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地味に転生できました♪  作者: きゃる
第2章 私の人生地味じゃない!
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剣の舞

 レイモンド様改め、座長のレイの言っていた出し物とは、『剣舞』の事だった。


「旅一座なのに何もできないといけないからね?怪しまれないように練習しておこう」


 そんなことを言っていたけど、模擬戦のような騎士団特有の剣の形に、踊りを組み合わせて舞のように見せるらしい。


 舞の指導はもちろん、ロバート改めローザ。どこかからムチまで調達してきていて、それがまた妙に似合っているから恐ろしい。


  全員元々基礎は出来ているから、あとはそれっぽく見せるだけ。最初は嫌がっていたヴォルフもレオンも、だんだんノリノリになってきたようだ。


 うちのメンバーはイケメン揃いだけれど、「剣を合わせる時に視線を交わして互いに微笑む!目線こっち!流し目増量!!」などの細かい指導をローザがしているせいか、ヴォルとガイ、レイとレオの組み合わせがあまりにも麗し過ぎて美しく、眼福、眼福、と私は一人ほくそ笑んでいる。

 あとは、それっぽい衣装を着れば完璧だ!!帰りに綺麗な布や帯、鈴などを買ってそれっぽく衣装をアレンジしてみよう。



 が、しかし、このまま見ているだけで良いのかしら?と思いながら私がくつろいでいた所、

「身体が鈍(なま)っているから剣の稽古をしよう」

 と、練習を終えたレイに誘われてしまった。


 彼は元々がとても器用なのか、剣のソロパートもレオンとのパートもあっさり覚えて終わらせてしまっていた。お陰でレオン…レオは今やローザの餌食となっている。

 頑張れ、レオ。骨は拾うわ!





 今私達は朝食の後、宿から少し離れた野原で練習をしている。人気(ひとけ)がないのを良い事にずっと汗を流しているが、私はレイモンド様…レイと対峙するのは初めてなので、怖くて変な汗が流れてしまう。

 渡されたのは練習用の剣だから、安全だとはわかっていてもとても不安だ。


「アロ、どこからでもかかっておいで?」


 全く構えず一見丸腰に見える彼は、どこを探しても隙が無い。お兄様…ヴォルやレオより剣の腕前は上なので、それも仕方がないことなのかもしれない。


 どうしよう。とりあえず打ち込んで様子を見てみる?


 一昨日は山で人相書きの男に遅れを取ってしまったので、何とかここで挽回しておきたい。剣術は嫌いではないから、慣れれば自分の身ぐらいは自分で守れるようになるだろう。


 様子を見るためにも、レイの方へと走り間合いを詰める。


 ギンッッ


 剣を垂直に振り下ろすが、あっさり止められる。後方へ飛び退って構え直す。どうやら攻撃してくるつもりは無いようなので、連続技で何度も剣を振り下ろす。


 ギンッ ガギン ガキッッ


 悔しいことに、全く無駄の無い最小限の動きで止められる。


 どうせ当たらないとわかっているから、時々突きも繰り出すが、こちらもやはり最小限の動きで避けられた。


 ならば……


 一旦退いて上がった息を整えて、本気で構え直す。


 剣を左側から斜めに振り下ろす…と見せかけて、身体を回して右脚で蹴りを繰り出す!


 けれど、ニヤリと笑われて剣を弾き飛ばされたばかりか、あっさり脚を左の肘で止められた。


「う〜ん、蹴りが来るとはねぇ。女の子らしくないよ?

 さ、もう一度、剣を取って稽古をしようか。大振りだし、無駄な動きが多いから気をつけてね。」


 やはりこの人には全く歯が立たないようだ。




 レイことレイモンド様は、あろうことか剣を合わせながら雑談をしようとする。


「ねぇ、本当はヴォルフと何があったの?とうとう何か言われちゃった?」


「え??」


 ゆっくりした剣先なのに、動揺したせいでうまく避けきれず、あと少しで頰を切る所だった。無駄に焦ったせいか、それとも動きが変だったのか、レイモンド様には気づかれてしまったらしい。


「そう。いいよ、何となくわかったから。あんな事があった後だったから、ヴォルフも感情を抑えきれなかったんだろうね。ま、気にすることは無いよ。襲われかけた事も、ヴォルフの事も。早く忘れた方が良い。実害は無かったんだし…。」


「!!!」


「それとこれとは違う!襲われた事も無いくせに」と言い返そうとして、レイモンド様の顔を見て手が止まる。


「うん?どうしたの?」


「なぜ?」


 キンッと剣が軽く触れ合う。


「なあに?」


「なぜ、貴方の方が辛そうな顔をしていらっしゃるんですか?」


 私は言った。

 碧のタレ目はいつも通りなのに、彼の瞳はなぜか傷ついたような色をしている。私を心配して、というわけでも無さそうだ。


「そお?いつも通りだと思うけど。」

 笑って言いながら、軽く剣を振ってくる。


 我に返って剣を受け止めながら、私は疑問を口にした。

「レイモンド様、貴方も、まさか……。」


 キィーーン

 と、音を立てて私の剣は弾かれ、遠くに飛ばされた。


「張り合いが無くてつまらないな。剣の練習は、当分、他の誰かとするといいよ。もう少し上手くなったら、また手合わせしてあげる。」


 肩をすくめ、一方的にそう言い放ち剣を鞘に戻すと、彼は背中を向けてみんなの方へと戻っていった。



 何も言う事が出来なかった。

 レイモンド様なりに心配してくれたにも関わらず、私は無遠慮に発言してしまった。

 それはきっと、彼の痛み。

 彼の触れられたく無い過去に、私は触れてしまったのだ——。

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