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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ハラキリ☆ほしくず☆パラダイス。

頭空っぽな感じで、よろしくどうぞ。

 とある世界。

 細々とした争いなどはあるも、概ね平和を維持していた。

 そこに『魔王(ダークロード)』なるものが現れた。


 その魔王なるものは暴虐にして、残忍。

 魔王と手駒の軍団に、世界は困りに困った!!


 困りに困った世界に、その世界を管理する存在もまた大変に困り、諦めの良さに定評のある世界の管理者は自分を困らせる者には更に困らせる存在をぶつけて困らせよう!


 という困った思考の元、己を困らせる困ったさんに困ったちゃんをぶつける事にしたのである!



 ──白い靄のかかる、とある不思議空間にて──



 『これなら、この者達なら、あのにっくき魔王軍団を討ち滅ぼせる! ……筈』



 突如現れては今も絶賛世界を困らせ中の魔王軍団。

 その軍は苛烈にして、狡猾残忍。

 今日も今日とて、数十もの村を街を国を困らせ、我らが世界の管理者は困っている。

 そんな困った管理者は一人、不思議空間の中空に写し出される幾多ものモニターの一つに目を付ける。


 その画面には──


 

 ──我らモノノフ!我らブシドー!影に生まれ!影に消え!死して屍拾う者なし!──


 困った世界の管理者が治める世界とはまた別の世界。


 画面越しには、火災が起きたらそれはもう大層景気良く燃えに燃え広がりそうな木造建築家屋の中庭──枯山水が敷かれ、松や杉に桜に似た樹木が錦鯉的なナニカの棲む池を囲い、鹿威し的な物がカポーンだ──で、絶唱する集団が映っていた。



 その木造建築家屋の屋根には金箔が貼られた瓦っぽいものが敷き詰められ──雪が積もったらどうするのだろうか。その疑問にはウチコワシと呼ばれる技法にて何とかするらしい──木造建築家屋、そして、ぐるりと取り囲む塀には漆塗り的なツヤツヤ感。

その壁には至る所にランカンボリと呼ばれる彫刻──竜やら鯉やらゴブリンやら──が細やかに彫られていた。


 その世界ではドージョーと呼ばれる、健全なる魂は健全なる体に宿るというのなら、健全と呼ばれない体はどうなのか?

 そして、健全なる魂の在り方とは何なのか?

 そんな事はともかく、とりあえず体を動かましょう。

といった青少年の育成に励むNPO法人が運営する施設である。 


 

『キィエエエェェェ!!』

『スシッ!』

『テンプラ!!』

『ぐっ!? まだまだ! フジヤマアァ!!』



 金属が激しく打つかり合う音、鈍い打撲音、響く絶唱、飛び散る若獅子達の血と汗。あと耳とか腕とか。


 また一人、また一人と倒れて往くが、それでも若獅子達は止まらない。

 

 呼吸を荒げ絶唱しながらも、互いに刀剣の類いで打ち合う若獅子達。

 その手に握られる刀剣の類いは、刃引き──要は切れない加工の安心設計。当たったら勿論痛い──がされている訳でもなく、当たれば容易く肉を裂き、それは骨を断ち、当然のこと痛い──ギィヤアァ!──困ったものだ。


 「それまで」


 中庭で若獅子達の研鑽に励む姿を、縁側に腰掛けて眺める老人が静かに声を上げる。


 その声に、耳や腕を切り飛ばしても構わず鍛練に励んでいた荒ぶる若獅子の動きがぴたりと止まる。


 呼吸を整え、乱れたちょんまげにも打撲痕や失われた部位に気を留めることもなく、若獅子達は誰彼言う事もなく列を整え、老人を前に、まさに直立不動。


 その列の一番右側に並ぶ者が声を張り上げる。


 「先生に礼!」

 『『『オブギョーゴザイマシタ!』』』


 「うむ」


 若獅子達が複雑な形に指を組み頭を下げると、おもむろに頷く老人。

 すると先程までの阿修羅闘争の空気は霧散し、和やかアットホーム。


 中庭のそこら辺に千切れた物が飛び散っているが、老人も飛び散らさせた若獅子達も然して気にする事なく、朗らかに談笑を交わしている。



「いやぁ、先生の仰る真のサムライドーにはまだまだ至らん」

「何を言う。 ソレガシこそブシ(チカラ)を……ツッ……」

「ははは! その傷、先ずは漢方とお茶を飲むが良かろう」

「かたじけない……ゲイシャイリマス」

「HAHAHA」



 

