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4.量産のためにサイクルを回すことのススメ 前半

文字数が他の話の2倍と大作になってしまっていましたため、前半後半に分けました。

(気合を入れすぎてしまったようで申し訳ありません)


なお、内容変更はありません。


ご迷惑をおかけいたしますがご理解の程お願いいたします。

 シンバと2人で軽口をたたきながら、砦をまわり、兵士達の様子を見ながら、作戦の最終確認をしていたら、いよいよ敵の飛竜騎士部隊が遠くの空に豆粒のように見えてきた。


 こんな時に役立つ「小役人のススメ」の一説を思い出し、自分のやるべき次の行動に移る。


確か、「変革は、まずは人心の士気を高め、次に不利を真に伝えるべし。自らの責を意識させることで必ずや遂行されん」という内容だった。


 つまり、危機の際は、味方の士気を高め、次に現状を包み隠さず伝える。各自に、危機を乗り越えるために、できることを意識させれば、危機を必ず乗り越えられる、という内容だ。






 ということで、


 「さて、前線指揮官としての仕事をするか。」

 

 独り言のようにつぶやく。砦の天辺にシンバと護衛2名とともに戻る。


 大きく息を吸い、ありったけの声を張る。


「聞け!アーチャー家及びその親類筋の勇敢な兵士たちよ。我らは、この一戦で、プライセン子爵領の家族・領民を守り切らねばならぬ。その我らは先兵である。

 しかし、先兵とは、捨て石なのか?我らの命は軽いものなのか?答えは否。

 私、プライセン子爵家アルフレッド・プライセンの名において、諸君らの栄えある勝利と名誉を約束しよう。プライセン子爵家は、武名の名の通った貴族家である。そして、シンバ・アーチャーは、武功の誉れ高い指揮官であり、私は、この守役に全幅の信頼を寄せている。

 敵の兵力は、確かに我らの5倍である。しかし、我らは短時間ながら、周到に準備をした。策もすでに動いている。この堅牢な砦は50年もの間、子爵領を守ってきている。今回も我らの盾になってくれるであろう。

 この砦を死守し、敵を討ち果たし、押し返す。諸君らの命を私に預けてほしい。我々は必ず勝つ!我を信じよ!」


 250名の兵士は、その若い勢いのある声に共鳴して、叫び声を上げる。兵士たちは鼓舞され、臨戦態勢に入った。

 シンバも興奮した声を上げた。


「お見事です。とても初陣とは思えません。これで味方は鼓舞され、普段の倍は動けます」


 大丈夫だ。作戦はうまくいく。


 敵が来る方面からの風から嫌なニオイは全くしなかったので、確信めいたものがあった。

 ただ、いくら魔王の力があるからと言っても、初陣だ。

 やっぱり緊張しないはずがない。


 『安心するがよいぞ。主殿よ。何があっても、主殿は死なん。我が守っておるでな。』


 エクスの声がたくましく聞こえる。


 すぐに飛竜騎士団との戦闘がはじまった。

 

 エクスが急ぎ開発した、飛竜の動きをとめる警戒叫音の魔法を左目から展開する。注文通り、エクスは人の耳には聞こえないよう開発してくれた。


 先駆けしてきた飛竜騎士一騎の動きが鈍ったのを確認できた。


 動きを単調になった先頭の飛竜が、それでも砦に炎を吐こうとして口を開いた。その口をめがけて、味方の矢が一直線に飛んでいく。口が矢を吸い込み、そして矢の先端が首筋にある延髄を突き抜けたのが遠目に目視できた。


 ほぼ同時に、飛竜に跨った騎士の首にも別の矢が刺さり、飛竜、騎士が一緒に海岸の岩肌に墜落していく。後続の飛竜と騎乗している騎士達にも、次々に矢が吸い込まれるように突き刺さり、墜落していく。

 

 予想通り、先駆けした飛竜と騎士が墜落した後、ただでさえ、警戒叫音の魔法のせいで動きが鈍っている後続の飛竜騎士団は統制を失い、空全体にバラバラに散らばってしまった。そこに味方の弓隊が一騎ずつ狙いを定めて、矢が射かけられていく。


 俺は、味方の放った矢に3つの付与魔法と魔法の痕跡を隠す隠匿魔法を重ね掛けし続ける。

 

 シンバの「放て!」という野太い声を聞きながら、冷静に戦況をみてみると、矢への回転による威力増強の付与魔法、急所(延髄)へ追尾していく付与魔法、矢じりへ高温加熱の付与魔法の組み合わせの破壊力は、我ながらすごいと思った。実践で使ったのは初めてだけど。

 

 でも、これだけ命中率が高く、飛竜の堅い皮膚も簡単に突き破る威力となると、誰かが付与魔法で支援していると思うかもしれない。そのために、策を用いて、敵を油断させ、早々に飛竜隊の指揮官を殺り、統率をなくし、矢を当てやすいように準備していたと公言してごまかすつもりだが、、、、。

 

 うーん。最悪、育ての親同然の乳母と守役の率いるアーチャー家の兵士たちが大半だから、なんとか口止めできるだろう。


 飛竜騎士団を粗方殲滅できたため、海面へ視点を移す。海面では、魔法師団に使役されたオーク隊と歩兵隊が大型船2隻から多数の小型船へ乗り換え、海岸に徐々に近づいてくる。


 小型船から海に飛び込み、遠浅の海底に足をつけて、オークが歩兵隊の一団をかばうように進んできた。海水がオークの胸から腰のあたりになったあたりで、突然、オークの一団が集団で海に引きずられているように倒れ掛かる。


 ドンピシャのタイミングで、シンバの「放て!」という声とともに砦からの多数の矢が射られた。先ほどと同じく、3つの付与魔法と魔法の痕跡を隠す隠匿魔法を味方の放った矢にかける。倒れているオークがちょうどよい的となりオーガの一団の背中に矢が吸い込まれて、海面に浮いているハリネズミのようになる。


(後半へ続く)

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