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異世界で会話練習  作者: 綾野 晶彦
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一話目 冒険のはじまり

 「魔法があったらなー」とか「異世界行ってみてぇー」とか、厨二くさいこと常日頃考えているインドア派のひ弱な主人公が突然穴に落ちるか召喚されるかで本当に魔法も存在する異世界に行ってしまう話はラノベではお馴染みだ。

 実際にそんなわけ起きるわけがないだろ、とフィクションに対しその部分を大きく言うことはないが、時々あるコミュ障キャラが異世界行った瞬間突然饒舌になって、雄弁に事を話すようになるのには納得いかない。

 環境が変わったからにしても、アニメの主人公達のコミュ障から回復する速度は早すぎるだろ。


 なんてことをブツブツ頭の中で思っている俺も実はコミュ障だ。

 そして、残念ながら視聴者は俺だけだが、異世界に飛ばされた主人公である。






 突然眩しい光に包まれ、束の間意識が遠のいたが、次第に眩しさが収まり意識が戻ってきた。

 周りを見回すと、どうやら今俺は小さな土壁の部屋にいるようだ。

 部屋に出入り口らしきドアはなく、窓もなかった。

 しかし、完全な密閉空間であるはずなのになぜか真っ暗ではなく、視界ははっきりしている。


 目の前にはタブレットらしきものが落ちていた。

 まだきちんと状況が読み込めていないが、とりあえず近寄ってそれを手に取ると、画面がついた。


 画面にはなにやら見たことのない文字が書いていた。

 これも異世界あるあるだがなぜか読むことができた。


「なになに、自分に必要な能力を選べと。そして能力は一つしか選べず変更もできないか」


 とりあえずどんな能力があるか一通りみてから見るべきだな。

 異世界物の小説を数多く読んできた俺はそう冷静に考えた。

 そう思い指でスクロールしようとした、が……。


「あっ」


 間違えて押してしまった。

 そしてまた俺の体を光が包んでいった。






 再び周りが光に包まれたが今回は意識があった。

 それにしてもまさか高校からの帰宅途中に俺の片思いの相手である女子が俺に告白してくれた直後に転送されるとは色々予想外だった。


 相手は小学校の頃からの知り合いだった。こういう時、幼馴染って言えたらなんかいいなっておもうけど、まだ一度も喋ったこともないから馴染みとは言えない。

 俺達は、これもすごい奇跡だと思うが小学校二年生の頃からずっと同じクラスだった。同じクラスだったのに一度も喋ることはなかったのだ。原因は、俺も彼女も過度の人見知りであり、コミュ障だったからだ。

 ただ、俺も彼女も人と話すのが苦手だったが、彼女は俺と違いクラスでは人気だった。

 この世のものとは思えないほどきれいな容姿の彼女が、他人に話しかけられただけで恥ずかしがって顔を赤らめる様子はクラスの男子のみならず女子までも虜にしていた。


 俺自身も虜にされ何年も経っていたが、一度も喋りかけようとも、喋りかけられるとも思っていなかった。そんな中、相手からの告白だ。


 高校生になっても頭の中厨二病な俺はもちろん異世界にお呼ばれするなんて願ってもないことだが、コミュ障の俺がその子から告白されることも同じく願ってもないことだ。


 もうちょっと、時期がずれていたらよかったのに。


 心の底からそう思った。


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