プロローグnull
人は、一人では生きていけない。それが、俺がこの世界に来て学んだことだ。
壁にへばりながら狭く、入り組んだ路地裏を抜け、俺は市街地に出る。
「ママー。あの人の服なんか可笑しいねー」
ふと、横を見ると、四歳か五歳の子供が俺の方を指差して言う。母親であろう人物は血相を変え、子供を引き離す。酷い対応だ、いや、それは当たり前だろう。
噴水に映る自分の顔を見て、心で苦笑した。目は澱んで、お気に入りだったパーカー
は煤まみれで、おまけに臭い。自分でも分かるぐらいの匂いだ、それは相当なものだろう。
「────」
もう、何日も水を飲んでいない。こんな事になるんだったら、バイト帰りに水でも買ってくるんだった。もう、使い物にならない硬貨を握りしめ、またふらふらと歩く。
「──み、水」
辛うじて出た声は、まるで砂漠で何日間も水を飲んでいない遭難者のような声だ。しかし、その声は後ろに聞こえる荷車を引く音にかき消される。
このままでは死んでしまう。誰から見ても、自分からもそう思った。
ふらふらふら。ふらふらふら。景色が回る。
「あ────」
目の前に、一人の少女がいる。フードを深く被っており、顔は見えないが、そんなことはどうでもいい。
「……何のようですか?」
俺を見たその少女は、明らかに蔑んだ目でじっと見つめる。綺麗な黄金の瞳だ、俺は一瞬その瞳に見惚れてしまったが、慌てて言う。
「み、水────」
水を下さい。そう懇願しようとした時、ブツリと、何かの切れた音が聞こえ、俺は、その少女を押し倒すようにバタリと倒れた。
初めて書いた連載小説です。
誤字・脱字などあるかもしれませんが温かい目でみてください