの母は娼婦ではないし、勿論マリアも娼婦ではない。

ただ、マリアの母は、修道院で産まれた私生児であった。


この国の修道院は、王城に隣接しているものを除き、全てが娼館だ。

つまり、修道女はあらかた娼婦なのである。

王宮の修道院に入れなかった修道女は、娼婦になるしかないのだ。

例えそれが高位貴族の令嬢であったとしても。

マリアの母は、その修道院───娼館で産まれた少女だった。

しかしながら(からだ)を売ることなく清いまま成長し、十三歳で男爵の愛妾となりマリアが産まれた。


娼婦の娘は娼婦───ではないのだが、世間はそうは見なかったのだ。


その事件を皮切りに、マリアは誰にでも股を開く淫乱だと噂が拡がり、多くの貴族令息たちに淫らに玩ばれることとなる。

男爵家もその噂をどうすることもできず、三人いる義兄───男爵の正妻の息子たちも、マリアを被害者と主張することなく、助けることもしなかった。

入学してから一年間、マリアに安息の日は一日たりとも訪れず、いつしかマリアは全てを諦めてしまう。

敵は貴族令息だけではなかったから。


マリアを玩ぶ貴族令息らの婚約者や、彼らに想いを寄せる令嬢たちからは、蛇蝎のごとく憎まれ、蔑まれ、謀られる。

持ち物を奪われたり壊されたりは日常茶飯事、口撃や衣服を汚したり切り刻んだりという嫌がらせ、ついには足を引っ掻けたり突き飛ばしたりという身体攻撃まで加わった。

挙げ句の果てに、王太子妃候補の公爵令嬢を暗殺しようとしたという冤罪まで。


マリアが十四歳になった時、十八歳の王太子───第一王子は学園を卒業する年だった。

その卒業式の前日、王太子妃候補である公爵令嬢が暗殺されかけた。

卒業式では王太子の婚約が発表される、その直前というタイミングでの暗殺未遂。

勿論それはマリアの仕業ではなかったのだけれど、周到に用意された偽りの証拠は王太子のみならず、公爵令嬢の血縁である国王夫妻の怒りを買うのには充分だった。

卒業式の舞台で王家に断罪されたマリアは、反論することすら許されず、不条理な形だけの簡易裁判の後に断頭台の露と消えた。




★★★★★




…はずだったが、目覚めたマリアは七歳の頃に戻っていた。


「嫌ァァァァァ…っ!!!」


断末魔の叫びと共に、カッと目を見開く。

だが実際にはその首は繋がっており、マリアは寝台の上に横たわっていただけだった。


『…夢…?』


否、あんなにも鮮明な夢など有り得ない。

じっとりと汗ばんだ顔を、その小さな手で覆った。

顔を覆う手の小ささに驚き、胸や腰に触れてみて確信する。


『躰が、縮んでいる…?』


ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、マリアは思考を巡らせた。

この躰の小ささで、この思考は年齢に伴っていない。

やはり今のは夢ではなく、自分は二度目の人生に目覚めたのではないかと。


「マリア?」


控え目な叩扉(ノック)と共に、若い女性の声がかかる。

