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地味に転生できました♪  作者: きゃる
第2章 私の人生地味じゃない!
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私だけの秘密

 最近何だかみんなが変だ。

 私の誕生日は明日だというのに、わざわざ先にプレゼントを渡してくれる。

 リオネル王子は金色のダイヤモンドのネックレス。

 義弟のレオンは薔薇の髪飾り。

 兄のヴォルフは一粒石のサファイアの首飾り。

 レオンは今日の昼、兄は夕方にそれぞれ贈ってくれた。


 16で成人となるのを翌日に控えて、いつもより緊張していたのは確かだ。「マナーのレッスンは今日で一旦終了ね」と母に宣言されたから、それだけは純粋にすごく嬉しかったけれど。マナー限定ってことは、他はまだまだ続くのね? と一瞬うんざりしてしまった。まあ、4年のブランクはそう簡単に埋まるものではないのかな。


 リオネル王子の突然の訪問から数日間は、手のひらにキスをされたこともあってドギマギしながら過ごしてきた。正直、レッスンよりもそちらの方に気を取られていたと思う。でも、具体的に何を言われたわけでもないから、そのままにしている。小さな頃からよく知る王子が、私のことをそんなふうに考えていただなんて――

 そんなふうってどんなふう?

 自問自答しては悶々とする日が続いた。

 もしかして……と思ったり、考え過ぎだと自分を戒めたり。リオネル様は平然としていて、その後は何事も無かったかのように振舞っていた。だから、気にし過ぎる自分がバカみたいだと思った時もある。


 王太子になる式典には私も参列する予定だ。その時、何を話せばいいのだろう? それとも忙しくて話す時間も取れないから、この前わざわざいらして下さったの?

 夜、部屋で枕を抱きしめてうなっている私。侍女達が目撃したら、頭がおかしいと思われるかもしれない。そろそろ、違うことを考えた方が良いのかも。




 昼間はレオンに髪飾りをもらった。

 白くて大きな薔薇の花に水色のレースと羽飾りがついたものだ。上品で洗練されたデザインだから、彼が女の子と一緒に選んだものだとわかってしまった。もしかして、レオンの好きな子?

プレゼントをもらえて嬉しかったのに、素直に喜べない自分がいた。だって、白薔薇の花言葉は確か『私はあなたにふさわしい』。一緒に選んだ女の子がわざわざそれを選んだのだとしたら、『彼は私のものよ』って主張したかったのかもしれない。


 良かったね、レオン。あなたの気持ちは彼女にも届いているみたいよ? 

 髪飾りは大切にしようと決めた。

 だって、大きくなったレオンが初めて私に贈ってくれたものだから。義弟のことを考えると、私はいつでも心が温かくなる。今のレオンの背格好は、以前とは似ても似つかない。けれど、青い瞳と俺様口調は昔のままだ。



 兄には夕方、応接室に呼び出された。


「これだけは覚えておいて。私はいつでもお前の味方だから、困ったことがあれば私に頼るといい」


 そんな言葉と共に誕生日のプレゼントを贈られた。同じようなタイミングで、今日渡してくれるだなんて。ヴォルフとレオンは血が繋がっていなくても、本物の兄弟みたいだ。

 ベルベットの箱を開けると、中から出てきたのは青くて大きな石――サファイアのペンダントだった。一目で高価だとわかる品。この前、リオネル様からも希少なダイヤモンドの首飾りをいただいたばかりなのに。


 成人するって、この世界でも特別なものなのかもしれない。そういえば前世の母は「成人式で親から真珠のネックレスをもらった」と言ってたっけ。ヴォルフはきっと、保護者の一人として奮発してくれたのだろう。大好きな兄はいつでも優しく私に甘いから。最近の『妹溺愛』な点を除けば、自慢の兄だ。

 そんな彼が成人した時は、もっとしっかりしていたような。ヴォルフは元々優秀で何でも簡単にできていたから、成人を迎えても全く違和感がなかった。兄の必死になった姿って今までに見たことがないかも。



 

 夜も更けたので、考えごとは止めにしてそろそろ寝よう。ふと窓の側に行くと、レース越しに月が見えた。この世界の二つの月が今日も綺麗に輝いている。せっかくだから月を見てから寝ようと思い、バルコニーに出てみることにした。


 外に出た途端、先客に気がついた。

 レオンは、隣の部屋のバルコニーの手すりに頬杖をついて、月を見ながらぼんやりと考え事をしている。サラサラの金色の髪が、白い月の光で幻想的に輝いている。彼を見ると、最近の私はなぜか違う人を思い出してしまう。彼は私に気がつくと、どこか悲し気な笑みを浮かべて近づいて来た。


「ま、待って。レオン、スト~~ップ」


 手を伸ばして、近付いてくる義弟を思いっきり制止した。だって、薄着一枚の自分の恰好が急に気になってしまったから。必死に前をかき合わせ、見えないように胸の前で腕を組む。レオンを見た途端、同じ金色の髪のある人のことが思い浮かんでしまったから。


 私はリオネル様が好き――



 頭に浮かんだ言葉に愕然がくぜんとしてしまう。

 相手は王子で幼なじみ。

 一度は避けようとしたけれど、彼はいつでも私を気にかけてくれた。

 一体いつから好きになってしまったのだろう?

 首飾りをいただいた時? それとも……

 だから弟とはいえ、異性であるレオンとはこれ以上親しくできない。

 夜に二人きりで会うなんて、もっての外だ。


 それなのにレオンは、捨てられた子犬のような目で問いかけるようにこちらをじっと見ている。

 そんなに悲しい顔をしないで。

 私は貴方のお姉さんでしょう?

 貴方にはちゃんと、好きな子がいるはずよね?

 

 それ以上何も言えない私は、引き返して安全な自分の部屋に逃げ込もうとした。けれど、追ってきたレオンに後ろから肩を掴まれる。逃げる間もなく引き寄せられたかと思うと、後ろからギュッと抱き締められてしまった。それだけで、焦る自分がわかった。

レオンはそんな私の様子に気づかずに、背後から顔を寄せると、低い声で話かけてきた。


「逃げないで聞いて。アリィに嫌われたら、どうしていいのかわからない。俺はこれからも、アリィの一番近くにいたい。そのために実力をつけて騎士になるつもりだ。だから何でも1人で抱え込まないで。何があっても俺は、絶対にアリィの味方だから……」


 耳元で響いた声。

 そうか、弟として心配してくれているのね? 

 でも、くっつき過ぎだと思う。「アリィの一番近くにいたい。そのために騎士になる」との言葉が気になった。どうしてそんなことを言うんだろう。だったら学者になるのを諦めたのは、やっぱり私のせい? 

 どうしていいのかわからずに、その場で固まってしまった私。動揺が伝わったのか、レオンはゆっくり手を離すと最後に私の頭をポンポンと軽く叩いた。私は軽く頷くと、急いでその場を後にした。



 

 部屋の扉を後ろ手に閉めて、詰めていた息を吐き出す。

 今のは一体何だったんだろう。

 レオンはどうして、あんなことを言ったの?

気づいたばかりの私の想い。

 それは、まだ誰も知らない私だけの秘密。

  

 

ここから、リオネル王子編となります。

レオン編はアルファポリスに掲載中。

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