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地味に転生できました♪  作者: きゃる
第2章 私の人生地味じゃない!
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出立準備

「ハァァ~~、これからどーしよ~?」


 私、アレキサンドラは早朝から自室のベッドで枕を抱えてゴロゴロしている。

 昨日は私の誕生日で、公爵家の人々と実は血が繋がっていない事を知らされた。すごくショックを受けたけれど、その後家族の絆を再確認できたので幸せだった。


 けれど――


 16歳で成人したというのに、公爵令嬢として大切に育てられていた私。何の特技もなく、当たり前のように甘えて過ごしてきたのだ。このままではいろいろダメな気がする。お義母様のスパルタ教育によって貴族令嬢としての心得だけは叩きこまれているから、お嬢様スキルは完璧だと思うけど。

 いえ、言い過ぎでした。

 すみません、訂正します。

 そこそこのレベルです、多分。


 イボンヌ様みたいに相手がいれば『婚約して花嫁修業して良い奥さんになる!』宣言もできる。けれど、何せ私には相手がいない。最近まで地味だったから誰も気にも留めてくれなかったし、社交界デビューもこれからだ。でも、お見合いの話は来ていないし婚活自体どうすればいいのかわからない。

 それに、【黒い陰】の事件が解決していない。推測の段階でしかないけれど、過去の記憶を見てしまった私は実父がかなりあやしいと睨んでいる。義兄のヴォルフがこっそり教えてくれたところによると、年明け後に旅に出てトーマスの調査を開始するらしい。


 婚活よりも父の追跡調査に協力したい。

 でも、それだとお世話になった公爵家に何も恩返しができないし……

 今の私は八方塞りだ。どう言えば、父であるトーマスの捜索にくっついて行くことができるのだろうか?

 いくら考えても、何も思い浮かばない。

 侍女さん達みたいに気が利いたり手先が器用だったり褒めるのが上手(?)だったりしたら、側仕えとしてついて行くことができるかもしれないのに。でもその場合、両親を説得するのが大変そう。ただでさえ、遠慮のないお母様はこう言うに違いない。


「皆様の邪魔になるわよ? アリィちゃん」


 仮にお義兄様にお願いして、コネで無理やり同行したとする。だけど、私のあまりの使えなさにヴォルフの評判が下がったら、彼の華麗な経歴に傷がついてしまうだろう。義弟のレオンも騎士団にいるけれど、まだ未成年なので留守番のはず。そもそも見習いの立場でコネが利くとは思えない。

 一番可能性がありそうなのはリオネル王子の推薦。でも、彼は王太子になるための準備で一番忙しい時期で、私のことでわずらわせるわけにはいかない。それに、この前手のひらにキスをされたから、何となく顔を合わせづらいというのもある。

 ハァァ~~。

 同行しても邪魔にならないよう、手に職を付けておけば良かった。




 浮かない顔で階段を下りていく。

 既にみんなが朝食をとっている。

 なぜかレイモンド様がまだいらっしゃって、我が家の食事を堪能している。


 ちなみに今日の朝食は、ほかほかのスープと色とりどりのビーンズサラダ、サーモンのテリーヌ、舌平目のジュレソースがけ、たっぷりの果物に焼き立てパリパリのクロスル(クロワッサン)と非常に食欲をそそるメニュー。だけど今一つ食べる気になれない。


「ハァァ~~」


 今日、何度目かの溜め息をつく。

 あら、やだ。

 私ったら淑女なのに行儀が悪くてはしたない。

 てっきりお母様の「喝!」が飛ぶかと思った。

 でも客人であるレイモンド様の手前、雷が落ちずに済んで良かった。


「アレキサンドラ嬢は朝から何を悩んでいるのかな? 可愛い顔が曇っているよ」


 ほらきた、レイモンド様。

 実は変な顔、とか思ってらした?


「いえ。強いて言えば、私には何の取り柄もないから調査にご協力できないな~、と」


 レイモンド様が私を見ている。

 本日ももれなく端整なお顔だ。

 

「協力してくれるってことでいいのかな? それなら、私達と一緒に旅に出る?」


 渡りに船、瓢箪ひょうたんから駒、豚に真珠??