二十代前半くらいに見える美しい女性―――母のオリガだ。

慌てて寝台に駆け寄ったオリガは、マリアの額に手巾(ハンカチ)を充て、その汗を拭った。


「どうしたの?」


心配そうに見つめる瞳に、幼いマリアが映る。


「あ…。…怖い…夢を見たの…」


幼い頃の口調を思い出しながら、マリアはオリガに縋る様な視線を向けた。

今、自分は何歳なのだろう。


「あらあら。お誕生日を迎えてひとつお姉さんになったのかと思ったのだけれど、まだまだ私の可愛いマリアのままなのね」


そう言ってマリアを抱き起こしたオリガは、その温かく豊かな胸に最愛の娘を(いだ)いた。


「だって、本当に怖い夢だったのよ。きっとお母さまでも泣いてしまうと思うわ」


「まあ。―――でも大丈夫よ。そんな怖いことは起こらないわ」


涙に濡れたマリアの頬をそっと拭い、オリガは使用人に合図を送る。

音もなく現れた数人の若い女性が、マリアのための身支度の準備を始めた。


「さあさあ、今日は貴女(あなた)の七回目の誕生日のお祝いよ。お父さまもタチアナさまも、盛大に祝ってくださるわ」


母の口から、“タチアナ”という名が出たことに驚く。

幼い頃は気にしていなかったけれど、一度目の人生を終えたマリアには不思議でならなかった。


母は、リューリク男爵の愛妾だ。

そして、彼の正妻の名が、タチアナ。

そもそも愛妾が正妻と同じ屋敷内にいることもおかしいし、マリアを男爵令嬢として義兄たちと同じように扱うのもおかしい。

妾の子を『盛大に祝ってくださる』など、普通なら有り得ないことなのだ。


男爵夫人タチアナに、思うところがない訳ではないだろう。

オリガやマリアに丁寧に接してはくれるものの、にこやかではないしそこに親しみは感じられない。

当たり前だ。

けれど、若くしてリューリク家に入ったオリガにも、この家で生まれたマリアにも、貴族としての教育と躾を惜しみなく与えてくれた。

一度目の人生の時もそれは同じで、マリアが穢れた立場に堕とされてからは冷たい表情になってしまったけれど、邪険にされることも虐待されることもなかった。


毎年の誕生日も、義兄たちに劣ることのない規模で、祝ってくれている。


『そうだわ。確かこの、七回目の誕生日に、私は…』


一度目の人生の、辛い記憶の中に埋もれてしまっていた、幼い頃の微かな想い出。


あの時マリアは、恋をした。

一目惚れだった。


いち男爵家の愛妾の娘の誕生日に、何故かお忍びで王太子である第一王子が現れたのだ。


お茶会への参加すら未経験のマリアの誕生日。

まだ他家との接触は早いだろうとの判断で、お祝い自体は男爵家とその使用人たちだけで行われる予定だった。


王太子が現れたのは、たまたまだったのか意図したものだったのか、それとも王太子の気紛れだったのかは分からない。

十一歳の王太子の複数いる側近候補の中で、マリアの義兄である男爵家嫡男のヴァシーリーが、爵位が低いにも拘らずいちばん王家の信頼を得ていたなど、その時は知る(よし)もなかったのだから。


