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地味に転生できました♪  作者: きゃる
第2章 私の人生地味じゃない!
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旅一座、開幕!

 リンデルに入って一ヶ月を過ぎると、街がだんだん賑やかになってきた。王宮のある首都リンブルデンに近づいてきたことがわかる。

 今日はそのいくつか隣の街の、領主の館に滞在を許されている。


 なぜこんな事になってしまったのかというと、ここから少し離れた田舎の町で「旅一座」の興行をしてしまったから。



 なぜかというと… 

 私、またしても失敗してしまいました。




 旅一座というからには芸事ができる役者らしく派手に見えるようにしようと、華美な衣装に仕立てるべく装飾に力を入れ過ぎちゃった。カラフルなヘアバンドや鈴の付いた腰帯、予め金の刺繍の入ったベストなどを張り切って縫ったり用意したりして、得意げだった私。

 もちろん彼らにもすぐに合わせてもらった。群を抜いたイケメンである彼らは、想像以上に目を楽しませてくれたし。

 しかも、みんなが私の手直しした衣装を普段から時々着てくれるものだから、それはもう眩しくて眩しくて。立っているだけでイケメンオーラが出て、後光が射しているのかと思っちゃった。

 普段から女装しているロバ…ロザリーも嫉妬のあまり?更に派手に装ったものだから、結果として旅一座はすごーく目立つことに。


 誰も全く内容を見た事がないにもかかわらず「貴族のように上品で美しい人達だから、きっと演目もすごいに違いない」との噂が、人々の口の端に上るようになってしまったの。ま、確かに貴族だけど。


 焦りまくる私を他所に、レイモンド様はすっかり元気で相変わらずの涼しいお顔。

「剣舞もだけど、アドリブで何かいろいろ演ればそれでいいんじゃない?」


 簡単におっしゃいますけど、貴方以外のみんなのどこにそんな余裕が?

 でも、レイの無茶ぶりに騎士団の面々は慣れているらしく、特に動揺した様子もない。

 いいのね?私、みんなを信じていいのね?




 田舎町で芸事を披露する際、会場やテントなども自分達で設営しないといけないんだけれど、何と、馬車には予めセットが組み込まれていた。そして彼らは、取り扱い説明書?も読まずにテキパキと組み立てていく。

 騎士団、恐るべし。一体いつも何の訓練をしているのでしょう?


 でも、元近衛騎士団長のガイウス様曰く、野外訓練や実地の時に兵はテントを使うから、多少形が異なるぐらいは同じように組み立てられるのだそう。今回は、屋根と支柱だけの簡単なものだったし。


 で、結局余った私は衣装の準備や小道具の準備で、大忙しでした。


 マカロンのようなカラフルな道具はロザリー用。彼…彼女はジャグリングもできるそうだ。

 ナイフ一式はヴォルフ用。ナイフの扱いが得意なのは前から知ってたけど、似合い過ぎてて怖いかも。

 輪っかや箱はガイウス用。この道具で何をする気なのだろう?


 というか、これはもう完全にサーカスよね?旅一座というよりもはやサーカス団に改めた方が良いのでは無いかしら??




 緊張しながら、開始を待つ。客席には期待に溢れた町の人々の顔が見える。


 最初の演目、ジャグリングのロザリーは難なくこなしていた。途中、スカート姿のももの下までカラフルな丸い道具を通すものだから、男の人だとわかっているのにキレイな脚にドキドキしてしまった。

 町の男の人達もすっかり目が釘づけ。でもすみません、あの人れっきとした男の人なんです…。


 次のヴォルは、ナイフを次々と的に当てていく。「ただ当てるだけでは面白く無いゾ〜」と野次が飛んだからか、出てきたのは

 レ、レオン〜〜!?

 でも、前から二人で相当練習していたようで、寸分の狂いも無くナイフはレオンの身体には当たらず、すぐ横に全て刺さった。

 良かった〜〜。何かあったら両親に顔向けできない。


 そして三番目はガイの、手品?

