表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/102

8 参加するならば、よいニオイのする良いリーダーのグループにすることのススメ

 王都の本屋でヘンレさんを見かけ、声をかける。


 「こんにちは。ヘンレさん。偶然ですね」


 「あら?アルフ君。こんにちは。アルフ君も本をさがしに来たの?ここは比較的大きい本屋だから、よい会計学の参考書が入荷していないかと思って来たの。アルフ君はなにを探しに来たの?私、たまに入荷本を探しに来るから、おすすめとか紹介できるかもしれないよ」


 さすがは、高級官僚の娘さんだ。高級品の本を定期的に探しにくるとは。しかも、結構、常連さんぽい口調だ。俺なんて、庶民に毛が生えたくらいの仕送りしかなく、もしネコババ隠し財産がなければ、本なんてとても購入できない。


 「魔法書で参考になるものがないか見に来ました。自分で魔法を使えるわけではないのですが、魔技研での、魔法技術の産業化研究のネタ探しです。魔法の原理を知らないと研究会の話についていけなくて」


 魔法が使えることをまだバラスわけにはいかないので、それっぽい説明でごまかす。


 お互い本屋を一通り見終わった後、個人的な情報交換のため、お茶をすることになった。






 「あの後すぐに魔技研に無事入会できたようね?いったいどんな伝手をつかったの?」


 とヘンレさんは興味津々とばかり聞いてくる。


 俺たちは、ヘンレさんがたまに行くという本屋からほど近いカフェに入り、紅茶を味わいながら、情報交換をする。


 「たまたま、知り合いに、代表のジェシカ・ルートンさんを知っている人がいて、紹介してもらえたんですよ」


 「地方中堅貴族の出といっていたけど、すごい伝手を持っているのね。あの魔技閥のルートン家のご令嬢よ?」


 「あの」、と言われても知らんがな。階位三位の次官の娘だから、貴族爵位換算だと「伯爵位」だ。父上が子爵位だから、伯爵の娘さんを紹介してくれる貴族の知り合いがいても別におかしくはないと思うのだが。


 あまり、ピンと来ていない俺をみてヘンレさんが詳しく説明してくれる。


 「フランド王国の魔法・技術の実務の総責任者を代々歴任しているルートン家よ。摂政や大臣は国王陛下の采配で交代がしばしばあるけど、次官は失態などがないとあまり交代しないわ。 国の魔法と産業技術の方針を決めてきた家柄よ。どの内官や軍官も必死に伝手を作りたがっているのに。アルフ君、あなた、すごい伝手があるのね。しかも魔法も使えないのに」


 何をそんなに興奮しているのか?と少し疑問に思ったが、階位三位の魔技省の次官を代々務めると、役職名以上に権力を持つようだ。


 ヘンレさんの話によると、次官の上に大臣がいるが、大臣はあくまで国王陛下とのパイプ役兼省外交渉の顔役にすぎないみたいだ。

 

 実務面は次官が取り仕切り、しかも省内で長期政権を敷く。そうなると、国の方針を決め動かしていくのは実質次官になる。魔法技術省が管理している、魔法及び産業技術は、軍事から国民の生活まで幅広く応用されているため、12個ある省庁の中でも権限が大きい。その実質責任者であるルートン家との伝手を持っている俺に対してヘンレさんは驚きを隠せなかったようだ。


 ヘンレさんの話しを聞く限り、そのルートン家のご令嬢を俺に紹介してくれたのが、第三王女とその懐刀の魔女姉さんであることは、あまり知られていないようで、少し「ホッ」とした。

 もちろんヘンレさんには余計なことは言わないでおく。


 「ルートン家もすごいと思うけど、財務閥だって国家予算の配分権限を握っているのだから、その次官のインフォ家との伝手を持っているヘンレさんもすごいんじゃない?」


 「伝手といっても、私なんて、全く相手にされていないわ。かろうじて名前を憶えてもらっている程度よ。単にハーベル様の取り巻きの一人にすぎないもの。それも最も外側の取り巻きよ」


 やや自嘲気味に説明してくれた。


 どうやら、ハーベル・インフォは財務研究会内で、自分の近しい側近たちを優遇しているようで、付き合いのあまりなかった新入生や新参者は、あまり居心地がよくないようだ。そのため、ハーベルの近くには、Yesマンしかおらず、研究会全体の雰囲気は、排他的であまりよくないとのことだった。


 「ところで、俺は財務研究会に入れてもらえなかったから、魔技研究会に入会したのだけど、ハーベルさんは、やっぱり面白く思っていないよね?」


 実は、ジャームスさん、チャールズさん絡みで少し気になっていたんだよな。

 俺が財務閥の下部組織である財務研究会ではなく、犬猿の仲の魔技研究会にはいったことで、俺やエクリン家がなにか嫌がらせされないかどうか。


 「正直、ハーベル様や研究会の幹部たちは面白くないと思っているようだったけど、元々、財務研究会の方が入会の挨拶のきたアルフ君を拒絶した体なので、表立ってなにかすることはないと思うわ。それに、あなた以外にも、財務研究会に入れてもらえず、他の研究会に入った人たちもいるしね」


 少し安心した。これで俺やジャームスさん、チャールズさんも報復されたら、それこそ逆恨みというものだ。ハーベル・インフォはそこまでバカではなさそうということがわかり安堵した。


 一方、魔技研究会を率いるジェシカ・ルートンは、育ちの良い女性ならではの物腰の柔らかさと、新技術開発のためには、誰とでも自由闊達な議論を奨励しており、研究会のほとんどのメンバーから信頼を勝ち取っていた。


 俺がみても、いや、クンクンしても、ほのかな良い匂いが漂ってきそうで、非常に魅力的なリーダーにみえる。


 財務研究会への入会を断られてよかったな、と心底ハーベル・インフォに感謝した。


 おかげで、「かの」ルートン家のご令嬢とも伝手ができたし。


 ハーベルが嫉妬狂いの小心者で本当に良かったと心の中でほくそ笑む。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