そして。

予想通り、二度目の人生でも王太子は現れた。

マリアの誕生日だとは知らず、単に同級で仲良しのヴァシーリーの所へお忍びで遊びに来たのだと。


男爵家の使用人は優秀だ。

というか、王太子の突飛な言動に慣れているからか、突然の訪問にも全く動じない。

王太子に付き従っている“影”から、こちらに向かうと暗に連絡があったからにしろ、それでも素早い対応だ。

(まず)いタイミングで来てしまったかな、と口には出さずに眉を下げる王太子。

だが、家令は颯爽と、新たに追加した席に王太子を案内する。


「このような私的な祝いの場に、王太子殿下にご列席賜るなど烏滸(おこ)がましいことだとは存じますが…」


どうぞごゆるりとお楽しみくださいと続けたリューリク男爵の言葉に、王太子は満足そうに目を細めた。


「きみが、マリア?」


「はい」


習いたての最敬礼(カーテシー)はぎこちないもののはずだった。

けれど、人生二度目のマリアにとっては造作もないことで、見事に披露された礼に王太子は微笑する。

母親譲りの麗しい顔立ちのマリアを、王太子は気に入ったようだった。


「誕生日おめでとう」


「ありがとうございます」


子どもらしい無邪気さを装って接するマリアに、王太子もまた子どもらしく、けれども既に得られた王族の権威は損なわない程度の高貴さで接する。


そういえばそうであった、とマリアは記憶を辿った。

初対面のマリアと王太子は、決して悪い関係ではない。

この頃はまだ、“娼婦”などと不名誉な言葉をぶつける(やから)はいなかったから。


夢見る乙女然とした思考で王太子への恋心を育んだとしても、何も悪くはない。

その出自から、決して王太子妃になどなれはしないと分かっていても、傍仕えはできるのではないかと淡い期待を抱いてしまうのは仕方のないことだ。

修道院出身の母が男爵の愛妾になれたように、名前だけでも男爵令嬢である自分が(はべ)ることは、不可能ではないのではないかと。

側室など望まない。

侍女で良い。

ただ、王太子の傍にいたい。

一度目の人生でまだ清らかだった頃のマリアの願いは、二度目の人生でもまた、マリアに(ほの)かな期待を(いだ)かせていた。




★★★★★




気にしてみると、王太子のリューリク男爵邸への訪問は、頻度が高い。

マリアが十三歳になるその年まで、王太子は頻繁にお忍びで訪問をしていた。

大抵は嫡男ヴァシーリーと何やら難しい話をしていたが、時には他の兄弟やマリアまで、他愛のない会話に加わることを許された。




マリアにとって、忌まわしい記憶であるあの日が近付く。

学園の入学式だ。

同じ轍は二度と踏むまいと、策は(ろう)しているけれど、恐らくどうにもできない日は来る。

せめて処刑されることだけは避けたい。

例え躰を穢されたとしても、冤罪だけは食い止めたかった。


その頃には既にお茶会等で他家との交流もあり、マリアの出自は社交界で知られていた。

デビュタントはまだ先だから、本格的な大人の夜会で奇異の目に晒されることはないけれど、子ども故の残忍さで直接的な誹謗中傷の表現が用いられる。


『娼婦の娘は娼婦』


高位貴族の嗜みからか、面と向かって直接攻撃してくることはないものの、辛うじて聞こえる程度の声量で、対象を(ぼか)して陰口を叩く。

陰湿極まりなかった。


そしてその中心にいるのは、例の第二王子。

不思議なことに、王太子である第一()王子がいる席ではそんな言葉は口にしない。

意図してやっていることは明らかだった。


陰口の原因であるマリアの母オリガは、善くも悪くも少女のように純粋なまま母親になったような人だった。

その立場上、社交界に出ることなく、男爵家でひっそりと生活をしている。

男爵夫人タチアナの教育の賜物なのか、淑女の鑑のように穏やかで、朗らかで、穢れない。

刺繍を趣味とし、時折義兄たちのダンスレッスンの相手を務める。

そんな彼女の耳に、この心無い言葉が届かなくて良かったと、つくづくマリアは思うのだ。

人を疑うことのない清らかなオリガは、こんな言葉で最愛の娘マリアが傷付けられていると知ったら、きっと激しく自分を責め、程度によっては気が触れてしまうだろう。

