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3 長いものに巻かれるところからはじめるススメ

 寮への引っ越しが終わり、一息入れたところ、行政大学校のカリキュラムを読む。

 

 2年間の座学と1年の実習という3年間のカリキュラムになっている。


 座学の2年間に、中央政府内に蔓延る各派閥の意向を汲んだ高級官僚(内官)の子弟が、有望な学生を自分たちの「研究会」へ組み込むために跋扈する。学生のうちは「派閥」という露骨な表現は使わず、「研究会」という表現をつかう。ただ実際は、中央政府内でつくられる派閥の縮図となっている。財務閥の子弟たちは、「財務研究会」、魔法技術(魔技)閥の子弟は、「魔法技術研究会」というように、ほぼ中央政府内の派閥を反映した形で研究会がつくられている。


 卒業後、全員が希望の各省庁へ入れるわけではなく、方々に散らばることとなる。しかしながら、学生時代の研究会のつながりは、卒業後も強く機能し、お互いに、情報共有、便宜の図りあい、忖度しあい等など、研究会の人間関係が将来の当人の出世を後押しする力の源泉となるとも言える。まったく、まだ学生なのに、中央政府内の政治を持ち込まないでほしい。


「学生時代にうまく立ち回れないようでは、卒業後も、内官としてはやっていけないということだろうけど」


と自分を納得させる。


 在学中の大きなイベントとして、2年に1回、王族が主催する「魔獣狩り」が開催される。この目的は、王位継承権をもつ候補者たちの能力を周囲に披露すること、と、王家直轄の国軍の軍事訓練である。行政大学校の生徒は、研究会単位で、この一大イベントの運営の多くを任され、行政手腕を王家や中央政府上層部へアピールしていく。もし評価されれば、3回生の実習先を決める際に有利に働き、将来の出世の糸口をつかめる可能性がある。


 入学3年目の3回生の時に、実際の行政機関(王都または皇領の地方行政機関)へ研修生として行き、中堅クラスの内官の秘書的な役割をこなす。そこから学んだ内容で卒業論文を作成し、学位認定、無事卒業となる。


 中央政府はコネがモノを言う恐ろしい世界だ。


 内官の子弟や軍官の子弟は元々王都に住んでいたため、それなりの人的ネットワークがあるが、地方貴族出身者は田舎者扱いされ肩身が狭い。


 まして、俺は、地方貴族の、それも三男の「パン無駄」。しかも、有力者の後ろ盾やコネもない。学校内の様子がわかるまでは、目立たないようにしておこう。エクリン家の先代ではないが、出る杭は必ず打たれる。


 まずは長いものにまかれるところからはじめよう。


『主殿よ。相変わらず、小者感が半端ないのう』


 エクスよ。これが処世術というやつだ。暴虐無人な魔王にはわかるまい。


 一応、エクリン家の書生をしていたので、財務閥のひよっこ認定を受けている、、、、はずだ。

ジェームスさんから、一つ学年が上の財務閥の重鎮の息子が財務研究会を率いていることを教えてもらったので、とりあえず挨拶にいき、そのまま財務研究会に入れてもらおうと作戦を練る。


 すでに重鎮の息子様の部屋の前で、数人挨拶の列ができている。

 すごい人気だな。


 列の最後尾に並んだところで、話しかけられる。


「あら?新入生?あなたもハーベル様にご挨拶なの?」


 前に並んでいた赤髪のロングヘア―のお姉さんが話しかけてきた。

 歳は1-2歳上に見える。


「はい。ハーベル・インフォ様へ顔つなぎの挨拶をさせていただこうと思いまして」


「私は、ヘンレ・ジュシアよ。よろしくね。私も今年入学なの」


「アルフレッド・プライセンです。どうぞよろしくお願いします」


 話したところ、彼女は、財務閥の階位六位 局補官の娘さんだった。貴族に例えると、準男爵家の娘さんだ。局補官と言えど、高級官僚の一員だから俺も失礼のないように自己紹介をする。


 雑談の中で、地方貴族の三男で、財務閥のエクリン家の書生だったことを話した。


「ジェームスおじさまはお元気かしら? それとチャールズさんも」


 エクリン家の面々のことを知っていた。ヘンレのお父さんがジャームスさんと以前同じ部署で働いていたことがあるそうで、チャールズさんとも、財務閥のつながりで、何度かお茶会で一緒になったことがあるそうだ。


 共通の知り合いがいたことで、話が盛り上げり、お互いの気持ちが少し和らいできたところで、ヘンレさんが、奇妙なことを言ってきた。


「それにしても、あなたが、あのエクリン家の書生だったのね」


「「あの」ってどういう意味ですか?」


「お父様から、エクリン家の先代以来の懸案だったパルスキーの再建案を一人で立案し、見事軌道に乗せた麒麟児が書生にいると聞いたわ。財務閥の内官の中では有名な話よ。そればかりか、王家や一部の軍官閥の方々も、あなたに興味津々ということらしいわよ」


 ま、ま、マズイ。長いものに巻かれるまでは目立たず、おとなしくしているつもりが、これではせっかくの作戦が台無しだよ。誰だよ、俺の噂を流した奴は? ジェームスのくそ野郎か?それともチャールズのボケナスか?


 心の中で、八つ当たりに近い感情でエクリン家への怒りと、噂が広がっていることへの焦りから冷や汗を流していると、ヘンレの重鎮の息子への面会の順番がきた。


「また、あとでね。アルフ君」


 と言いい、彼女は、ハーベル・インフォへ挨拶に向かっていった。


 しばらくすると、俺の順番がきて、重鎮の息子と面談した。




 その結果、見事、ハーベル・インフォに嫌われた。


記念すべき、第30話となりました。


いつも読んでくださりありがとうございます。


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