7話
「おーい、健二。三太。朝ごはんだ」
家の二階から声がした。
ぼくは歯に挟まったごはんの欠片と格闘しながら、上のほうを見上げた。
そこにいたは榮倉兄弟の長男。つまり、ぼくたちのリーダーと呼べる人。一兄ちゃんだった。
ぼくのような犬にとって、群れのなかの順位はとても大切だった。
そのなかでも、群れのリーダーは誰にでもなれるわけではない。みんなを引っ張っていく力、まとめていく力、守る力。その全てを持っていないといけない。
その点、一兄ちゃんは完璧だった。
凛々しい横顔。堂々とした態度。自分の欲しいものがあれば、兄弟ですら手を上げるその力強さ。一兄ちゃんこそ、ぼくたち兄弟の絶対的なリーダーであった。
「わんわんっ!」
……おはようございます、と大声で叫んだ。
すると、兄ちゃんはこちらを見た。視線と視線がぶつかる。厳しくて鋭い視線だ。あぁ、それだけでぼくは幸せになれます。
「タロ、うるさい」
「一兄さんを見ると、いつもこうだよね。タロは本当に、兄さんが好きなんだね」
「わんっ!」
……もちろんだよ、と答えた。
一兄ちゃんは、人でいうところの二十二歳で、大学という場所に通っているらしい。これも友人からの受け売りになるのだけど、大学というところは優秀な人間でないと行くことができないらしい。
さすが一兄ちゃんだ。腕っぷしだけじゃなく、頭もいい。
ぼくは一生、この人についていこう。
朝ごはんを食べ終わって、三十分ほどしたころだ。
榮倉家が慌ただしくなった。
最初に玄関から出てきたのは、三太兄ちゃんだ。黒い制服を着て、細長い袋を背負っている。あの中にはきっと『シナイ』が入っているに違いない。
三太兄ちゃんはぼくに目もくれず走り去っていった。向かう先は中学校だ。
次は誰が出てくるだろう。
そんなことを考えて、あくびをしながら待つ。すると、健二兄ちゃんが玄関から出てきた。相変わらず眠そうな顔をしている。先ほどの三太兄ちゃんが楽しそうに笑っていたところみると、健二兄ちゃんがいく高校という場所は、とてもつまらないに違いない。もし、ぼくが人間になったら、三太兄ちゃんと一緒に『中学校』にいくことにしよう。
それからしばらくして、一兄ちゃんが家から出てきた。
自動車と呼ばれる乗り物に乗って、大学へと向かう。ぼくはその姿を、最大の敬礼姿勢で見送った。綺麗に両足をそろえて、背筋を伸ばした状態でのお座り。今日もお疲れ様です。
一兄ちゃんの自動車が離れていくのを見て、ぼくは急に眠くなった。
一番偉い人が遠くにいってしまい、緊張感がなくなった感じだった。このまま昼寝でもしようと思い、陽の当たりがよい場所で横になる。
うとうとと重くなっていく瞼の隙間では、榮倉家のパパさんとママさんが見えた。パパさんは夜遅くまで仕事をして、ママさんはお家で家事をするらしい。
うん、えらい。がんばれ。