 そんな和やかな空気流れるドージョーに向かって、突如として現れる鉄の巨獣。

 真っ黒な雨雲に迸る雷鳴にも似たエキゾーストノートを轟かせ、舗装もされていない大地をゴム製の爪が痛め付ける。


 畑仕事を終えて、腰を伸ばした農民が、気付いて震えて指差し叫ぶ。



 「転生トラックだ!!」



 ドージョーに向かって、走る毎にスピードを加速、暴風と轟音を纏う鉄の巨獣。

 衝突──

 


 こうして異世界に召喚されたドージョーの面々は、飽くなき研鑽とは名ばかりの闘争に明け暮れ、

 魔王軍もついでに管理者の住人達も徐々に数を減らし、

村が町が自治体が政府が、世界の管理者が、どれだけの対策をしようにも



 「その戦いぶり! 敵ながら誠にアッパレ!(お腹カッサバー/この作品は全年齢対象です)」


 「すわ! お見事! まっことセッシャの完敗にて、乾杯!(ハラキリぶしゃー!/この作品は全年齢対象です)」


 「勝った! とにかくハラをキリ申す! (ゾウモツどろり。更にザクッ! ぶしゃー!/この作品は全年齢対象です)」



 魔王軍、ついでに現地民と勝手に戦い、勝手に散る。

 そしてドージョーの面々──モノノフ──が若獅子達が命を散らす度、何故か唐突に流れる歓喜の歌!勿論、ドイツ語だ!!



 見よ! 倒れた筈のモノノフが若獅子達が!

倒れる度により強く!雄々しく!


 見よ! 斬られた筈のモノノフが若獅子達が!

斬られれば斬られる程に、ハラキリする度に数を増やして往くではないか!!

 まさに掟破り!炎の逆転ファイター!!




 本来、人とは、生き物は死んだ者は帰ってこない。

 それなのに、何故、このような事が起こるのか。


 チートなどの存在しない──もしあったなら管理者は困ってなかった──この世界で、どうして、ヤツラだけがモノノフ達だけが、このような存在となったのか。



 賢明なる読者諸君ならばお気付きのことだろう。

 それは彼らの常軌を逸した鍛練は勿論の事。

 漢方と謎のお茶によるものだったのだ。

 しっかりと用量用法を守って服用しているのだから、この強さも当然である。


 勿論、この世界の管理者は知らない。

 何故なら、作り方も用量も用法も知らないのだから。

 



 彼らを召喚した管理者としては、魔王という人の(ことわり)から離れた超越的存在に対して、人でありながら人を越えた存在をぶつけて何とかしよう。


 何とかならないまでも、せめて対応策を考える時間だけでも稼げないものかと思っていたのだが、

勝っても負けても勝手に腹を切りに切って、しかも相応以上の戦果を上げて散って往き、そのスピリットは受け継がれ、また散り往く。


 何故か再び桜の如くにパッと咲き、風に吹き流されて散る様は受け継がれる度に強さを増し、数も増し、散り際の良さがネズミ算。



 そうして訪れる、世界はハラキリパラダイス。


 

 ──もう、この世界はダメだ──

 魔王軍団も現地民も増殖するモノノフに蹂躙される世界を虚ろな目で眺める哀れな管理者。


 どうにでもなれ! と破れかぶれとなった困った管理者は、掟を破ってまでも、

他の世界からチーレム転生者やスキル持ち、冒険者ギルドなどを引っ張ってぶつけてみたものの、あっという間にドージョーの面々に食い散らかされてしまった。



 困難に対して、考え無しの浅慮が招いた管理者自身の自業自得。

 嗚呼、この世界はハラキリに埋め付くされて終わってしまうのか。



 突如として、管理者が存在する不思議空間に轟く地響きにも似たエキゾーストノート。


 不思議空間に漂う白い靄を突き破り姿を現したのは、勝手に利用された事に怒りし巨獣が遣わした、恐ろしき尖兵。



 不思議空間にて管理者の不手際に追われる下働きが、気付いて震えて指差し叫ぶ。



 「トラックだ!」

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