 あまりに意外な申し出に、頭が一瞬働かない。


「なっ。貴方は突然、何を言い出すのですか!」


 慌てるお義兄様、かなりレアだ。

 もちろんこちらも美形。


「うちのアリィに危険な調査をさせるのは、歓迎できませんな」


 お父様、それじゃ親バカ丸出しです。

 彼も言わずと知れたイケメン。


「アリィちゃんはどうしたいの?」


 美貌で名を馳せたお母様。

 真っ先に反対するかと思ったのに、意外にも私の意見を聞いてくれた。

 

「私にも、何か協力できることがあると思うんです。いえ、協力しなくては。だって全く憶えていないとはいえ、事件には私の実の父だというトーマスが関わっているかもしれないんですよね?」


 みんな無言だった。

 レイモンド様だけがあいまいに微笑み、「ただし条件がある」と付け加えた。

 

 レイモンド様の出した条件というのは、『自分の身が自分で守れるようになったら』というものだった。調査は目立たないよう最小限の人数で行くので、護衛のための余分な人手が割けない。だから、最低でも剣術の基礎ができていないと連れていけないということだった。剣が扱えれば、同行を認めてもらえる。それなら、練習すればいいだけ。条件をクリアしたら、調査についていってもいいと約束してもらった。

 渋る父の説得には母が、ごねる兄の説得にはレイモンド様があたってくれた。最後には二人とも認めてくれたけど、大事にされ心配されているとわかって、すごく嬉しかった。




 そして年末間近の今日。一番最初の剣術の稽古で、木の棒のようなものを渡された。

 木刀より少し短く形は違うものの、久々の感触に少し嬉しくなってしまう。だって、前世の私、高倉愛梨は小学生の頃に近所の剣道教室に通っていた。防具をつけてしまえば容姿は気にならないし、小学生は女子の方が体格が良いので力の差もあまりなく、剣道は割と好きだった。

 木刀といえば、剣道の稽古で普段使うのは竹刀。けれど昇級審査の時に『木刀による基本稽古法』の試験があるから、おじいちゃん先生は稽古でも時々、木刀を使った技の練習を取り入れていた。

 それだけにすごく懐かしくて嬉しくて、こちらの世界の剣術の先生に「握って」と言われた時に、思わず両手で正眼に構えてしまった。右足もしっかり前に出している。


両手剣トゥハンドソードでもないのに、不思議な構えだね?」


 レイモンド様は最近暇なのか、それとも今になって連れて行くのを迷っていらっしゃるのか、最近ちょくちょくうちに顔を出すようになった。私の構えもバッチリ見られている。

 剣術の先生も「え?」という顔をしている。

 木の棒を初めて握るはずの公爵令嬢の私。

 実はヤル気満々で、姿勢良く構えていたので逆に引いてしまったのかもしれない。


「じ、自由にいつでも向かってきていいから」


 男の先生は気を取り直すと、構えもせずにそう言った。

 本当にいいのかな? でも、先生の方がリーチが長いし防具を付けていないとはいえ、ちゃんと帯剣している。何より彼は公爵家の剣術指南役だ。さすがに危険は無いだろう。

 先生の顔には、剣術ど素人の女性の面倒は見たくないのに……とありありと描かれてある。

 私は遠い昔に習った記憶しかないし、さすがに勝とうとは思っていない。けれど、最初からできないと思われているのは心外だ。だから、遠慮せずに思い切っていくことにした。


 身長差、体格差があるので正面打ちは必ず避けられる。先生はボーっと立っているように見えて、さすがに隙が無い。それなら、と思いついて横に飛び、走って一気に間合いを詰める。先生は左利きらしく、腰の右側に剣がある。なのでわざと腰を狙う。


ドオ~!」


 予想通り彼はその場から動かずに、鞘に入ったままの剣を少しだけ上にあげて私の打った棒を難なくかわそうとする。


 もらった!!


「と見せかけて、(メーーン)!!!」


 私は棒を先生の頭上に振り下ろした。



 が、残念! 木の棒の長さが足りなかった。

 本当はカッコ良く頭上で寸止め、といきたかったけれど。先生の鼻先でちんまり構えて終わってしまった。

 背後で「へえ~」というレイモンド様の声が聞こえる。バカにされそうなので、敢えて振り向かないことにする。

 剣術が初めての公爵令嬢が連続技を仕掛けるとは思っていなかったらしく、先生はビックリした顔で固まっていらした。でもこれで、ちゃんとご指導いただけるかしら?


「ご指導ありがとうございました~」


 つい癖で、左手に木の棒を持ち替え足をそろえて礼をする。

 久々の剣道っぽい感じが嬉しくて、私は元の位置に戻るとだらしなく笑ってしまった。

 どうやら私は今でも剣道が好きらしい。


「相変わらず君は読めないね? 護身用にフルーレと思っていたけれど、ロングソードか軽めの両手剣トゥハンドソードを作ってもいいかもしれない。変な掛け声が気にはなるけど、上手になったら手合わせをお願いしようかな」


 クスクス笑いながら、面白そうに言うレイモンド様。

 とんでもございません、貴方とは絶対に嫌です。ヴォルフやレオンがこの庭で打ち負かされているところ、何度も見ておりますから。

 とてもそんなことは言えないので、にっこり笑って相槌を打つ。


「ご冗談を」




 かくしてレイモンド様の一言で、剣術の先生の私に対する遠慮がなくなった。年末年始は剣術の稽古に明け暮れて、年明けの今も私の筋肉痛は半端ない――

アリィ、まさかの武闘派⁈

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