 三つの輪っかを一つに繋げたり、バラバラにしたり大きな輪っかにしてみたり…。どういう仕掛けか知らないけれど、箱は開けると火を吹き出して、その中に自分の手を入れたり出したりするものだから、観客はハラハラドキドキ。私まで彼が火傷をしないか、本気で心配してしまった。


 赤い髪でにこやかに司会をしているのがレイで、小道具を準備したり片付けたりするのが私の役目。私は今日もバッチリ男装しているし、華やかな面々に比べたら背も低いし、地味なので誰も私に目もくれない。


 最後は、それぞれの剣舞。ソロパートとコンビネーションパートがあってひらひらの衣装で華麗に舞う。わざとアラビア風の衣装にしてみたので、いつもよりも三割増しでカッコいい!!

 剣舞は見た事があるし、相当練習していたようだからここまでくればもう大丈夫。

 観客と同じように「ホウっ」とため息をつきながら彼らの演舞に見惚れていた。



 さ、帽子を持ってお金を集めにいかなくっちゃ。レイ曰く本当は要らなくても、本物の旅一座っぽく見せるためにやる事は全てやるんだそうだ。

 余剰分で今日は美味しいものが食べられるかもしれない。希望は鴨に似た鶏肉のローストと卵たっぷりのプディング!!


 看板女優のロザリーと共にお客の間を縫ってお金を集める。もちろん気持ちなので入れなくても良いのだが、みんな気前が良いみたい。ロザリーの方が圧倒的に集めているけれど、ふん、そんなの気にしてないやい!今は男装しているし。


 でも、ある男の人のそばを通った時に、その人は私の手に金貨と紙を直接握らせてきた。金貨はすごく価値があるから、今日の対価としては多過ぎる。慌てて返そうと思ったけれど、男はあっという間にいなくなってしまった。紙を広げて見てみたらリンデル語で『モートン伯爵領の我が家へ是非お越し下さい』などの文字が。


 終わった後にレイモンド様に相談してみよう。




 旅一座の役者達、つまり私以外のメンバーは、終わった後も町の娘さん達に囲まれていた。国が違えどイケメンはやっぱりイケメンで、婦女子に人気があるらしい。母国でも見慣れた光景に思わず笑みがこぼれる。


 レイはさすがの対応で、周りの娘さんやおばさま方をポウっとさせているし、ガイやレオは笑顔で卒なくこなしている。ロザリーに至っては男の人に囲まれているけれど、それが全く違和感がないので不思議だ。


 自国と違って邪険にする事ができないから、いつも無表情な兄…ヴォルまで無理して笑顔で対応しているのがおかしかった。いつもなら、終わったらさっさと帰ってくるのに。




 こうして見るととても平和で、世界に不安や憂いなど何も無いように思える。「遊びでは無い」と言われたけれど、気をつけてさえいれば旅ってやっぱり良いものだと改めて思えてくる。

 

 それはきっと、優しい世界でいろんな優しい人達に出会っているから。自分が幸せなんだと実感するのは、こんな時だ。


 私は、私達は一人ではない。

 いつだって家族や仲間が支えてくれる。




 昼間の喧騒が去り、撤収作業も終えた後先ほどの紙をレイに見せてみた。


「お招きがあったようだよ?私達の演目が伯爵のお目に止まったようだね。通り道だし、ちょうど良いんじゃないかな。」

 と、あっけらかんと言われた。


 確かに、旅の生活が長くてすっかり忘れていたけれど、ここにいる私達全員貴族だから、他国の伯爵家に招かれたとしても何ら遜色はないんだった。貴族どころか王弟様までいらっしゃるし。


 久々に見た金貨で動揺して慌ててしまうなんて、私はすっかり前世の庶民感覚に戻ってしまっているようだ。




 と、いうわけで私達は今、お招きいただいた伯爵領に向けて幌馬車を進めている。

 モートン伯爵、良い人だといいな!

 

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