一度目の人生の時、穢れてしまったマリアの状態を、男爵家の人々はオリガにだけは気取られないようにしていた。

それが正しいと、マリアも思っている。

だから、今度の人生も、オリガにだけは気付かれてはならない。




入学を一週間後に控えたある夜。

眠れない躰を持て余し、マリアは庭を彷徨(さまよ)っていた。

月が美しい夜。

穢れない月光を浴びて、マリアの心は()いでゆく。


「いつか、王太子殿下に想いを伝えられれば良いのだけれど…」


ため息と共に呟いた言葉は、予想外の相手に届いてしまった。


「それって、どんな想い?」


突然現れた想い人に、マリアは心臓が飛び出しそうなほど驚く。


「で…殿下…?」


今日も、お忍びでいらしていたのか。


寝巻の上に軽い羽織のみの姿のマリアは、羞恥に頬を染める。

はしたない、と(なじ)られるだろうか。

膨らみ始めた小さな胸を無意識に隠すように、マリアは自らの躰をその細い腕で抱いた。


「期待、してしまうのだけれど」


穏やかな王太子の声が、夜風と共にマリアの耳を(くすぐ)る。

差し出された手に導かれ、マリアは王太子と共に庭の四阿(あずまや)に腰を下ろした。

マリアからの告白を促すように、王太子はその視線をマリアの瞳へと固定する。


「お慕い…しています…」


消え入るような声で吐露(とろ)すると、王太子は満足そうに微笑んだ後、悪戯(いたずら)っぽく瞳を揺らした。


「誰を?」


解っているだろうに、その名を催促する。


「王太子殿下を、お慕いしています」


今度はきっちりと視線を合わせ、強い意志で以って告白をした。

大輪の華のように微笑んだ王太子は、ぎゅうっと力強くマリアを抱きしめる。

咄嗟のことに、マリアの思考は停止してしまった。


「嬉しい」


今度はダイレクトに耳に届いた王太子の言葉に、マリアはかあっと全身が(ほて)るのを感じる。

王太子は、知っているのだろうか。

マリアが社交界でどのように言われているのかを。


「殿下…」


そっと王太子の腕の中から抜け出ると、マリアは探るように言葉を紡いだ。


「殿下…は、私が社交界でどのように言われているか、ご存じですか」


気付いているはずがない。

知っていたなら、嬉しいなどという言葉は出るはずがないのだから。


「社交界で?」


案の定、不思議そうな声で応える王太子に、マリアは自嘲しながら告げた。


「娼婦の娘は娼婦」


ひゅっ…と、王太子が息を呑む音が聞こえる。

淑女が口にする言葉ではない。

けれど、廻り回って他の誰かの口から耳にするより、ここで自分から告げた方が良い。

そう思ったマリアは、じっと王太子の瞳を捉えた。


「誰が…そのようなことを…」


「不敬罪に当たるので、私の口からは申し上げられません」


暫く潜考したのちに、王太子は(おもむろ)に口を開いた。


第二()王子か」


今度はマリアが息を呑む。

肯定してはいけない。

肯定してしまえば、例えそれが真実であったとしても不敬罪になる。


王太子もそれ以上は詮索せず、まるで独り言を呟いた後のように、何事もなかったかのように微笑んだ。


「弟がね、どうにもきみに執着しているようで」


「…え?」


「きみを婚約者にしたいなどと言うものだから、何か裏があるのではないかと思ってはいたのだ」


マリアには、さっぱり分からなかった。

一度目の人生では、マリアを穢し、傷付け、直接的ではないにしろ、死に追いやった。

その第二王子が、何故。


「私は…」


言い淀んだマリアに、王太子は優しく問いかける。


「私に、どうして欲しい?」


その瞳は清らかで、真摯で、決してマリアを傷付けることなどなさそうだった。


「怖いのです」


マリアは懸念していることを素直に口にする。


「怖い?」


「お茶会の場ですら、聞こえよがしに口撃されます。学園に入れば、大人の目の届かないところで何をされるか分かりません。いつか、“娼婦”と言い募られて(おぞ)ましいことをされるような気がしてならないのです」


