疑いの目
街が騒がしくなる平日の夕暮れ時
美幸は現実から目をそらすかのようにベッドに横たわった。
昨日までの日常が一変して、美幸の心は崩壊寸前だった
このまま目を閉じて明日がこなければいいのにそう心で祈りながら瞼を閉じたのだ
数分するとどこからかアラームの音が聞こえ
目を開けると現実か夢かもわからない空間が広がっていた
美幸は暗い箱の中にいて、光が差してきて光から一瞬目をそらすと
学校へ向かっていたのだ。
学校に登校し、座席に座るとわざわざ美幸の所に来て
耳元で言葉を発した。
「佐里が亡くなったって」
まるで心もないかのような冷たい表情と冷たい目で渚はそう伝えてきた
佐里は美幸の大切な親友だ
渚にとっても友達なはずだしこのクラスにいる皆、仲がよかったはずなのに
冷めきった顔で皆が私を見る
あまりにも耐えきれず教室を飛び出して佐里の家へ向かった
"ピーンポーン、ピーンポーン”
誰も出てくる気配がない
そっと玄関の戸を叩くと中から鍵が開く音がした
しかしドアが開く気配はない
躊躇しつつ開ける
「お邪魔しま…す」
恐る恐る中に入っていく
誰かいる気配はない
心臓の音だけが鼓膜に響く
“ドク、ドク、ドク…”
「ねぇお姉ちゃんだれ?」
突然後ろから声をかけられふりむくと佐里の弟が立っていた
「あ、美幸ちゃんか!どーしたのー?」
まだ佐里が亡くなったことを知らないのか佐里の弟は無垢な目で美幸をみた
佐里の心は張り裂けそうだった。
伝えるべきでないと自分に必死に言い聞かせぎこちない笑顔を作らせた。
「ひろくん久しぶりだね、佐里知らない…?」
佐里の弟「ひろ」は突然顔色を変え、憎しみの眼差しで美幸をみた
何か見透かされていそうで美幸はその場に立っていられなり、崩れ落ちた。
「美幸ちゃんが、お姉ちゃんを殺したんだ。お姉ちゃんを!お姉ちゃんを!!」
ひろは美幸に向かって叫び続ける。
「違う!…ちがうよひろくん!!私じゃない、私じゃないんだよ…、」
美幸は叫びつづけるらひろの腕を掴みながらなんども訴え続けた。
ひろの叫び声は次第に大きくなって美幸の頭にガンガンと響き渡った。
「私じゃない、わたしじゃない…」
美幸はなんどもその言葉を反復した。
次第に暗闇が私を包み込み、気づけばまた箱の中にいた
光もなく真っ黒い闇に引き込まれていくように体が自分のものではなくなっていく感覚。
遠くからアラームの音が聞こえてくる
また、まただ現実に引き戻されるんだ。美幸の心はひびわれたガラスのようで
ピキピキと今にも粉々に崩れされそうな状態でいて
頭の中に常に死という言葉が支配した。
『最後の日』
「お姉ちゃん!おねぇちゃんってば!」
気づくと私は弟に起こされていた
「おはよう、こう」
「お姉ちゃん!おはようじゃないよ、遅刻するよ今日終業式なんでしょ早くいかないと」
私はあわてて時計をみた。
7月24日
佐里が亡くなった日
理解できなかった。
今起きてることが夢にしかおもえなくて
私は何も考えることができずとにかく制服に着替え、佐里の家へと自転車を走らせた。
"ピーンポーン"
「はーい!」
出てきたのは佐里だった。
無意識に私の目から涙がこぼれでてきた
亡くなったはずの佐里が目の前にいることに
「佐里!!会いたかった…」
佐里に抱きつくと佐里は驚いた顔をして笑った
「美幸どした!?笑」
私がただ泣きつづけるしかできずにいると
佐里は自分の体から私の体を離し、笑いながら荷物をとりに自分の部屋へいってしまった。