表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/24

1話<プロローグ>

挿絵(By みてみん)



 ぼくが生まれたのは、緑がいっぱいある山のなかだった。


 まだ開けることのできない両目に、ぽわっとした温かい光が見えたのをよく覚えている。ぼくのそばには、同じように生まれたばかりの兄弟が、みぃみぃと鳴いていた。その声を聞いて、お母さんが優しく舐めてくれるのだから、ぼくも頑張って大きな声で鳴いた。


 それから何日かたって、ようやく目が見えるようになった。お母さんは茶色のふさふさの毛をしていた。これは後になって知ったことだけど、どうやら柴犬という種類らしい。兄弟たちも、みんな同じように茶色の毛をしていた。だから、ぼくも彼らと同じ茶色の毛をしているものだとばかり思っていた。


 ある雨の日。ぼくは寝床になっている小屋の前で水たまりができているのを見つけた。

 何気なく水たまりに映った自分の姿を見て、とても驚いた。


 ぼくは、真っ黒な毛をしていたのだ。


 慌てて自分のことを見下ろした。前足、鼻の先っぽ、小さな尻尾。その全部が、お母さんや兄弟と違う、黒い毛に覆われていた。


 ぼくは急に怖くなった。

 両足がぶるぶる震えるのを感じて、急いでお母さんのお腹へと潜り込んだ。追い出されたらどうしよう、と思ったけど、お母さんはいつものように優しく舐めて、ぼくのことを迎え入れてくれた。


 兄弟たちも、ぼくのことをイジメることはなかった。ぼくだけ仲間外れの黒色だけど、お母さんも兄弟もいつも通りに接してくれた。それがとても嬉しかった。随分と大きくなってから、それが『家族』だということを知った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