概ね事実だ。

一度目の人生では、いつか、どころか、入学したその日の内に穢された。

そしてきっと、今度の人生でも、遅かれ早かれ結果は一緒だ。

それならば。

どうせいつか不本意な相手に穢される躰なら、想い人に純潔を捧げたい。


「マリア…」


震える躰を抱きしめて、マリアは絞り出すように懇願した。


「王太子殿下。どうか、私を、一夜(ひとよ)の慰みにしてください」


「マリア?!」


「はしたない、と。やはり“娼婦”だと、お思いでしょうか」


マリアは涙を湛えた瞳で、王太子を見詰めた。


「二度と縋ることは致しません。どうか、やがて心無い男に穢される哀れな娘にお慈悲をください。私の純潔を、王太子殿下に捧げたいのです」


堪え切れずに、一粒、涙が頬を伝う。

月夜に照らされたマリアの泣き顔は、切迫感が募っていた。


「どうか…」


「マリア」


薄く開かれたマリアの唇に、王太子のそれが触れる。

しっとりと重なった唇は、けれども少しの余韻を残してすぐに離れていった。


「殿…下…」


王太子はマリアの肩に手を添え、そっと立たせる。

エスコートするように歩を促せば、それは確実に別れの合図で。


「もう遅い。冷えてきたから屋敷に戻ろう」


その言葉に拒絶を感じて、マリアは絶望した。


『もう、おしまいだ。きっと軽蔑された。なんて淫らな女だろう、と』


それでも、初めてのくちづけ(ファーストキス)は賜ったし、部屋まではエスコートをしてくれる。

恐らくこれが、王太子なりの優しさなのだろう。


『これで良い。もう、どうなっても良い。この想い出だけを頼りに、生きてゆこう。前の時と同じ未来しかないなら、躰を穢されそうになったその時点で、純潔を守って命を絶とう。冤罪で処刑されるくらいなら、その方がマシだ』


マリアは自室の前で立ち止まる。

お礼を言って失礼しようと王太子を見上げると、その瞳は慈愛に満ちているように見えた。

扉を開けてくれるところまで紳士的だ。


けれど、何故か王太子はそのままマリアを伴って部屋に入り、そして扉を閉めてしまった。


「え…?」


「なんだい?」


「あの…」


そのままマリアの手を取り寝台まで(いざな)った王太子は、ほんのりと明るさを落とした燈火(ランプ)(もと)で妖艶に微笑んだ。


「純潔を、捧げてくれるのだろう?」


夢なら、醒めないで欲しい。

望んだ現実が、ここにある。




一度目の人生で経験した激しい痛み、悍ましい不快さ、死んだ方がマシなくらいの苦しみ、その全てが、マリアの記憶からかき消された。

思い出そうにも思い出せない、その方が良い。

マリアの中で、過去の記憶は綺麗さっぱり消え失せた。


あるのはただ、愛する王太子の温もりだけ。

狂おしい程に愛おしい存在。


初めての感覚。

気恥ずかしいくすぐったさ、幸せな痛み、温かい圧迫感、そしてこれ以上ないほどの快感。

温かくて、優しい。

どうして王太子が、それを与えてくれるのかは分からない。

たった一夜、今宵だけの戯れで良い。

ただそれだけで、きっとマリアは救われる。


薄れゆく意識の中で、マリアははっきりと、悦楽の表情を浮かべていた。



★★★★★



「おやすみ、私の可愛いマリア」


王太子の全てを受け入れて力尽きたマリアは、自らの寝台の上で幸せそうに意識を手放している。


その額に軽く唇を落とし、王太子は満足そうにその華の容貌(かんばせ)(ほころ)ばせた。


今度(二度目)こそ、絶対に私が守ってみせるから」



―――何も心配せずに、私の傍で笑っていて。




【おしまい】





後日、女性向け18禁作品として連載投稿予定です。

各種行為自体をそれなりに加筆いたします。

全二十話くらいを目標としています。

(増加する可能性大)

第一の人生を三話くらいに抑える予定ですが、陵辱部分もそれなりに書くつもりですので苦手な方にはすみません。

第二の人生から(四話以降)は王太子のマリア溺愛しかない感じになります。


今後の予定

・時間を巻き戻したのは誰か

・王太子の想い

・義兄の仕事

・男爵夫人の想い

・男爵夫人実家の立ち位置

・第二の人生での学園生活

・実母と実祖母の生い立ちと正体

・王妃と第二王子の本質

・ざまぁになるのかならないか

・王太子妃候補である公爵令嬢の想い

・マリアの資質

・王太子妃は誰になるのか


このような部分並びに細かい描写を加筆修正して連載をしてみようと思います。

ご都合主義でなんとなくハッピーエンドとなる予定です。

何か気になる部分等ありましたらお知らせ願います。



誤字などありましたら教えてください。

ポイントなどを頂けると喜びます。

更新時間について、ご希望がありましたらお知らせください。


感想や評価を頂けると励みになります。

宜しくお願い致します★

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あまりネタバレしないでください。
[一言] これは期待! 第二王子の思惑も知りたい所ですねー。 前世でも今世でも執着はある様なので…。 本編楽しみにしております!
感想一覧
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